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2015年9月16日 (水)

日米関係のサブセットとしてのTPP

札幌のあるところで、TPPの現況や北海道農業の今後を話し合うための小さな会合がありました。参加女性のTPPや農業を超えた活発な議論に刺激されたので、以前のブログ記事と内容が一部重複しますが、以下のような文章を書く気になりました。

◇ ◇ ◇

ある国の軍隊が、他の国に、治外法権状態で駐留しているという状態は、後者が前者の植民地、ないしは属国ということです。たとえばイギリスとインド、フランスとベトナム、オランダとインドネシアが長い間そういう関係でした。そういう事実からすれば、現在の(というか戦後の)日本は間違いなく米国の属国です。こんなことは、立場を変えて、かつて日本の軍隊が近隣他国に治外法権的に駐留していた頃の状況を想起し、日本が(あるいは当時の日本国民が)そういう国をどう位置付けていたかを考えたら簡単に納得できます。

植民地や属国という被支配国では「買弁」と呼ばれる被支配国生まれで被支配国の国籍を持った人たちが活躍します。活躍するとは実質的な政治権力を有するということです。買弁のもともとの辞書的な意味は「(中国)明・清時代の宮廷用物品の調達者」ですが、それが転じて「外国資本への奉仕によって利益を得、自国資本の利益を圧迫する者」ということになりました。

これを日本の状況に当てはめると、現在の(あるいは戦後の)日本における実質的な支配者は、スーパー買弁とでも形容するのがふさわしい霞が関の官僚です。霞が関の官僚といっても、全部の中央官僚組織ではなく、外務省や財務省、経産省や法務省のような省庁ピラミッドの頂点に位置する省庁のことです。そして、そういう官僚に定例的に指示を与えているのが「日米合同委員会」という名の委員会。合同委員会への出席者は、米国からは在日米軍の高官、日本からは外務省や法務省、財務省などのトップクラスの官僚です。 (「日米合同委員会」やその周辺については孫崎亨氏の著書「日米同盟の正体」「戦後史の正体 1945-2012」や矢部宏治氏の著書『日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか』を参考にしています。)

けっこう面白いのは、高級官僚という日本的買弁の人たちは、米国が直接に命令しなくても「前もって米国の気持ちを察して」、米国のためにいろいろと考えるということです。昔の時代劇には、お殿様の気持ちを察した家老や側用人が、お殿様に代わって、ひそかに事を進める場面がよく登場しましたが、つまり、あれ、です。歴史的に華夷思想の刷り込みの長かった日本人が共通に持つ気質のひとつかもしれません。

中央官僚は米国の気持ちを察して政策提案を行い、その周辺(取り巻きとも云います)の「大本営発表」報道が得意なマスメディアは、それを支援・増幅する記事を書きます。これはぼくたちが日常的に経験することで、TPP報道はそのひとつです。Under Controlということになっており、米国の利害との直接の関係は今のところはないとされている福島第一原発事故の報道も別のひとつです。

日米間の重要な条約のひとつが日米安保条約です。日米安保条約は、日米のどちらかが延長したくないと云えば、1年後に解消できるような取り決めになっています。

外務省のホームページには「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」、いわゆる日米安保条約が掲載されていますが、以下はその第十条の引用です(下線は「高いお米、安いご飯」による)。

『第十条
 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。
 もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。』

第十条の英文は以下の通り。

ARTICLE  X

This Treaty shall remain in force until in the opinion of the Governments of Japan and the United States of America there shall have come into force such United Nations arrangements as will satisfactorily provide for the maintenance of international peace and security in the Japan area. However, after the Treaty has been in force for ten years, either Party may give notice to the other Party of its intention to terminate the Treaty, in which case the Treaty shall terminate one year after such notice has been given.

この条約の締結日が1960年1月19日なので、十年間効力を存続した後とは1970年1月19日以降ということです。

なお、アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍が日本国において使用することを許される施設及び区域や日本国における合衆国軍隊の地位は、別個の協定により規律される、となっています(第六条)。別個の協定とは、日米安保条約の補足協定としての日米地位協定のことで、その前身は日米行政協定です。普天間や岩国に配備されたオスプレイやオスプレイが日本各地で行うその飛行訓練は、この協定にかかわる最近の事例です。

1960年に締結された日米安保条約は、当事者のどちらかがこの条約が嫌になれば、「ご破算に願いましては」と通告することができる仕組みをとっています。言葉を換えれば、米国との軍事的な協力関係が今後も必要な場合でも、現行の条約をその補足協定である日米地位協定を含めて破棄し、日本にとって好ましい内容の「新・日米安保条約」と「新・日米地位協定」を結びなおすことができるということです。

だから、たとえば、新しい日米安保条約の骨格を検討する際に、(1)まず治外法権扱いであるところの米国の軍事基地は日本からすべて撤収してもらう、しかし(2)同時に両国間では軍事的の支援協定が当面の間は必要なので現行のものとは違った形で新しい支援協定を締結する、という二つの意思をもとに出発することもできるというわけです。

その解のひとつは、たとえば、小沢一郎氏のかつての発言にあったような「在日米軍は第7艦隊だけで十分」という考え方です。そこでは(1)における治外法権排除という意思と、(2)における軍事支援協定締結の意思という二つの意思が「現実的に」組み合わされています。

しかし、米国の意思を前もって慮る(おもんぱかる)ことに熱心な官僚は「現行の日米安保条約の破棄・変更などは米国は望んでいない」、「米軍は沖縄からグアムに引き上げたいのではなく、沖縄に治外法権状態でとどまりたいに違いない」と前もって慮り、そういう慮りに抵触・抵抗する動きを自ら排除しようとします。

戦後、日米安保条約や地位協定の改定や米国債の売却に関心を持ち、関心を持っていることをまわりに発言し、そしてそれらの実行に取り掛かろうとした人たちのうち、その時に政治の表舞台で顕職にあった政治家は、たいていの場合、なぜか、短期間のうちに不幸な事件に遭遇するか、その後に不運な境涯を経験することになりました。小沢一郎氏がそうでしたし、鳩山由紀夫元総理もそうでした。その前は、故・田中角栄元総理や故・橋本龍太郎元総理がそうでした。所属政党は無関係です。それから、元財務大臣の故・中川昭一氏もそうでした。彼は、実質的には売却に相当するところの10兆円規模の米国債の活用を2009年2月に実行に移そうとしていました(中川昭一氏に関する一行は後日追加)。

この国の政治の実質的な意思決定者・支配者が米国に対して買弁的な役割を担っている中央官僚であり、その支援団体が大本営発表報道を得意とするほとんどのマスメディア(NHK、ほとんどの民放、ほとんどの大新聞)だという構図を考えると、日米安保条約や地位協定の改定や米国債の売却に関心と熱意を持った政治家が、次々と失脚ドラマの主人公になったことに何の不思議もありません。

◇ ◇ ◇

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