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2015年12月 8日 (火)

民法改正と消費者

前の国会では流れてしまいましたが、そのうち改正された民法が成立すると思われます。だから、それにそなえて、民法の改正部分と消費者との関係が今後どうなるといったことについてのセミナーが、一般消費者との契約や取引の多い企業やそういうことに関心のある消費者を対象に、地方自治体と消費者支援NPOなどの共催で行われています。講師は、消費者支援活動に関心のある民法や消費者法の専門家です。ぼくも、消費生活アドバイザーなので、セミナーに参加して知識のアップデートです。

民法と消費者法は、民法が一般法、消費者法が個別法という関係です。商品やサービスの提供者であるところの事業者とそういう商品やサービスの購入者であるところの消費者を比較すると、商品やサービスについての情報量、何か問題やトラブルがあった時の両者の交渉力や経済力に差がありすぎて、一般法である民法では消費者保護が難しい。だから、消費者法という個別法が用意されました。

消費者法という名前の法律はありません。消費者保護にかかわる「消費者契約法」「特定商取引法」「割賦販売法」「製造物責任法」などを総称して消費者法と呼んでいます。なぜかあせって契約してしまった、勧められるままに気がついたら商品を買ってしまっていた、実際は必要ないので契約を取り消します、ということができるクーリング・オフ制度(クール・オフは頭を冷やすという意味)は、消費者法の機能のひとつです。

個別法はそれがカバーする個別の事態には対処できますが、個別事態は内容や環境や媒介物が変化していきます。悪い方面に才能を発揮する業者などが個別法の隙間、個別法のカバーできる範囲からはみ出したあたりで悪意のある商売を行うと、個別法では対処しきれません。新しい個別法や個別法がアップデートされるまでは、そういう隙間で発生した問題は一般法である民法で対応するしかありません。

民法は、そういうことも含めて、一般的にどのように改正されたか、そういう趣旨のセミナーです。今回の民法改正は、既存の判定法理が明文化されたものも多いのですが、一般的な消費生活者に関するであろう(と、ぼくが勝手に考える)変更部分を以下に順不同に並べてみます。ぼく自身のための備忘録です。

     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

◇ 商売をしている知り合いや友人が事業資金を借り入れ、その借り入れたお金の保証人にその会社の経営とは無関係なぼくたちがなる場合は(こういう消費者は数多くないにしても少しはいます)、保証債務を引き受けるという意思表示を(公証役場の)公正証書で表示する必要があります。そうでない場合は、保証契約は無効です。

公証役場で、以前は地方裁判所の判事だったような年配の公証人の前で行う「この契約の内容は十分に確認しました、保証人になっても大丈夫です。」といった感じの確認プロセスが保証人のために追加されたということです。(お金を貸す方にとっては、面倒なプロセスが増えたということかもしれませんが。)

◇ 個人根保証(ねほしょう)契約にも限度額が定められました。限度額の定めのないものは無効です。たとえば、知り合いがアパートを借りていてその賃貸料の保証人になったような場合で、こういうケースは日常生活でも比較的多い。

知り合いが銀行からお金を借りるときに、借入は毎回100万円、借りた本人はその100万円を返済していくのですが、限度額500万円までは借りられるというような契約の保証を引き受ける場合、それを根保証(ねほしょう)といいます。つまり、保証人は100万円ではなく500万円の、しかし500万円を限度とする保証責任を負います。

知り合いの毎月10万円のアパートの家賃の支払いが1年間滞った場合も同じで、限度額が50万円と定めてあれば、「あのヤロー」と思いながらも、その金額までは責任を負うことになりますが、その金額以上の責任は負いません。

◇ 法定利率は、現行は5%ですが、改正民法施行当初は3%になります。その後、金融事情に応じてその利率は3年に1回変更されます。

最近増えてきたのですが、突然に暴走した乗用車やトラックに轢かれて大けがをし、その後、働けなくなった、職場復帰が不可能になったというような交通事故があります。そのような場合は、たとえばその事故にまきこまれた方が65歳まで働いたと考え、その年齢までに得られたであろう所得金額(積分値)が賠償額として支払われます。

その賠償金は、現時点で支払われるので、その金額は上記の所得金額(積分値)を現在価値に割り引いた額となりますが、法定利率が5%のときよりも、法定利率が3%の方が、割引率が小さい分だけ現在価値は大きくなります。被害者が受け取る賠償額(つまり、運転者が任意保険に入っていた場合に損害保険会社が支払う賠償額)は、民法改正前よりも民法改正後が少なからず(複利で年2%)大きくなります。

◇ 消滅時効は、現行民法では、「権利を行使できる時(客観的起算点)から10年」ですが、これに、「主観的起算点から5年間の消滅時効」が付加され、いずれかが充足されたら時効消滅することになりました。あるとき、ある事柄に関して行使できる権利が存在することに気がついても、その権利を行使せずにぼんやりとしていたら、その権利を5年間で失ってしまうということです。

業務の世界ではこんなぼんやりはまず見かけませんが、一般消費者ならやりかねない。世の中お互いにそれほど暇ではないので、ぼんやりしてないでしっかりしようね、というメッセージかもしれません。

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