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2015年12月 4日 (金)

大きな活字の文庫本、小さな活字の文庫本

手軽に公園や電車の座席や自宅の畳の上などいろいろな場所で読めるように開発されたのが日本の文庫本だと思いますが、どうもその出発点が学徒に向けた名著・古典の廉価版・小型本化だったらしいので、内容や活字の大きさなどを含むところの万人に対する読みやすさなどは考慮の範囲外だったのでしょう。

だから、その発展形、アップデート版が、新書版だというのはよくわかります。日本の新書版は、欧米のペーパーバックに由来すると勝手に考えていますが、本当にそうであるかどうか自信がありません。

ビートルズの名曲のひとつに「ペーパーバック・ライター」というのがありますが、その曲がラジオから流れてきた頃はペーパーバックをハードカバーの本に対する廉価なソフトカバー本だと理解している人は多くなかったように思います。「ペーパーバックって何だか知っているか?」という会話を学校の教室の休憩時間に聞いたことがあります。しかし、その当時も新書版の小説や実用本は本屋の棚を埋め尽くしていたので、日本の新書版と欧米のペーパーバックのどちらが先に生まれたのかはよくわかりません。その気になって調べたらわかるのでしょうが、こういうことは調べずに曖昧にしておいた方がいい主題かもしれません。

ぼくの知る限り、というよりも、いろいろと入れ替えがあったあと、現在、とても古い発行日のものから最近のものまで、本棚で、小粒でもピリリと辛いといった感じの存在感を示している文庫本をざっと手に取る限りにおいては、いわゆる文庫本サイズの文庫本でいちばん(ポイント数の)大きい活字のものは「ちくま日本文学」シリーズだろうと思います。

あまり固有名詞は出したくありませんが、活字の大きさにともなう心地よさが不足しているという点でいちばん読みたくないのが岩波文庫です。少し前までの河出文庫も読みにくい。

以前に熱心に目を通したものの一部を読み返すには、小さい活字でもかまわないし、最初から一部だけを参照するような場合も文庫本の小さな活字を我慢できます。活字の大きさにこだわるなら、最近は電子書籍もあるので、それを購入して好みのフォントサイズに拡大すれば、活字の大きさを云々する必要もありません。しかし、ぼくの中では、今のところは、電子書籍・電子本の役割は、読み捨て本や読み切り本、雑誌までです。

以前、たしか岩波書店だけだったと思いますが、「大きな活字の文庫本」という括り(くくり)の本が短期間(記憶では数年間)販売されました。「ちくま日本文学」が「大きな活字の(正真正銘サイズの)文庫本」であるのに対し、岩波版は「大きな活字の大きな本」で、ぼくは好きでしたが、短期間で市場から消えていきました。担当部署は、けっこう頑張ったのでしょうが、結局は、売上に裏打ちされた人気が出なかったのでしょう。

ぼくの本棚には、いわゆる「大きな活字の文庫本」は二冊あります。たった二冊です。しかし、今となっては貴重品です。一冊は「華国風味」(青木正児著)という中華食に関する中国文学者のエッセイ、もう一冊が「この人を見よ」(ニーチェ著)。前者が「ワイド版岩波文庫」と呼ばれていたものでソフトカバー、後者が「活字の大きい岩波文庫特装版」でこちらはハードカバーです。なぜ、この二冊なのかは、買った本人にも謎です。

どうしても大きな活字で読みたい場合は、中古の単行本を買い求める場合もあります。「大きな活字の文庫本」が増えるとありがたいのですが、おそらくニッチ市場にも届かない小さな市場なので、ないものねだりでしょうね。

上述の青木正児の別のエッセイ「酒中趣」の序文に「某月某日天気晴朗、一瓢を携えて老妻と杖を北郊に曳くほどの、浮れた気持にさへなって来た。」という箇所があります。こういう場合に携える本はとうぜん小さな活字の文庫本ということになりますが、一瓢、つまり、冷や酒が入った瓢箪(ひょうたん)の水筒を携えているし、奥さんもいっしょなので、気持ちよく酔っぱらってしまって、文庫本に目を通す暇はなさそうです。

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