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2013年6月13日 (木)

「利子」と「滞船料」(その1)

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ぐずぐずとおつきあいし続ける以外にどうも解決策の見つかりそうにない経済問題(ないしは社会問題)があります。

そのひとつは、国家の借金がGDPを超える額になっている国、あるいは国家の借金がGDPに近い額まで増えてきた国の政府債務。そういう国では、政府の国債発行に歯止めがかかりません。税金を増やせば少しは効果がありますが、借金の多い国では利子返済金の一部として消えていくだけです。

IMF統計によれば、日本の国家債務(政府債務)は2012年が1132兆円、2013年(推計)が1178兆円。GDP(名目)は2012年が476兆円、2013年(推計)が480兆円なので、国の借金はGDPの約2.4~2.5倍です。この借金で雇用や所得増をもたらす有効需要でも着実に作り出せればいいのですが、このお金は、特別会計を通して、使途の必ずしもよくわからない公共事業支出や政府関連支出という「官制経済」の森の中に吸い込まれていきます。<関連ブログ記事は「素材のカットのしかたや味付け方法の事例研究(一般会計と特別会計に関して)」>。

政府債務がGDPを超えるという状況の国は日本に限りません。しかし、米国でさえ政府債務のGDP比率は、2012年が107%、2013年(推計)が108%です。EU経済を支えているドイツでは、政府債務のGDPに対する比率は、2010年から2013年(推計)にかけて、83%から80%で推移しています。

もうひとつの問題は、お金持ちの国はますますお金持ちになり、そうでない国はますます貧乏になっている、また同じ国の中でも、お金持ち階層はますます裕福に、お金のない人たちはますます貧しくなっているということです。富が国際的にも国内的にも一部に集中するかたちで配分され、またその傾向を助長する形で再配分されています。

日本では、2012年は、労働人口(役員以外の雇用者)の35.2%がいわゆる「非正規労働者」で、この比率は前年よりも0.1ポイント増加しています(総務省)。

その依拠するビジネスロジックからして国民国家・国民経済とは本質的に無関係な関係になってきたグローバル企業群と、それらのグローバル企業群のもともとの出身母体であるところの国民国家・国民経済との利害の衝突・利害の矛盾が、上述のような現象の原因になっていることは想像に難くありません。ではその現象のもっと向こう側(というか底の方)にはなにが潜んでいるのか。そういう不可解なものへの手がかりを探しているときに出会ったのがマルグリット・ケネディー(ドイツの建築家でありエコロジスト、経済学者ではない)が著した「利子とインフレのないお金 (Interest and Inflation Free Money)」および「お金を占拠せよ (Occupy Money)」という2冊の本で、「お金を占拠せよ」の副題は「だれもが勝者の経済を創る」となっています。両方とも主題は同じで、前者が1995年に世に問われ、後者は前者の2012年用更新バージョンという形で出版されたようです(原著はドイツ語)。

以下は、2つの書物の印象的な部分を僕が勝手に要約したものです。

・経済成長への強迫観念、インフレや金融危機、そして富がひとにぎりの富裕層へ集中するといった事態の原因は、結局のところ、お金(貨幣)の持つ利子(複利)の属性にある。利子(複利)は指数関数的な成長曲線を描き、人間や動植物などの自然な成長曲線、財やサービスの一般的なビジネス成長曲線とは形状が全く異なっており、ここから矛盾が始まる。指数関数的な成長曲線は、自然界では癌(がん)細胞などに典型的に観察されるが、この成長曲線が終焉を迎えるのは宿主が死んだときである。

・金利が経済成長率より大きいと、金持ちはますます金持ちになり、そうでない人たちはますます貧乏になる。たとえばドイツでは、利子収入額が利子支払額よりも明らかに多いのは富裕層だけ(社会階層のなかで収入の多い上位10%層だけ)で、次の10%の層は両者がだいたい同じ。残りの80%の国民は利子支払額が利子収入額より多いか、利子収入はなくて利子支払のみなので、利子という富の「再配分」によって貧富格差が拡大している。

・利子にかかわる社会的な費用は想像以上に大きい。たとえば、2006年のドイツの場合、上水道の利用価格の38%が利子費用に相当するし、家計だと財やサービスへの出費のうちの40%が利子費用である。財やサービスを生産し流通させるには生産者や流通業者は借入金やその他の負債の利子を負担するがその総額が製品やサービス価格の40%であり、消費者はそれと自覚することなく事業者の利子支払いを手伝っている。 

・お金(貨幣)の持つこの利子という属性(機能)は人間の発案であり社会的な合意によるもので、天から降ってきたものではない。つまり、それは人間の発案であるがゆえに人間が変えられる種類のものである。「お金に対して利子を禁じている文化」があるが、これも人間の発案であり社会的な合意に基づいており、われわれの「利子文化」と並列にそして同時に存在している。「利子文化村」の外側には、お金にマイナスの利子をつけるという考え方があるがこれも人間の発案だし、その発案が人々の合意を得られたら金融システムとして市民権を持つことになる。マイナスの利子は、たとえば「滞船料」(Demurrage デマリッジ:船や貨物が動かずにその場でじっととどまっている状態に対する課金)といった形態で請求される。

・現在の「複利」金融システムの欠点を一挙に除去できないのなら、それと別のロジックで運営される並行通貨(代替通貨・地域通貨)を並列に部分的に導入することで「非利子金融システム」を現行金融システムに徐々に浸透させることができる。

・「利子とインフレのないお金」では、ドイツ人の実業家であり経済学者だったシルビオ・ゲゼル(Silvio Gesell, 1862/3/17-1930/3/11)のユニークな考え方が紹介されている。その考えとは、あらゆるものが減価するのにお金だけが減価しない、それゆえ金利が正当化されているが、これはおかしい。お金も他の商品と同様、時間とともに目減りさせた方が経済秩序は健全になる、というものである。

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