イチョウは落ち葉
北海道大学のようなイチョウ並木の美しい場所は、この時期の天気の良い週末や祝日は、家族連れやデートの男女、カメラオヤジやカメラ女子で混雑します。ぼくが配偶者とイチョウ見物に行った日は散りの加減がけっこう進んでいましたが、黄色にはさまれた並木道を歩く人たちの視線は水平か上向きで、ぼくのように視線が下に向かっている人はあまりいないようです。
頭上のヤマブキ色や黄色もいいのですが、落ち葉のイチョウも捨てがたい。だからぼくの視線は、黄色の広がりを求めて地面に下がります。
「イチョウは落ち葉」などとつぶやいていると、枕草子の書き出し部分の視線が季節によってどうだったのか気になったので読み返してみました。
『春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。 夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。(後略) 秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。(後略) 冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。(後略)』
視線は、春も夏も秋も、緩やかに変化するものや動きのあるものを見ているためか、少し上向きのようです。冬になると視線は下がって、早朝の地面に積もった雪や降りた霜に注がれています。
イチョウ科の植物は相当に古い昔から日本にもあったようですが、ぼくたちが目にする種類のイチョウは清少納言の時代の京都にはなかったのか、あるいはあったとしても黄葉や紅葉と云えばモミジやカエデのことで、可憐とは云い難いイチョウの黄色は彼女の眼に入らなかったのか。
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