« 少し智恵が足りないかもしれないシンジュ(神樹) | トップページ | 北海道観光はカニと牛肉 »

2015年9月 3日 (木)

野菜や果実の抗酸化力の新しい測定方法と、その一部の結果

2012年4月のブログ記事(「食と3種類の知とヘルシーエイジング(3)(3-2)(その2)」に次のように書きました。長いですが、一部を引用します(引用部分は、◇◇から◇◇まで)。

◇◇

たいていの生物は呼吸する空気に約21%含まれている酸素がないと非常に困るけれども、同時に酸素は、生物にとっておそろしい存在です。呼吸で体内に取り入れた酸素から一定割合(吸った酸素の2%)で発生する活性酸素(スーパーオキシド)やそれが変化したもの(ヒドロキシルラディカル)、あるいは紫外線を浴びると発生する活性酸素などが、私たちを、細胞レベルでゆっくりと傷つけ劣化させます。若いとき、つまり再生産可能年齢に達するあたりまでは、活性酸素は私たちの体を病原菌から防御しますが、私たちが再生産可能年齢を過ぎてしまえば、その同じ活性酸素が逆に私たちを静かに攻撃し始めます(ニック・レイン「酸素-世界を作った分子」)。

だから、その活性酸素が発生した時点でそれをある程度消すことができたら、我々の細胞の劣化はそれだけゆっくりとしたものになります。活性酸素を消すには抗酸化力を持ったなにかが必要です。私たちも活性酸素から体を防御する機能を持ってはいますが、それだけでは足りない。年齢とともにだんだんと足りなくなる。

ありがたいことに、私たちが食べる野菜・果物・穀物にはファイトケミカルという形で抗酸化力が保持されています。虫の攻撃、紫外線で生じる活性酸素の攻撃などから身を守るために植物が自ら作り出した物質がファイトケミカル(ファイトはギリシャ語で植物の意味)で、植物栄養素とも呼ばれますが、おもに植物の色素や香り成分、アクなどに含まれています。サプリメント製造販売会社の露出頻度の高いコマーシャルなどを通じて、私たちにおなじみになったファイトケミカルには、リコピン(トマト)、アントシアニン(赤ワインやブルーベリーや黒豆)、カテキン(緑茶)、ケルセチン(タマネギ)などがあります。

野菜・果物・穀物の抗酸化力の公開という点では、自国民が野菜を食べないのでその健康状態に政府がイライラした米国が先を走っていますが、米国の抗酸化力指標であるORAC (Oxygen Radical Absorbance Capacity)には不十分なところ(たとえば、ORAC分析法は分析精度が低い、ORACでは緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイド系抗酸化物質〈β-カロテンのような化合物〉の抗酸化能を評価できないなど)があるので、日本ではORACの欠点を補ったAOU (Anti-Oxidant Unit)という指標が測定データの整備も含めて標準化の確立中・普及中といった状態です。

◇◇

ある会社からニューズレターが送られてきました(「ベジマルシェ通信VOL 56」)。そこに、次のような興味深い記事がありました。

新しいタイプの測定法(SOAC法)によって野菜や果実の抗酸化力を測定してみると、従来の測定方法ではよく見えなかった特定の野菜や果実の抗酸化力の様子が見えてきた、というのがその骨子です。

下はその記事の中のグラフです。こういうデータにはなかなかお目にかかれないのでそのグラフを引用させていただきました(引用に関しては、この場を借りてお礼申し上げます)

Dpphsoac

このSOAC法と呼ばれている測定方法は、ある民間の食品会社とある国立大学によって数年前に開発されたものです。簡便な測定方法なので、それを研究やビジネスに利用しているところも多いらしい。したがって測定データは企業や大学の研究室や開発部門に蓄積していると思いますが、それらが一般消費者の目に触れる機会はほとんどありません。上記のニューズレターの中のデータ(パプリカの抗酸化力の相対値)は、だから、ぼくたちには興味深い。

農産物の抗酸化力に関しては、ブドウなどに多く含まれる抗酸化物質である「ポリフェノール(アントシアニンなど)」については測定方法がほぼ確立していましたが、ニンジンやトマトなどに含まれる抗酸化物質の「カロテノイド(リコピンやβ‐カロテンなど)」の正確な抗酸化力についてはよくわからなかった(換言すれば、実際よりも低く見積もられていた)。SOAC法の登場によって、カロテノイドの抗酸化力についても実態に即した結果が手に入るようになりました。

(最初に引用した部分と一部重複しますが、)野菜や果物の抗酸化力の対象であるところの活性酸素は、呼吸などによって発生する「ラジカル」と、紫外線などによって発生する「一重項酸素」とに大別されます。そして、そうしたタイプの違う活性酸素の消去に効果のある農産物の抗酸化物質もそれぞれ異なっています。たとえば、赤ワインに含まれる「アントシアニン」(総称して「ポリフェノール」)は「フリーラジカル」に強い。一方、赤やオレンジ色の野菜に多く含まれる「リコピンやβ-カロチン」(総称して「カロテノイド」)は「一重項酸素」という活性酸素に強い。

こういう数値がわかれば、たとえ野菜ごとや季節ごとの相対数値であっても、野菜好きな消費者には役に立ちます。ちなみに、季節ごとというのは、旬とそれ以外の時期という意味です。関連記事は「バジルと旬(しゅん)と抗酸化力」。

人気ブログランキングへ

|

« 少し智恵が足りないかもしれないシンジュ(神樹) | トップページ | 北海道観光はカニと牛肉 »

ヘルシーエイジング」カテゴリの記事

情報処理」カテゴリの記事

農産物」カテゴリの記事

野菜と果物」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1317632/61429254

この記事へのトラックバック一覧です: 野菜や果実の抗酸化力の新しい測定方法と、その一部の結果:

« 少し智恵が足りないかもしれないシンジュ(神樹) | トップページ | 北海道観光はカニと牛肉 »