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2015年11月24日 (火)

「TPP協定交渉の大筋合意に関する説明会」に参加してみました

『TPP協定交渉の大筋合意に関する説明会の開催について』『趣旨:環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉は、10月5日、米国アトランタで開催されたTPP閣僚会合において、大筋合意に至りました。これを受け、TPP協定交渉の大筋合意の内容について説明会を開催します。』『主催:内閣官房、北海道』という説明会が先週の金曜日にあったので参加してみました。2015年10月5日まではごく一部の関係者以外には、国民にも国会議員にも、交渉内容が機密保護という理由から秘密にされていたのは皆さんご存じの通りです。

説明会の案内文書には、参加する場合の留意事項として以下のような面白い記述もあります。『参加する場合の留意事項・・(中略)・・ア) 会場では、大声を張り上げるなど、議事進行を妨げる行為は行わないでください。イ) のぼり、プラカード、横断幕、拡声器、鳴り物など、議事の進行の妨げになる物品等は持ち込まないでください。ウ) その他、円滑な議事進行に関して、係員の指示に従ってください。』

共同通信社が地方自治体の首長を対象にした実施したアンケート調査(11月14日に集計結果を発表)を、都道府県別に、「賛成」する自治体が多いところは「グレー」、「反対」する自治体が多いところは「赤」と区分け地図にしたのが以下の絵です。「うーん?」と迷っているところ(「どちらともいえない」が多いところ)は「白」です。ちなみに、北海道は「赤」(反対が多い)。

          Tpp_20151114

説明会があったホールの定員は500名ですがほぼ満員でした。プラカードや横断幕は見あたりません。見回したところ、参加者の90%近くがダークスーツ。ダークスーツは中年・熟年・それ以上の年齢の男性が多いようです。ぼくのような紺色ジャケットにノーネクタイやそれ以外のもっとカジュアルな服装が10%。女性参加者は全体の3~4%くらいです。

説明会は質疑応答を含めて二時間余りで、説明担当者は内閣官房と農林水産省と経済産業省からそれぞれ一名です。北海道という事情を考慮したためか、三人の時間配分は内閣官房が35%、農林水産省が45%、経済産業省が20%。説明会の趣旨というか目的が、政府による「TPP参加の必要性と今回の大筋合意という成果のアピール」なので、配布された100ページを超える資料も、そういう方向できれいに整理されています。

ものごとを説明する場合、資料に書かれていること(つまりテキスト)にそってそれだけを説明するという方法と、資料に書かれていることと資料には書かれていないがその記述や結果が生まれてきた背景や文脈(つまりコンテキスト)の両方を説明するという方法の二つがあります。資料から簡単に類推できることは背景説明とは云わないとすると、今回の説明会は当然のことながらテキスト解説だけでした。大学の大教室で、教授やその弟子がまとめたテキストを教授ないしその代理が頭から要点を順番に解説するという雰囲気です。コンテキスト領域への勇み足はありませんでした。

気になったのは、最初に挨拶に立った内閣府の政務官もそうでしたが、説明担当者も「国益」という言葉を、その場ではまだ未定義状態であるところのその言葉を、気軽に使いすぎることです。「今回、国益に沿った成果が確保できたのではないかと思います。」誰にとってのどんな国益なのか。(ここでは余計なことですが、「誰にとってのどんな国益なのか」は、日本に限らず、他のTPP参加予定国にとっても妥当する内容の質問です。)

「国益」がもっと抽象的かつ観念的になると「(国の)大義」というかつてよく使われた、あいまいな表現になります。反対意見を強引に抑え込むときに便利だという意味で同じような疑似道徳的な色合いをもった言葉に「反社会的」というのもあります。これが過度に進むと「非国民」に変化します。今回の、説明者側が使う「国益」という言葉にはそういう色合いがいくぶんなりとも感じられます。

質疑応答の際に「TPPによって、食料自給率はどれくらい低下するとお考えですか?」という質問がある女性からありました。説明者からのその質問に対する回答は「明確にはわかりません。なぜなら、食料自給率というのは、スーパーの棚に国産品と輸入品が並んだ時に、消費者がどちらを選ぶかという問題なので。」

この回答には抑えた控えめな部分と尖がった部分が共存しており、回答者の考え方の軸がよく見えないところもあるのですが、その発言を控えめでない風に思い切って翻訳するとどうなるか。たとえば、次のようになります。

 『食料自給率の高さや低さを云々する方がそもそもおかしいのではありませんか。消費者が好きな食べ物を、流通業者は値段の安い国や地域から持ってくればいい。消費者はその方が幸せですよね。TPPという仕組みでそれがより簡単になる。そういうことです。
 
 それほど食料自給率が気になるのなら、国内で生産された食べものをしっかりと買えばいいでしょう。普段は特売輸入品や輸入素材がいっぱい詰まった加工食品ばかりに目を向けている酩酊(めいてい)状態のくせにこういう時だけは素面(しらふ)になる。地元民があまり利用しなかったデパートがとうとう撤退することになり、そういうことでは困る、もっと何とか頑張ってほしいと急に騒ぎ始めた地元の消費者と同じことです。消費者としての自覚が足りない。』

そんなことを考えながら、後ろの方の席に座っていました。

今回の配布資料の主要部分は以下の通りです。

・「環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の概要
・「TPPにおける関税交渉の結果
・「TPP交渉 農林水産分野関係追加資料
・「環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)における工業製品関税(経済産業省関連分)に関する大筋合意結果

以上を含むところの政府作成のTPP関連資料は、「TPP政府対策本部」のホームページ(ないしリンクされた関連省庁HP)で入手できます。

関連記事は〈ダニ・ロドリク著「グローバリゼーション・パラドックス」と、下村治著「日本は悪くない(悪いのはアメリカだ)」:グローバリゼーションと国民経済〉。

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