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2014年7月23日 (水)

トリレンマと三すくみ、あるいはグローバリゼーションと原発再稼働

ディレンマは二つの選択肢があるときに両方を追いかけるのは論理的に無理である、従ってどちらかを選ぶともう一つは諦める、だから、ひとつを諦めるのが嫌で二つを追いかけるとそのうちに行動が破綻するというような意味ですが、トリレンマはディレンマの三者版です。

三つの魅力的な選択肢が目の前にあり、政治家の選挙前の演説の中ではその三つが同時に実現可能なのですが、実際はそうはいかない。二つまでは何とか追いかけることが可能だとしても、三つを同時に達成しようとすると、三つの選択肢がそれぞれに対して持つ矛盾の刃によってお互いを切り刻んでしまう。トリレンマとはそういう意味です。

ダニ・ロドリックという経済学者によれば、「グローバリゼーション」と「国家主権」と「民主政治(民主主義)」とはトリレンマの関係にあります。「国家主権」を「国民経済」という用語で置き換えると「グローバリゼーション・国民経済・民主政治」という組み合わせになりますが、トリレンマの個別の状況を考えるとき、僕にはその組み合わせの方がわかりやすい場合も多い。

「国民経済」という言葉は、国内には自動車のような生産効率のいい産業も、農業のような生産効率が相対的に悪い産業もあるが、国民が全体として生き続けるために、「主権国家」としては、ひっくるめてセットで対応するというような意味で使っています。だから、たとえば、まっとうな「国民経済」が維持されている環境では、変動費としての非正規労働者は皆無とは云わないまでも、非常に少ない。

そのトリレンマは最近の日本でも簡単に観察できます。国家戦略特区構想、法人税の引き下げ、集団的自衛権や原発再稼働に関する政府の意思決定の進め方などのいくつかの要素の相互の関係を考えるだけで十分です。

国家戦略特区や法人税の引き下げは「グローバリゼーション」の推進です。しかし、国家戦略特区構想の中には、解雇規制の緩和、有期雇用契約の自由化、労働時間規制見直し・適用除外(有体に言えば残業代は払いません)などが含まれており、これは「国民経済」を棄損します。

法人税の引き下げ分が、今後、実質的には消費税の値上げ分で補填されるようなら、これも「国民経済」を傷つけます。

特定のタイプの為政者にとっては「国家主権」の発動は、集団的自衛権の行使と同義語のようです。集団的自衛権の行使を現行の日本国憲法から民意とかかわりなく牽強付会な解釈によって導き出すという乱暴な行為は、民意を尊重するという意味での「民主政治」とは両立しない。

「民主政治・国家主権(あるいは国民経済)・グローバリゼーション」をセットでそのまま押し進めるのは無理なので、従って、民主政治を犠牲にするか、国家主権(ないし国民経済)を捨て去ってグローバリゼーションの波に乗り続けるか、あるいはグローバリゼーションに制約を加えるかということになります。

今の日本の為政者は、民主政治と国民経済を犠牲にしながら、グローバリゼーション優先させる方向のようです。国会答弁や記者インタビューで、グローバル大企業の経営者が使うような用語を政治の為政者が頻繁に使っているのを見ると、相当な違和感があります。

原子力発電の再稼働に関しても同じようなトリレンマ状況が見られますが、こちらの方は「三すくみ」と形容した方がいいかもしれません。原発再稼働を主張する人たち(ステークホールダー)が、誰も、今後想定外の事態が発生した場合の全体的・最終的な責任を取ろうとしていないからです。そういうことなら、再稼働を持ち出さなければいい。

原子力規制委員会は、再稼働申請の原発が規制基準に適合しているかを見るだけで再稼働の判断はしない。政府は、原発立地自治体の理解(再稼働への合意)を前提に再稼働を進めていきたい。原発事故が発生した場合の避難計画作りを丸投げされている原発立地自治体と原発から30キロメートル圏内の近隣自治体は、再稼働にとりあえず賛成したはいいが、避難に関してはどうしていいかわからない。動けない。30キロメートル圏内だけれども別の都道府県にある自治体の意見は「法」の規定により無視されています。

外国からグローバル企業を呼び込むための(あるいは日本国籍ということになっている日本のグローバル企業引き留め対策としての)グローバリゼーション推進施策のひとつが原発の再稼働と云うことでしょうが、福島原発の状況が Under Control からほど遠いということを考えると、ここでも「グローバリゼーション」が「民主政治」を置き去りにしているようです。

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