TPP協定関連資料に目を通す(農業や遺伝子組み換え農産物に関して)(その1)
昨年11月下旬のブログ記事「『TPP協定交渉の大筋合意に関する説明会』に参加してみました」の続きです。
そろそろ日本語訳を含めた品揃えが充実する頃だと思ったので「TPP政府対策本部のホームページ」でTPP協定関連資料(の一部)に、「高いお米、安いご飯」という視点から目を通してみました。
当該ホームページにおけるTPP協定関連資料は、TPP協定の英文、その仮訳文、対策本部や関連省庁が作成した概要説明資料とTPP交渉参加国間のサイドレター(英文、訳文)から構成されています。
TPP政府対策本部の日本語の概要説明資料は、イベント・プロモーターの要約資料や説明資料というものがたいていはそうであるように、日本経済や輸出関連企業に対してTPPが持つアドバンテージが付加価値的に要約・列挙されています。しかし、農業やバイオテクノロジー産品(遺伝子組み換え農産物)、医療や金融といった分野、つまり日本がTPPのパートナー諸国からの輸出攻勢にさらされるであろう分野におけるディスアドバンテージについては、不利なことをわざわざ解説することもないという雰囲気で言及を回避するか、回避するわけにはいかないところはさらっとした記述で済ませているようです。
とはいうものの、農業や農産物について調べようとすると、そういう章があるわけではないので全体を眺めて関連個所の当たりをつける必要があります。そういう場合には、対策本部作成の概要悦明資料が便利です。「第二章 内国民待遇及び物品の市場アクセス」と「第七章 衛生植物検疫 (SPS) 措置」、「第八章 貿易の技術的障害 (TBT)」、それから「第九章 投資」や「第十八章 知的財産」などに目を通したら、農業や農産物に関してプロモーターが明らかにしたがらない重要問題に出合えそうです。
さきほど「さらっとした記述」と書きましたが「さらっとした記述」とは、たとえば、「環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の全章概要」の「第二章.内国民待遇及び物品の市場アクセス章」の中の「譲許表(附属書)」に関する説明です(漢字の連続でさらっとしているとは云い難い文章ですが、それはさておき)。
(【蛇足的な註】(関税)譲許表 じょうきょひょう schedule of (tariff) concessions:GATT加盟国が関税引き下げ交渉の結果合意・調印した、特定産品に対する一定の関税率を国ごとにまとめた表。 1995年以降はWTO協定に引き継がれた。)
「我が国及び他の締約国の個別品目の関税の撤廃又は削減の方式、関税割当の詳細、個別品目のセーフガードの詳細等について規定。なお、我が国は、TPP協定の効力発生から7年が経った後、又は、第三国若しくは関税地域に特恵的な市場アクセスを供与する国際協定の発効若しくは改正の効力発生に必要となる我が国と当該第三国等による法的手続が完了した後、相手国からの要請に基づき、自国の譲許表で規定される関税、関税割当て及びセーフガードの適用に関連する原産品の取扱いに関して協議を行う旨を定める規定を、豪州、カナダ、チリ、NZ及び米国との間で相互に規定。」
上記の要約のもとになった英文、ないし仮訳文に目を通した方には、これが、今回は日本が関税撤廃を約束しなかった443品目の農林水産物についての議論だということが理解できますが、このなにげなく書かれた要約を見ているだけではなんのことかよくわからない。
この箇所のもとの仮訳文(の一部)は次のようになっています(第二章の「附属書二-Dの日本国の関税率表」)。
「9(a) オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド又はアメリカ合衆国の要請に基づき、日本国及び当該要請を行った締約国は、市場アクセスを増大させる観点から、日本国が当該要請を行った締約国に対して行った原産品の待遇についての約束(この表における関税、関税割当て及びセーフガードの適用に関するもの)について検討するため、この協定が日本国及び当該要請を行った締約国について効力を生ずる日の後七年を経過する日以後に協議する。」
つまり、日本が関税撤廃を約束しなかった農産物の443品目に関しては、発効日から7年後の見直し協議では、当然のことながら、オーストラリア・カナダ・チリ・ニュージーランド・米国というTPPの農産物輸出国が農産物の関税撤廃などを迫ってくる。そういう場面は想像に難くない。日本にとってのそういう火種が最初からきちんとビルトインされています。
(その2に続く)
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