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2014年4月10日 (木)

「Win-Winの関係」と「喝破(かっぱ)」

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苦手な、というか僕は使わない言葉や表現に「Win-Winの関係」と「喝破」があります。

「Win-Winの関係」は、たいていは、経済的な利得の獲得という意味で当事者双方がWin-Winな状態になることです ビジネスは基本的にゼロサムゲームなので、当事者がWin-Winなら、それ以外にその分だけ損をしている人たちがいることになりますが、損をしている人を気にしなければ、使い方によっては便利な言葉です。ただし、僕が、「Win-Win」というキーワードを前面に出しながらあることをいっしょにやらないかとアプローチされたら、失礼にならないようにその話はお断りします。Benign Neglect(いんぎんに無視)です。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の主要メンバーなら、私たちの目的は温室効果ガスの削減を通して、人と自然(地球)の関係をWin-Winにすることです、とでも胸を張るのではないかと想像しますが(「トップクラスの気候専門家ということになっている十代の悪ガキ」の延長線上での想像です)、人と自然(地球)の関係を、僕はそういうビジネス用語で形容したくはありません。

人と自然との間には四季の静かな移り変わりや旬な農産物の栽培といういう一応はおだやかな関係があり、満天の星が作る物語と人との神話的な関係があり、同時に嵐や洪水や地震や津波という険悪な脅迫関係もあります。赤道直下のうだる暑さや、北国の夜の凍える寒さと雪といった手に負えないところも自然(地球)の良さです。自然(地球)との関係が、制御可能でないところ、まったくもって簡単なWin-Winな関係ではないところがいい。

Win-Win以外に、苦手で自分の語彙にできない言葉が「喝破(かっぱ)」です。「喝破(かっぱ)」は手元の辞書(広辞苑)の説明では「①大声で他の言を説き破ること。②邪説を排し真理を解き明かすこと。『本質を―する』」となっています。

一般には、禅僧に喝破という言葉が似合うことになっているようです。だから、ロシア、ウクライナ、クリミアのような錯綜した政治状況に関して、それはロシアの強欲な政治ゲームの結果だとする表層的な解釈の新聞記事とは明確に一線を画した論評をある人が発表すると、その人は欧米グローバリズムに対する国民経済的なプーチン政治の本質を、すぐれた禅僧のごとくに「喝破」したなどと形容されます。「Win-Winの関係」と同じで、便利な言葉です。しかし、「喝破」を簡単に使うタイプの文章は苦手なので、少し距離を置くことにしています

「青原惟信(せいげんいしん)」の有名な表白があります。

「老僧三十年前、未だ参禅せざる時、山を見るに、是(これ)、山。水を見るに、是(これ)、水。及び後来に至って、知識に親見して。箇に入る処有りて、山を見るに、是、山ならず。水を見るに、是、水ならず。而今、箇の休歇(きゅうかつ)なる処を得て、依前と、山を見るに、祇(ただ)、是、山。水を見るに、祇(ただ)、是、水。」

それを「鈴木大拙」は表面上は次のようにわかりやすく英訳しています。

“Before a man studies Zen, to him mountains are mountains and waters are waters; after he gets an insight into the truth of Zen through the instruction of a good master, mountains to him are not mountains and waters are not waters; but after this when he really attains to the abode of rest, mountains are once more mountains and waters are waters.”

「僕たちの目の前で具体的に存在する山」としての「最初の山」と、「山という言葉や概念になる前の、のっぺらぼうな山」としての「次の山」と、「個別の山と、個別の山に分節する前の未分化ののっぺりとした空(くう)の山とは、結局は同じ山だ」という意味で登場する「(向こう側まで透き通ったような)最後の山」とが、それぞれに同じ山という名札をつけているのでややこしいのですが、深い洞察は静謐(せいひつ)であり、「喝破」のような空気の破裂するような荒い響きの言葉とはなじまない。

何かを「喝破」したとされる人は、それほど深くは物事や状況の本質に近づいていないのかもしれません。(なにが物事の本質であるかは難しい話ではあるにしても。) しかし、「喝破」を政治評論向きの用語だとすれば、それはそれで納得できます。

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