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2016年3月11日 (金)

TPP協定関連資料に目を通す(農業や遺伝子組み換え農産物に関して)(その2)

もうひとつの「さらっとした記述」の例は、「環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の全章概要」「第二章.内国民待遇及び物品の市場アクセス章」の中の「現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易」に関する説明です。バイオテクノロジーによる生産品とは、遺伝子組み換え農作物のことです。

「締約国の法令及び政策の採用又は修正を求めるものではない旨規定した上で、現代のバイオテクノロジーによる生産品(遺伝子組換え作物)の承認に際しての透明性(承認のための申請に必要な書類の要件、危険性又は安全性の評価の概要及び承認された産品の一覧表の公表)、未承認の遺伝子組換え作物が微量に混入された事案についての情報の共有(輸入締約国の要請に基づき輸出締約国において現代のバイオテクノロジーによる生産品につき承認を受けた企業に対し情報の共有を奨励する規定を含む。)、情報交換のための作業部会の設置等について規定。」

遺伝子組み換え農産物は、知らぬ間にというか、なし崩し的に日本市場に浸透しています。その浸透状況は厚生労働省のホームページ「遺伝子組換え食品」でもいちおう確認できますが(そこでのニュアンスは「安心して食べてください」風で遺伝子組み換え作物に関してはとてもポジティブ)、上に引用した文面も、遺伝子組み換え農産物のマーケティング・プロモーション・メッセージに見えなくもない。

念のためにTPP協定の原文や和訳(「第二章 二十七条 現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易」)に当たってみると、遺伝子組み換え農産物の生産と流通というものが、TPP協定の中では確固たる前提となっているようです。なぜなら、

「二十七条 1  締約国は、現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易に関する透明性、協力及び情報交換の重要性を確認する。」

「二十七条 3  この条のいかなる規定も、締約国に対し、自国の領域において現代のバイオテクノロジーによる生産品を規制するための自国の法令及び政策を採用し、又は修正することを求めるものではない。」

といった具合だからです(関連記事は「米国のGM(遺伝子組み換え)小麦」)。

第九章の投資に目を移すと、最初に「投資」というものの定義が列挙されています。グローバルなアグリビジネスでは、遺伝子組み換え農産物の種子とその種子だけが耐性を持つ農薬(除草剤など)を農家にセット販売することがビジネスモデルになっていますが、そういう種子や農薬やビジネス・ノウハウは投資財産です。また、NAFTA(北米自由貿易協定)以降何かと批判の多い「投資家と国との間の紛争解決」条項、いわゆるISDS <Investor-State Dispute Settlement> 条項について知りたければ、第九章のB節に詳しく書かれています。

アグリビジネスのセット販売モデルの片割れであるところの農薬(除草剤)を、そういう背景の除草剤とは知らずに、庭の雑草排除に散布している日本の家庭も少なくありません。宣伝も巧みですし、商品はホームセンターや通販で簡単に手に入ります。

外国(TPP参加国でいえば、米国やカナダ)で生産された遺伝子組み換え農産物は、サラダ油や加工食品の原材料、家畜用飼料として、相当に輸入されています。日本では、遺伝子組み換え作物は「商業用には」栽培されていないということになっていますが、バイオテクノロジー企業がその気になってISDS条項を利用すれば、日本での商業栽培も、なし崩し的に始まるかもしれません。

少し長いですが、TPP協定における「投資」の定義を引用しておきます(仮訳文より)。

「『投資財産』とは、投資家が直接又は間接に所有し、又は支配している全ての資産であって、投資としての性質(資本その他の資源の約束、収益若しくは利得についての期待又は危険の負担を含む。)を有するものをいう。投資財産の形態には、次のものを含む。」

(a) 企業
(b) 株式、出資その他の形態の企業の持分
(c) 債券、社債その他の債務証書及び貸付金
(d) 先物、オプションその他の派生商品
(e) 完成後引渡し、建設、経営、生産、特許又は利益配分に関する契約その他これらに類する契約
(f) 知的財産権
(g) 免許、承認、許可及び締約国の法令によって与えられる類似の権利
(h) 他の資産(有体であるか無体であるかを問わず、また、動産であるか不動産であるかを問わない。)及び賃借権、抵当権、先取特権、質権その他関連する財産権

別の関連記事は「日米関係のサブセットとしてのTPP」。

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