« 通信販売とジャガイモ | トップページ | 再び、ヤーコンは飽きない »

2016年2月26日 (金)

インターネット通販で買う本と古本屋で買う本とオムニチャネル

オムニチャネルという用語が徐々に人口に膾炙(かいしゃ)しつつあります(言葉そのものは以前からありましたが)。最近のコンビニなどに見られるように、インターネット通販機能と店舗販売機能が相互に乗り入れしています。同一系列の流通網ならインターネットで注文したものを、自宅でもお店でも好きな方で好きな時間帯に受け取れる。こういうのを(これがすべてではありませんが)流通のオムニチャネル化と呼んでいます。

オムニ(omni-)とはラテン語で「全部の」とか「あらゆる」という意味です。しかしそれだけだとオムニチャネルの意味がよくわからない。以前は通勤や通学に使うバス(bus)のことをオムニバス(omnibus)と呼んでいました。その日本訳語がよくできていて、訳語は「乗り合い自動車」です。だからオムニチャネルとは、「乗り合いチャネル」「チャネルの乗り入れ」という意味になります。

オムニバスという言葉は、最近は、交通手段としてのバスというよりも、オムニバス形式の映画という風に使われることの方が多い。「乗り合い自動車」方式の映画です。カタカナよりもその方がわかりやすい。

本に関して云えば、書店でゆっくりと本の香りをかぐ時間もあまりないので、読みたい本はたいていはインターネットで取り寄せます。

本の香りと書きましたが、本の香りは、今では古本屋にしかないのかもしれません。新刊本の大きな書店では、そこに本がいっぱいあるのだけれども、本の香りというのがどうも立ち上ってきません。

手元に谷崎潤一郎の「盲目物語」があります。旧仮名遣いの見本としての用途も兼ねて数年前に買った中古本ですが、活字が大きいところも気に入っています。昭和二十一年七月に発行の改定版で(ちなみに初版は昭和七年の発行)、和紙の風味が混じった紙質がとても良い。和紙で作った紙箱は経年劣化の跡が著しいのですが、本文にはそういう経年変化や劣化がほとんど見られません。物資の少なかった昭和二十一年の印刷です。初版は昭和七年なので、初版と同じ(あるいは初版に非常に近い)品質ものを追い求めたのに違いない。

インターネット通販サイトでこの本のことを調べていたら、当時、古本サイトに一冊だけ出品されていました。出品者を調べてみると、北海道大学の近所の古本屋です。外函が壊れかけていること、店頭在庫をインターネット通販にも回しているので、店頭で先に売れた場合はご容赦、と書いてある。その古本屋に出かけ、棚に合った現物の状態を確認し、六十数年経過後の紙の美しさに驚き、外函は酷い状態でしたが、その場で購入しました。こういうのもオムニチャネルのバリエーションのひとつかとも思います。

こういう素朴だけれども本を買うということの根源的な楽しみがインターネット通販にはありません。しかし、インターネット通販では複数の古本屋を複数年にかけて渡り歩くという時間は不要です。どちらがいいか。

人気ブログランキングへ

|

« 通信販売とジャガイモ | トップページ | 再び、ヤーコンは飽きない »

経営とマーケティング」カテゴリの記事

雑感」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1317632/64104226

この記事へのトラックバック一覧です: インターネット通販で買う本と古本屋で買う本とオムニチャネル:

« 通信販売とジャガイモ | トップページ | 再び、ヤーコンは飽きない »