アグリカルチャとしての農業
農産物を基礎農産物と付加価値農産物に分けてみます。米や麦や大豆、ジャガイモやタマネギやニンジンやカボチャ、小松菜やキャベツや大根、卵やバターなど日常の食生活に不可欠な農産物は基礎農産物です。トマトやピーマンやリンゴも基礎農産物。一方、メロンやイチゴやマンゴーなど嗜好性の強い果実や外国人観光客も大好きな霜降り和牛などは付加価値農産物です。リンゴなどは基礎農産物と付加価値農産物の両方の特徴を持っているかもしれません。磨き上げた純米大吟醸の高級日本酒なども付加価値農産物加工品です。
農業は英語でアグリカルチャ Agricultureです。Agricultureの語源はラテン語で Ager = Field と Culture = Cultivate を合わせたもの。つまり、Cultivating the land 土地を耕す、というのがその言葉のもともとの意味です。ちなみに、文化は英語でCultureです。文化とは人の生活や心が、土地を耕すように「耕されたもの」という意味です。
農業や農産物を十把一絡げ(じっぱひとからげ)にするのではなく、基礎農産物をアグリカルチャ農産物、付加価値農産物をアグリビジネス農産物と呼び変えると状況は捉えやすくなります。
TPPの推進が大好きな安倍晋三首相や政府は、農業に関しては「守る農業から攻める農業への転換を図る」と姦しいのですが。攻める農業とは輸出する農業とほぼ同義語でしょう。上述の用語を使って言いかえてみると、「守る農業から攻める農業への転換を図る」とは
・「輸出のできない分野の農業には政府は関心がない」
・「アグリカルチャとしての農業には政府は関心がない、政府が興味を持ち支援したいのはアグリビジネスとしての農業だけである」
・「基礎農産物(アグリカルチャ農産物)はどこか外国から安いものを輸入すればよい。輸出競争力のある付加価値農産物(アグリビジネス農産物)や付加価値農産加工品だけを政府は支援したい」
ということになります。
TPPとは、リカードウの比較優位(比較生産費説)に政治的な色付けをしたもののことです。比較生産費説を現在の日本の農業用に響きのいい言葉で適用すると「守る農業から攻める農業への転換を図る」になります。日本はお金があるので、農畜産物や水産物はいつでも外国の供給国から安く買えることになっている、らしい。
主要各国の農業のGDP寄与率、穀物自給率の状況、そうした国が農産物の輸出国か輸入国かを概観してみます。各国ともアグリカルチャ農産物、基礎農産物であるところの穀物自給に関しては実にしっかりとしている。
「守る農業から攻める農業への転換を図る」といった議論が登場するたびに、TPPや比較生産費説のお好きな方が日本農業のための参考事例として取り上げるのは、ほぼ例外なくオランダ(「蘭」)です。それもたいていは、植物工場でトマトとパプリカを生産する農業国としてのオランダです。
オランダは環境条件などでアグリカルチャ(土地を耕す)としての農業が難しいので、煙草や酒(ビール)や、植物工場生産のトマトやパプリカなどのアグリビジネス農産物に向かいました。オランダの主要輸出農産物は、煙草とチーズとビールです(FAO統計)。タバコとビールで儲けていることには、トマトとパプリカが好きな人は、触れたがらないようです。
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