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2015年6月11日 (木)

「滋賀渡船(しが わたりぶね)」の「袋吊り斗瓶(とびん)囲い」

「滋賀渡船(しが わたりぶね)」の「斗瓶(とびん)囲い」といっても、日本酒に興味のない人にはなんことかわかりません。ぼくも、2006年に出版された「酒育のススメ」(著者は魚柄仁之助)に出会っていなければ、「斗瓶囲い」の意味も分からなかったし、その後の日本酒への傾斜はもっと違った感じのものになっていたと思います。農学部と理学部と工学部と文学部の眼がいっしょになったような名著です。我が家の本棚では「聡明な女は料理がうまい」の隣に並んでいます。

ぼくの以前の日本酒の記憶はひどいもので、酔ったオヤジが何人かいっしょに夜の電車に乗り込んできたところを想像してください。その辺りの空気が日本酒の嫌なニオイで急に汚染されます。巨大なビニール袋でオヤジどもを一網打尽風に包み込み、まとめて外に放り出したくなります。70年代の日本酒のニオイとはぼくにとってそういうものでした。そんなお酒を好きになるはずがない。

「酒育のススメ」に以下のような70年代の記述があります。

「一九七〇年代、まだ日本酒に糖類やアミノ酸類、醸造アルコールをたーっぷり加えて、訳の分からん酒もどきが横行しておった頃は、地方の蔵へ行っても、貯蔵用冷蔵庫を持っている蔵は少なかったです。今日では信じられんことですが、わずかな酒(醪<もろみ>を絞った物)に醸造アルコールをたーっぷり加えて造られた酒もどきは、冷蔵しなくても大丈夫だったんですね。つまり『生きもの』ではなかったんだわ。その頃の酒といえば、口中ベタツキ、喉越しベタツキ、翌朝は頭ズキンズキンちゃんになるっちゅうしろものでしたんで、日本酒離れも加速しとったんですね。」

時は流れ、先日、今までなじみのなかった酒米を使った、静岡産の上質な日本酒に出会いました。一升瓶の裏の原材料米には「滋賀渡船6号」とあり、表には「袋吊り斗壜(とびん)囲い」とあります。

「滋賀渡船(しが わたりぶね)6号」とは酒米の種類、それから「袋吊り斗壜(とびん)囲い」とは日本酒の搾り方と熟成の仕方のことです。日本酒の仕掛品であるところのどろどろの醪(もろみ)を袋に入れて吊るすと、自重で袋からぽたぽたとしずくが垂れる。そういう風に余分な圧力をかけずに絞ったのを、一斗瓶でひっそりと熟成させたのを「袋吊り斗壜囲い」といいます。しかし、「斗瓶『囲い』」とは不思議な用語です。

「滋賀渡船」は滋賀で生まれた酒米の品種で、50年ほど前まで生産されていたそうです。「渡船」のひとつである「滋賀渡船6号」が誕生したのは大正5年(1916年)。「渡船」は、酒米として有名な「山田錦」の親の系統に当たるそうです。「山田錦」が兵庫県農事試験場で開発されたのは大正12年(1923年)。栽培が途絶えていた「滋賀渡船6号」が酒造りのためにまた少しだけ生産され始めたのでしょう。先日出会ったのは、その「滋賀渡船6号」で造った日本酒です。

「斗瓶(とびん)」とは容量が一斗(いっと)、つまり十升、つまり18リットルの巨大ガラスビンのことです。下の写真は、容量が19リットル、ほぼ一斗のホーロー容器です。我が家ではこれを冬はタクアン作りに使っています。この中で天日干しした大根をタクアンへと熟成させます。一斗はけっこうな容量です。(そういえば、灯油のポリタンクが18リットルでした。)一斗入りのガラス瓶だと非常に割れやすい。だから、木枠で丁寧に囲い割れないようにする。「斗瓶『囲い』」とよばれる所以です。「斗壜囲い」された日本酒は暗い寒いところでゆっくりと熟成されます。

2013
         一斗容量の(ホーロー製)容器

米を選び手間をかけた日本酒の割には、価格は穏当です。品格があり、腰のしっかりとしたお酒です。

先日、「ゆめぴりか」と「ななつぼし」という北海道の食米のブレンドで造った日本酒を見つけました(「料理酒は、地元の食米で作った日本酒」)。晩ごはん前に「滋賀渡船」を冷やで少しだけ飲んで幸せな気分になり、食事中はぬる燗の「ゆめぴりか+ななつぼし」というのも悪くありません。

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