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2013年12月25日 (水)

続・「Is That All There Is? こんなもんなの?」、あるいは、処方箋が見つかりそうにない病状 (その2)

神経生理学者のポール・マクリーンによれば、「人類は苦悩している。自然は人類に三つの脳を授けたが、それらは構造がひどく異なるにもかかわらず共に機能し、たがいに通じ合わなければならないという代物だ。この三つの脳のうち最古のものは基本的に爬虫類の脳であり、二番目が下等哺乳類から受け継いだ脳である。そして三番目は後期哺乳類から発達した脳で、それが人類を異様に『人類的』にしてきたのである。」 「今ふうの言葉で言えば、これらの三つの脳は、それぞれに独特な主観、知性、時間、空間の感覚、記憶、運動神経などを備えた『生物学的コンピュータ』と考えてよい。」

以下は、そのマクリーンの云う「脳の三層構造(ないし三位一体型の脳)」の絵です。

(【註】 絵は Jesse H. Ausubelという方の “Maglevs and the Vision of St. Hubert – Or the Great Restoration of Nature: Why and How” というエッセイから引用させていただき、日本語の訳や説明は「高いお米、安いご飯」が適当に追加しました。魚類の脳を加えたのは、あとで言及する三木成夫氏の「内臓とこころ」との関連からです。)

Photo
この三層構造の脳に関してアーサー・ケストラーが上手に敷衍しているので、それを以下に拝借します。

「『爬虫類型』の脳と『古代哺乳類型』の脳は、ともにいわゆる辺縁系を構成しているが、それは新皮質という人類特有の<思考の帽子>に対し、単純に<古い脳>とも表現できる。さて、人間の脳の中核にあって、本能、激情、生物的衝動をコントロールしているこの古い脳構造がほとんど進化の手の影響を受けていないのに対し、ヒト科の新皮質は、過去五〇万年に、進化史上例を見ない爆発的スピードで発達をとげた。

・・・・・急速に発達していく思考の帽子は人間に論理的な力を与えはしたが、情緒専門の古い脳構造と適切に統合、調整されることなく、先例のないスピードで古い脳の上に覆いかぶさっていった。古い構造の中脳と新皮質をつなぐ神経径路は、どうみても不十分だ。

かくして脳の爆発的成長は、古い脳と新しい脳、情緒と知性、信念と理性とが相剋する精神的にアンバランスな種を誕生させた。一方で青白き合理性、論理的思考がいまにも切れそうな細糸にぶらさがり、一方で感情に縛られた不合理な信念が、過去と今日の大虐殺の歴史のなかに狂気となってくっきりと姿を映している。」(「ホロン革命」)

十年ほど前から好きになった表現のひとつに「腑に落ちる」があり、「じゅうぶんに納得して理解した」くらいの意味で僕は使っています。頭での理解、概念を通した合意という範囲には収まりきらない広がりや深さがあると感じていましたが、どうしてそう感じていたのか。

「個体発生は系統発生の短い反復である」(ヘッケル)と云われていますが、三木成夫(みきしげお)による、その実証事例を「胎児の世界」という書物の中で確認できます。受胎後、30日を過ぎ40日くらいまでの、正面から見た人間の胎児の顔の様子を観察したものですが、その顔の変遷の様子は以下のとおりです。個体発生は系統発生を繰り返すと云うことの意味が、ストンと腑に落ちていきます。

・ 受胎32日目: 軟骨魚類の顔 <約4億年前・古生代デボン紀>
・ 受胎35日目: 両生類の顔 <2億年前・中生代三畳紀>
・ 受胎36日目: 爬虫類の顔 <1億5千万年前・中生代ジュラ紀>
・ 受胎38日目: 哺乳類の顔 <5千万年前・新世代第三期>

三木成夫は内臓というものの持つ意味について深い思索をした医学者ですが、彼は、ヒトの体を「体壁系」(動物系)と「内臓系」(植物系)に、以下のように分けています。僕にとって目からうろこだったのは、内臓系を「植物器官」と位置づけた点です。

□動物器官(体壁系) 

   ・外皮系(感覚)
   ・神経系(伝達) → 脳
   ・筋肉系(運動)

□植物器官(内臓系)

   ・腎菅系(排出)
   ・血管系(循環) → 心臓
   ・腸管系(吸収)

内臓感覚や内臓感性の持つ意味についての示唆に富んだ一節を、同じ著者の「内臓とこころ」という本から引用してみます。

「すべての生物は太陽系の諸周期と歩調を合わせて『食と性』の位相を交代させる。動物では、この主役を演ずる内臓諸器官のなかに、宇宙リズムと呼応して波を打つ植物の機能が宿されている。原初の生命球が“生きた衛星”といわれ、内臓が体内に封入された“小宇宙”と呼びならわされるゆえんである。」

「こころで感じることを、なにか具体的に表そうとすれば、ごく自然に“胸の奥から”とか“肚の底から”というでしょう。これはまさに胸部内臓と腹部内臓 ― つまり『体の奥底に内蔵されたもの』との深い共鳴を言い表したものではないでしょうか・・・。このことは『こころ』の漢字の『心』が心臓の象形であり、しかも、この心臓が内臓系の象徴であることを思えば、いっそう明らかになると思います。」

そういうことであれば、三層構造の脳の中の「古い脳」は「人間の脳の中核にあって、本能、激情、生物的衝動をコントロールして」おり、「脳構造がほとんど進化の手の影響を受けていない」らしいということではあっても、「古い脳」もあんがいに捨てたものでもなさそうです。「古い脳」も使い方次第ということになります。なぜなら、内臓感覚や植物感覚による宇宙リズムとの共振感覚は、「新しい脳」よりも「古い脳」との方がより適合的と思われるからです。その適合性の延長線上には、おそらく、三木成夫が云うところの「内臓とこころの共鳴」があります。もしそうなら、これは「古い脳」のプラス面です。

「古い脳」のマイナス面は、マクロでは、自分の神と同じ神を信じない人たちを「献身的に」殺していく宗教戦争であり、特定の人種排除であり、イデオロギーによる大量粛清などです。ミクロのそれは、我々におなじみの、突然に湧き上がる不合理な激情です。それが限度を超えると、たとえば、「殺すつもりなどまったくありませんでした。つい、かっとなってしまって気がついたら・・・。」という事態になります。

(その3、に続く)

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