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2016年5月10日 (火)

いいね!、トランプさん。日米安保とTPP。

タイトルは「いいね!、トランプさん」で始まるのでけっこうミーハーですが、中身はそれなりに真面目です。

次のような新聞記事がありました。

『トランプ氏 日本に波紋』
『軍駐留費、全負担を』『TPPは再交渉』

『11月の米大統領選の共和党候補指名を確実にした不動産王ドナルド・トランプ氏の発言が、日本国内に波紋を広げている。在日米軍の駐留経費の全額負担を要求し、環太平洋経済連携協定(TPP)は「ばかげた協定」と切り捨てる。いずれも日米関係の根幹に触れる問題だけに政府内や市場は警戒感を強めている。』(日本経済新聞 2016年5月7日)

トランプ氏は、日米安保条約やTPPという経済協定が必要か本当に必要かどうかのおおもとの議論をしようとしていると映ります。ペイしないものは要らない、グローバリゼーションなどくそ喰らえ、というのですから、ある意味わかり易い。その結果、「日本国内に波紋」だそうです。その通りかもしれません。しかし、必ずしも悪い波ではない。なぜなら、ぼくもこんなブログ記事を書く気になったのですから。

しかし、そういう発言にカチンと来てそんな波紋を蹴散らそうとする人も出てきます。次のような記事もありました。

『石破氏がトランプ氏批判…「安保条約読むべき」』

『石破地方創生相は6日夕(日本時間7日朝)、米大統領選で共和党指名候補になることが確定したドナルド・トランプ氏(69)が在日米軍駐留経費の日本側負担増を求めていることに対し、「日米安保条約をもう一度、よくお読みいただきたい」と批判した。(読売新聞 2016年5月7日)』

上記のトランプ氏の発言のような(よく解釈すれば)ものごとの根幹にかかわる議論に対して、条約の条文解釈というひとつ低いレベルで彼の主張を揶揄し批判しても噛み合いません。どちらかというと、みっともない。現内閣の一員なので軽率な発言を控えようとしてこうなったのかとも考えましたが、発言の中で憲法九条の改正にも触れているようなので、真剣にこのレベルで議論したいのでしょう。

トランプ氏の『TPPは「ばかげた協定」』というのは歯切れがいい。TPPは各国政府が誰かのためになんらかの理由で、なぜか秘密裏に、推進してきました。だから、受益者は当事者には明確なのでしょうが、国民には誰が受益者なのかよくは見えない。だから、「ばかげた協定」というのは、米国人ならNAFTAの結果も踏まえて、その協定は本当に国民や国民経済にとって本当に必要か、有効かという問いかけです。「不利な協定は改定する」などと中途半端は云わずに、すっぽりと投げ捨ててもらいたい。

さて、日米間の重要な条約のひとつが「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」、いわゆる日米安保条約です。こういうことには最近のマスメディアはほとんど触れませんが、日米安保条約は、日米のどちらかが延長したくないと云えば、1年後に解消できるような取り決めになっている。そう条文に明記してあります。

『第十条

 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。
 もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。』

第十条の英文は以下の通り。

ARTICLE  X

This Treaty shall remain in force until in the opinion of the Governments of Japan and the United States of America there shall have come into force such United Nations arrangements as will satisfactorily provide for the maintenance of international peace and security in the Japan area. However, after the Treaty has been in force for ten years, either Party may give notice to the other Party of its intention to terminate the Treaty, in which case the Treaty shall terminate one year after such notice has been given.

この条約の締結日が1960年1月19日なので、十年間効力を存続した後とは1970年1月19日以降ということです。

アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍が日本国において使用することを許される施設及び区域や日本国における合衆国軍隊の地位は、別個の協定により規律される、となっています(第六条)。別個の協定とは、日米安保条約の補足協定としての日米地位協定のことで、その前身は日米行政協定です。

1960年に締結された日米安保条約は、10年を経過した後、当事者のどちらかがこの条約が嫌になれば、「ご破算に願いましては」と通告することができる仕組みをとっています。言葉を換えれば、米国との安全保障に関する協力関係がなんらなの形で今後も必要な場合でも、現行の条約をその補足協定である日米地位協定を含めて破棄し、日本にとって好ましい内容の ――トランプ氏風に云うならコストと国益の関係が明確な―― 「新・日米安保条約」と「新・日米地位協定」を結びなおすことができるということです。

だから、たとえば、新しい日米安保条約の骨格を検討する際に、(1)まず治外法権扱いであるところの米国の軍事基地は(日本は植民地ではないので)日本からすべて撤収してもらう、しかし(2)同時に両国間では安全保障についての支援協定が当面の間は必要なので、現行の日本国憲法を維持しながら現行の安全保障条約とは相当に違った形で ――トランプ氏風に云うなら、お互いのコストと便益を勘案しながら、その範囲で――  新しい支援協定を締結する、ことも可能です。

そういう意味では、彼が最終的に大統領に選ばれるかどうかはわかりませんがそうなった場合は、トランプ氏の主張を「米国からの勢いのいい誘い水」と考えて、その流れに乗って、日米安保やTPPをもともとからもう一度考え直すというのは悪くないオプションです。

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