« 伊達巻(だてまき)の優先順位 | トップページ | 函館までの北海道新幹線に関して »

2015年12月15日 (火)

内部競合でより活性化してきた「ゆめぴりか」

ホクレンというのは農業協同組合連合会という名前の通り、北海道各地のJAの元締めみたいな組織です。ホクレンは、各JAが生産する農産物に関しては、他の農産物生産地域に対する北海道というくくりではその農産物(商品)の特徴を前面に押し出しながら、同時に、いわゆる護送船団方式でその農産物(商品)の個別の(あるいは地域的な)特性を押し殺してしまうような二重構造を伝統的に保有しているようです。北海道のJAはホクレンの出資者でもあるので、そういうことになるのでしょう。

たとえば、ホクレンが取り扱っているコメはパールライスと総称されています。パールライス(真珠のようなコメ)とはどうもイメージの湧きにくい傘ブランド名ですが、そのことについてはここでは気にしません。パールライス傘下には「ゆめぴりか」、「ななつぼし」、「ふっくりんこ」、「おぼろづき」などの銘柄米があり、銘柄によってお金のかけ方に違いはありますが、ともに北海道のブランド米として宣伝されています。

ブランド米といった食べものに期待される特製のひとつは、これはコメや食べものに限りませんが、その商品の均質性です。商品の均質性とは、コメの場合だと、それをどこで買っても、いつ買っても、それが袋から出したばかりの(あるいは精米したての)新しい状態なら、炊いたときに、同じように白く、同じようにふっくらとして粘り気があり、噛んだ時に同じように甘みがある、したがって同じようにうまいという意味です。

しかし、「ゆめぴりか」でも他の三つでも、実際には生産地域の技術の差、生産農家の腕の差があります。品質が一定の基準内に収まっているものだけを当該ブランド米と認定しても、バラバラにそのまま出荷してしまうと全体としての均質性が保てません。ホクレンは北海道各地で生産された「ゆめぴりか」「ななつぼし」「ふっくりんこ」「おぼろづき」を混ぜ合わせることによって「パールライス」という傘のもとでコメの品質の均質化を図っています。だから、均質化によって救われる地域や農家が一方にあれば、均質化によって高い食味を訴求できない生産地域や農家が他方に存在します。これは上記の二重構造が引き起こす結果なので、それを前提にする限りはこういう事態は避けられない。

産業集積という考え方があります。同じような種類のビジネスとそれらと関連するビジネスが同じ地域に集結して集結効果・相乗効果を発揮しているような場合、それを産業集積、そういう地域を産業集積地と呼びます。おなじみの例だと、米国・カリフォルニア州のシリコンバレー。情報処理関連のハードウェア会社やソフトウェア企業でとても混雑しています。刃物や金属加工を得意とする会社が集まって新製品開発にお互いを刺激し合う町なども産業集積地です。

平成27年度産米の相対取引価格(一次卸価格)もとても上位になったので、期待した程度にまで「ゆめぴりか」というブランドが全国に浸透したとホクレンは考えたのでしょう。(関連記事は「その後の『気になるお米、気になる競合<「ゆめぴりか」と「つや姫」>』」。)その結果、いままでやらなかったマーケティング手法を取り入れ始めたようです。JA別商品コンテストという地域間競争です。北海道内のどの地域の「ゆめぴりか」がいちばんおいしいか。つまり、二重構造は維持するが、その構造が柔らかいものになった。あるいは二重構造に意識的に穴をあけた。

産業集積という用語を援用すると、「高食味ゆめぴりか」の生産が得意な農家が「産業集積」した「ゆめぴりかブランド地域」を作り出すという手法です。広い農地を必要とする農業なので、ソフトウェアのベンチャービジネスや金属加工の職人仲間の会社が、コア企業のいるその地域に自由に集まってくるというような意味での産業集積は不可能です。しかし、そうすることによって、地域を共有する農家には心理的には似たような産業集積効果が生まれます。そういう農家は、「ゆめぴりか」というブランド付加価値と「ゆめぴりかの良食味生産地域」という付加価値の両方の付加価値が手に入ります。

人気ブログランキングへ

|

« 伊達巻(だてまき)の優先順位 | トップページ | 函館までの北海道新幹線に関して »

米と麦」カテゴリの記事

経営とマーケティング」カテゴリの記事

農業ビジネス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1317632/62910831

この記事へのトラックバック一覧です: 内部競合でより活性化してきた「ゆめぴりか」:

« 伊達巻(だてまき)の優先順位 | トップページ | 函館までの北海道新幹線に関して »