原子力発電の好きな方が語った、原子力発電や火力発電の発電コスト
「原子力発電のコストは安い?(その1)」、「原子力発電のコストは安い?(その2)」、「原子力発電の原価?」、それから「原子力発電の原価?・補遺」の続きです。
以下の2つの棒グラフは経済産業省・資源エネルギー庁のホームページに掲載されている「コスト等検証委員会」の2年ほど前の資料を引用したものです。この委員会は平成23年(2011年)の12月19日に開催されています。福島原子力発電所の事故から9か月後です。
委員会を仕切っているのは原子力発電の推進母体の省庁ですが、原発事故から9か月で事故処理の目途もまったく立っていない時期だったので(残念ながら今も立っていませんが)、普段は世間に出さないように注意しているであろうところの正直な表情や記述がこの2つのグラフには現れています。現在はこういう性格の資料は更新されていないようです。
細かいところをそのまま詳しく見るために、それぞれの左側部分を拡大したものも用意しました。以下が問わず語りの正直な部分です。
1. 原子力発電における費用の外部化
電源別の発電コスト比較をする場合、今までは原子力発電コストに政策経費(最初のグラフだとモワっとした紫の一部、2番目のグラフでは青緑)や事故処理費用(最初のグラフだとモワっとした紫の一部、2番目のグラフでは濃い紫と薄い紫を合わせたもの)を算入してこなかったが、さすがにそれではまずいと考えたのか、社会的費用(つまり、税金)という形で投入している政策経費や事故処理費用もコスト比較の重要な一部と認め始めました(その算定額にどこまで恣意<実際よりも低く見せようとする恣意>がからんでいるかはわからないにしても)。
蛇足ですが、社会的費用にするとは、企業の内部費用を外部化するということです。外部化すると、通常なら企業が製造原価や経費として負担するべき金額を、国民の税金で負担することになります。
2. 火力発電は原子力発電と同等の競争力
社会的費用を算入したので原子力発電のコストは引用した棒グラフの長さによれば「1kwhあたり 10.7円 ないし 11.0円」へとずいぶん高くなり、その結果、石炭やLNGといった火力発電は、当該資料のコメントによれば、「原子力と同等の競争力」を持つことになりました。だから、日本に原子力発電がないと、電力コストが日本で活動する企業の競争力や利益を圧迫するというのは、あたらない。
あるものごとをお好きな方に、その好きなものごとの欠点や短所について語っていただくというのがそのものごとの最も(というか、相当程度に)客観的な評価の仕方ですが、今回は原子力発電がお好きな方が、原子力発電のコスト上の欠点や短所を論じた資料を眺めてみたわけです。
□□□

| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 推し量る(おしはかる)ではなく、推量(すいりょう)(2021.02.26)
- とても小さい活字の文庫本を何冊か処分(2021.02.22)
- 日経平均が3万円(2021.02.19)
- 5G用の工事を見かけるようになった(2021.02.16)
- 別にどうということもない発言内容だと思うのですが・・(2021.02.05)
コメント