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2014年1月15日 (水)

「素材より惣菜」という消費トレンドについて

各省庁の発表する調査データや統計データは役に立つものも多いので必要な時や気になる時には参照します。しかし必ずしもタイムリーにそれらすべてを眺めているわけでもないし、すでにわかっていること(たとえば、素材から料理を作る家庭が少なくなった、電子レンジを使った「チン」料理はますます盛んである、デパ地下などの野菜売り場や魚売り場などの生鮮食品売り場はある程度はにぎやかだが、夕方のお惣菜売り場や弁当売場の混雑度合いの比ではない)に関しては、必要がない限りデータの再整理などはしません。

ソースの違う複数のデータを組み合わせて「素材と惣菜」の過去20年の消費傾向を分析した署名記事が目に入りました(日本経済新聞 2014年1月13日)。

見出しは

「食品、素材より惣菜」
「食卓、進む生鮮離れ」
「割高感、所得低迷が影」。

面白かったので、その記事の中にあった「素材より惣菜」が好まれるというトレンドを雄弁に物語る比較表を下に引用させていただきます。

生鮮食品・生鮮素材(魚や野菜)の人気がなくなり消費先が惣菜に向かったのは事実ですが、「(生鮮)肉」(牛肉や豚肉など)だけは人気が衰えていないようです。この理由については後で述べます。

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このエッセイ風の新聞記事によれば、生鮮食品などの素材は調理食品や加工食品に比べて「割高感」があり、この「割高感」は「所得低迷が影」を落とした結果だと分析しており、記事の最後は、この新聞らしく「冷凍食品などで進化を続ける企業努力の果実を得つつ、新鮮な食材も家庭で簡単に楽しむ。食卓の彩りを増すには、賃上げなどを通してデフレの脱却にめどをつけることが条件になりそうだ」と結んでいます。

若干の違和感があるのは「生鮮食品が縁遠くなれば、日本の成長戦略に欠かせない農業分野の改革にも微妙に響く。おいしいブランド米や『安心・安全』を売り物にする有機栽培の野菜も、国内消費が頭打ちなら生産に弾みがつきにくい」という、結びの少し前に登場する箇所です。

以下の図は、農産物消費者をタイプ別に分類したものです(「福岡都市科学研究所」〈当時〉作成)。調査対象は2003年の福岡市民ですが、現在の日本の消費者の縮図と考えてさしつかえないと思います。

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「おいしいブランド米や『安心・安全』を売り物にする有機栽培の野菜」を求める人はもともとそれほど多くなく、上の図で云うと、「右上の箱」と「右下の箱」の住人が該当します。そういう人たちは日本人の20%程度と考えてよく、またそういう人たちは他の消費財への出費を調節しても好みの食材を買い続ける傾向が強いので、「おいしいブランド米や『安心・安全』を売り物にする有機栽培の野菜も、国内消費が頭打ちなら生産に弾みがつきにくい」というわけではないと思われます。

IFOAM (International Federation of Organic Agriculture Movements) という有機農産物のプロモーショングループがあり、世界の有機農産物や有機食品の生産や流通に関するデータも提供していますが、このグループのレポートによれば、日本の2010年の有機食品の年間販売額は1,400億円で、国民一人あたりに直すと年間販売額は1,120円です(人口を1億2500万人で計算)。ちなみに、米国の国民一人あたり有機食品販売額(2011年) は9,408円、ドイツだと11,340円(2011年)。(データはユーロベースなので円には1ユーロ = 140円で換算)

日本における2010年から2012年にかけての2人以上世帯の生鮮野菜への支出額平均が64,732円、米(コメ)の年間支出額平均が30,112円、野菜と米(コメ)への合計額が94,844円なので(総務省家計調査)、かりに有機食品への年間支出を世帯あたり2,800円としても、有機食品(有機野菜や有機米など)への出費はとても多いとは云えない。

僕もおいしい有機野菜や無農薬栽培の米は好きですがそれは個人や家庭の好みの問題で、日本全体としては主要農産物と水産物、それから畜産物の一部がきちんと国内自給される仕組みができていればいいと考えています(なかなか難しいですが)。有機野菜や高級ブランド米の生産量や流通量が大きいかどうかは別の話です。「おいしいブランド米や『安心・安全』を売り物にする有機栽培の野菜」と「生鮮野菜」を等号で結び、消費支出が「生鮮野菜」から「惣菜」に流れているので「日本の成長戦略に欠かせない農業分野の改革にも微妙に響く」というのは、日本の農業に対する親切な親心のようでもあるし、その逆の心性のようにも見える。

「素材より惣菜」という主題に関係のある過去のブログ記事をいくつか集めてみました。お時間があれば順番に目を通していただきたいのですが、忙しい方のためにそれらを10行程度に要約すると以下のようになります(<・・・>部分)。

2010年3月31日 (水) 消費者のタイプと主婦の光景
2011年5月13日 (金) 買い物バスケットの野菜の割合
2011年5月24日 (火) 生鮮野菜の購入量と、生鮮野菜の消費者層
2011年9月28日 (水) 料理の好きな主婦はそのうち稀少資産?
2012年1月19日 (木) 野菜と果物と魚と「つゆの素」

<主婦や以前は料理を楽しんだ人たちの中のいくつかのサブセグメントがだんだんと手抜きになってきて、従来風の料理という面倒なことから離れ始めた。素材からの料理は面倒なので、料理には冷凍食品やレトルト食品を使う。それも面倒な場合や時間がない場合は、デパ地下やスーパーで出来合いの総菜を買って帰る。必要ならチンをする。生鮮素材を使う人のなかにもこの「省力化」傾向は現れてきており、野菜の場合、調理の面倒な野菜(ゴボウ、ジャガイモ、大根など)は敬遠され、料理の簡単な野菜(キャベツ、ブロッコリー、モヤシなど)が好まれるようになってきた。魚は生臭いし骨付きだと後始末が大変なので敬遠される。肉類は高いがおいしいし、魚介類に比べると調理や後片付けがはるかに楽なので、動物タンパクはやっぱり肉ということになる。>

美味しいものは家庭で作らないと食べられないという意見の僕はこの流れを歓迎しませんが、この流れは、家計の所得水準の浮き沈みとはほとんど関係がないと思われます

「省力化」とは逆の、素材からの料理を好むトレンドも一方では確かにあって、たとえば以下のような記事で触れた光景にそれが見られます。こういう光景がマッピングされるのは、先の4類型の絵だと当然のことながら右上や右下の箱ということになります。

2012年1月20日 (金) 子供の頃の味のトレーニング
2012年9月28日(金) 買い物かごの野菜と自炊系男子
2012年12月 6日 (木) 自炊女子と料理男子
2013年1月15日 (火) 『聡明な女は料理がうまい』

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