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2013年9月30日 (月)

IPCCの第5次報告書(政策決定者向けの要約)に関する雑感

舌の根の乾かぬうち、という表現があります。これくらい粘っこく繰り返さないと上手なロビー活動はできないかもしれません。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル Intergovernmental Panel on Climate Change)が、刺激的な内容の「第5次評価報告書:政策決定者のための要約」を発表しました。現在のIPCC の議長は、インド人のパチャウリ氏。2007年の第4次報告書発表のときも、それからホッケースティック曲線に関するデータ捏造(ねつぞう)が露見してIPCCやその報告書の信頼性が地に落ちた時(2009年)も彼が議長でした(このあたりの事情は “The Hockey Stick Illusion” という本に詳しい)。

IPCC は、ある種のロビー活動を目的とした政治家・政府関係者と科学者の混合部隊と考えた方が分りやすい。だから、最初に「政策立案者のための要約」を発表するのが恒例となっています。ロビー活動は、特定の利害目的を達成しやすくするために存在します。6年ぶりの今回の報告書の影響で誰が政治的・経済的に得をするのか。あるいは誰に結果的に損をさせるためのレポートなのか。

IPCCの目的を再確認するために "What is IPCC?, 2009" などを参照すると、 IPCCは、人為的な気候変動のリスクに関する最新の科学的・技術的・社会経済的な知見をとりまとめて評価し、各国政府の意思決定者にその情報を提供することを目的とした政府間機構 (下線は「高いお米、安いご飯」)なので、最初から、気候変動に関する人為的なリスクを想定し、それをどう政治経済的に利害調整するかという方向にバイアスがかかっています。

京都議定書の第1次約束期間が2012年で終わり、国際的な温暖化対策の枠組みが形骸化した、というのが現状の一般的な要約ですが、これを言い換えると、米国もロシアもECも中国もインドも、今までのIPCC報告書の内容などを、とくに気にしている様子はありません。駆け引きがあるので気に掛けているフリはしますが、もともとIPCCの報告や提案などを信じていないのでしょう。日本だけがまじめに対応してきたのですが、途中から、どうもだまされているらしいと気づいたのか、降りてしまいました。適切な判断だったと思います。

【註】 興味深いのは、日本の全国紙(たとえば、日本経済新聞)ではこの報告書のニュースが一面記事(それから総合2であるところの三面に大きな解説記事つき)になっていますが、BBCやFinancial TimesのWEBサイト、あるいは、USA TodayやThe Voice of Russia(日本語版)のWEBサイトのトップページにはこのニュースは現れません。BBCだと科学/環境タブを押すと出てきます。

さて、今回の第5次報告書「政策決定者のための要約」の骨子は、メディア報道によれば、以下のようになっています(日本経済新聞から引用)。

・気温上昇が人間活動に起因する可能性は95%以上
・温暖化ガスの濃度は少なくとも最近80万年で前例のない水準
・CO2濃度は産業革命前から40%増加
・今世紀末までに気温は0.3~4.8度上昇
・同期間で海面は26~82センチ(メートル)上昇

「政策決定者のための要約」を、僕の気になる点を含めて数行にまとめると、以下のようになります。

・地上でも大気中でも海洋でも地球の温暖化が進行しており、このことには疑いの余地がない。人類が、1950年代以降の、この地球温暖化の主要原因であることは非常に高い確率(extremely likely: 95-100%)で確かである。なお、過去15年間は温暖化は休止しているが、温暖化の長期トレンドへの影響はない(【註】①下線は「高いお米、安いご飯」による。②以前は、1950年代以降でなく、産業革命以降の地球温暖化の主原因は人間の産業活動と云っていたようだが、対象期間が変化した。)

普通は、ある人やある団体が詐欺(データやモデルの捏造)を働いたことが明らかになった場合には、その人や団体はそれ以降は信頼されません。ところが、また、今回の報告書です。今回も結論ありき、と僕には見受けられます。今回の結論の「方向」は、前回と同じ。前回との違いは、確かさの可能性を高めたこと(人間活動に起因する気温上昇の可能性など)と、数値の改定(海面上昇など)。

IPCC 報告書は、政治的には、原子力発電の推進と適合的なので、第5次報告書や報告書まわりの「前向きな」報道や言動は、眉に唾をつけて、観察する必要がありそうです。この報告書の内容は、間接的には、食料(農産物・水産物など)を各国でどう確保するかという問題ともからんできます。

ちなみに、IPCCの初代議長(1988年~1997年)はスウェーデンの気象学者のベルト・ボリン氏ですが、彼は「2020年にはロンドンもニューヨークも水没」すると予言していた(赤祖父俊一 「正しく知る地球温暖化」より)そうです。

IPCC関係者は地球を水没させる予測が伝統的にお好きなようで、その変遷をまとめてみると以下のようになります。

・IPCC初代議長は「2020年にはロンドンもニューヨークも水没」

・IPCC 第4次評価報告書(2007年)では「100年後に18~59センチメートルの海面上昇」

・IPCC 第5次評価報告書(2013年)では「今世紀末までに海面は26~82センチメートル上昇」

蛇足ですが、2001年の第3次評価報告書(タイトルは"Climate Change 2001")に掲載されたホッケースティック曲線は以下のようなものでした("Climate Change 2001"より引用)。

Climate_change_2001_past_1000_years

それから、1950年代以降でなく、産業革命以降の気温上昇と人間活動の関連を取り上げたのが以下のグラフ(同じく "Climate Change 2001"より引用)です。

Climate_change_2001_past_140_years_

以前に書いた記事(「迷ったら基本データ(世界の気温とCO2)・補遺」)から一部を引用します(以下の『・・』部分)。東京23区をご存知の方なら、その風景がお分かりになると思います。

『東京の赤坂周辺には、日枝神社が高台にありますが、急な階段を登るのを嫌がる参拝者が多いのか、階段わきに巨大なエスカレーターが設置されています。少し離れたところに豊川稲荷がありますがそこも高台です。早稲田近辺だと穴八幡宮が高台にあり、境内に入るにはけっこう急な階段を登っていくことになります。

ここでは大ざっぱに縄文の昔とひとくくりにしますが、縄文時代には温暖な時期が2度ほどあり、したがって今よりも海面がずいぶんと高く、海は奥まで入ってきており、海のそばの地盤の強そうな岬に神社やお寺のような霊的なもの、スピリチャルなものがつくられたようです。東京タワーも高台にあり、貝塚がそばで発見されているので、つまりは日枝神社や豊川稲荷や穴八幡宮や東京タワーのある高台は、縄文時代という昔は、海のすぐそばの岬でした。』

霊的なもの、スピリチャルなものは海のそばの地盤の強そうな岬や高台につくられたという視点で、九州や四国や山陰などの各地の古い神社や歴史の長いお寺の立地を眺めると、たしかにそうなっています。

つまり、縄文時代の温暖な時期の海面水位は現在よりも数メートルは高かったということです。縄文時代は化石燃料を使った発電所や工場、内燃式の自動車などはなかったはずなので、IPCCの云う人間の工業活動・産業活動とは無関係に、自然現象の結果として発生した海面水位上昇を僕たちの祖先は経験しています。

1950年代以降の気温上昇の主原因が人間活動である主張(第5次評価報告書によればIPCCの確信度は95%以上)の背後には、政治経済的な思惑が見え隠れしているように僕には見受けられます。もっともそれがIPCCの目的 (IPCCは、人為的な気候変動のリスクに関する最新の科学的・技術的・社会経済的な知見をとりまとめて評価し、各国政府の意思決定者にその情報を提供することを目的とした政府間機構) なので、彼らは与えられた職務記述内容を着実にこなしているだけかもしれません。

関連記事は「寒かった冬、寒かった4月(その1)」と「寒かった冬、寒かった4月(その2)」。

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