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2014年9月 3日 (水)

加工食品の魔力

新聞の書評欄に食べもの関係のものがありました(日本経済新聞 2014年8月24日)。日本語タイトルが「フードトラップ」、副題は「食品に仕掛けられた至福の罠」。原題は「SALT, SUGAR, FAT」。著者は米国の新聞記者。原題も表紙に印刷されています。

日本語タイトルでは一般すぎてかえってよくわからない。原題の「SALT, SUGAR, FAT」だと内容骨子が想像しやすい。しかし勘違いがあるといけないので念のために書評に目を通します。安くて売れる加工食品を製造するコツは「塩と砂糖と脂肪」の計算しつくされた組み合わせにある、この組み合わせで消費者の食欲は強烈に刺激される。想定通りの内容のようです。

「SALT, SUGAR, FAT」を、ある食品添加物関係の日本語著作を参考に、日本市場向けに超訳すると「食塩、化学調味料、タンパク加水分解物、風味エキス」となります。風味エキスとは、インスタントラーメンやインスタント焼きそばでおなじみの「とんこつエキスやチキンエキス、昆布エキスやカツオエキス」などのことです。

書評には、「塩、砂糖、脂肪」を媒介にした食品会社と消費者のWin-Winの関係がまとめられています。「食品会社は悪意を持って製品を開発しているわけではない。市場で商品を売るために、消費者が好むもの、欲するものを探究しつづけているだけだ。たとえその結果が、従来の食品の限度をはるかに超えたものであってもだ。」

短期では、食品会社と消費者の間で、そうしたWin-Winの関係が続きます。長期では、消費者の舌と体が痛んでくるので、その関係が崩れます。しかし徹底的には崩れない。好きなものはやめられない、売れるものは作り続ける、というお互いの依存関係が強いのでWin-Win状態は持続します。そのあたりの事情を確かめたければ、「塩、砂糖、脂肪」や「食塩、化学調味料、タンパク加水分解物、風味エキス」が原材料欄に明瞭に記載された加工食品のはなやかな列をスーパーマーケットで定期的に観察すればこと足ります。

作る側にとっては、米国でも日本でも、原価は限りなく安くする必要があるので、塩といってもミネラル分の多いまじめな塩や、砂糖といってもサトウキビや甜菜(てんさい)で作られた普通の砂糖は使えません。

塩は精製塩、つまり塩化ナトリウムそのものです。砂糖はショ糖ではなく、食品添加物として認可されているサッカリン、アスパルテーム、スクラロース、ネオテームなどの合成甘味料です。合成甘味料はわずかな量で驚くほどに甘い。たとえば、スクラロースの甘さは砂糖の600倍、ネオテームは1万倍。微量なのでカロリーオフとも表示できる。缶コーヒーでおなじみの甘さといえばわかりやすいかもしれません。日本ではトランス脂肪酸もマーガリンやお菓子に活躍しています。

加工食品のこういう魔力に消費者の舌がなじんでくると、舌と体が痛んできます。白身魚の刺身や寿司の微妙がわからなくなる。「お子様舌」のまま大人になる。天然ものの鯛(タイ)や平目(ヒラメ)の刺身をときどきは食べてみて、自分の状態をチェックするのも無駄な投資ではないと思います。

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