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2016年7月 8日 (金)

カップ麺と化学調味料

次のような新聞記事が目に入りました。
 
「味の素、南米でカップ麺、ベトナムでは調味料を増産」「味の素は南米でカップ麺市場に参入する。ペルーに新工場を建設し、同国を中心にチリなど4か国に販売する。ベトナムではうま味調味料『味の素』を増産する。南米や東南アジアでは中間所得層の増加に伴い、加工食品や外食需要が拡大している。市場に合わせた製品投入で・・・(後略)。」(日本経済新聞 2016年7月5日)
 
食のグローバル化とは、世界中の人たちが同じようなもの・似たようなものを食べるようになることで、つまりは、食べものの均質化ということです。農産物や食のグローバル化に関して、大まかにまとめてみると、以下のようになります。
 
□食や農業は、そもそもが、人々がそこで生き延びるためのローカルな営みである。嗜好品や贅沢品以外の農産物の貿易率は低い。
 
□農業が経済化し、農産物輸出国と農産物輸出国と密接な関係を持ったアグリビジネスのマーケティングや政治活動によって、世界中の人が同じような食材を同じような調理法で食べるようになった。これが食のグローバル化である。たとえば、
  ・パンと肉類と油脂類で食の欧米化・グローバル化(60年代以降の日本や最近の中国)
  ・世界中にハンバーガーショップ
  ・世界中で即席麺やカップ麺の消費が進行(51か国で年間1056億食、世界の人口は70億人なので大人も子供もひとりあたり年間15食)
  ・遺伝子組み換え農産物
 
□グローバル化の進んだ食材や料理は手に入れ易く、同時に奪われやすい。
 
□一方、地域独自性を維持した食材や料理(発酵食品など)は食糧安保が楽。たとえば、
  ・ジャポニカ米(世界のコメ消費量の15%)、刺身、ゴボウ、納豆、塩辛
 
農産物の生産はそもそも国内・地域内のローカルな営みで、胡椒やコーヒーといった嗜好品、あるいは高級果物を除き、農産物は国を超えた貿易の対象ではありませんでした。地域単位の地産地消が食の基本です。それぞれの地域や国が必要量を生産し、消費し、不測の事態に備えて少し蓄えておく。だから、農産物の貿易率(輸出量を生産量で割ったもの)は、自動車や石油といった製品に比べると当然に低い。これには、食べものは腐りやすいといういう事情もあります。それから、貿易率という意味では逆に、かつての植民地プランテーションで栽培作物が長年にわたって人為的に単作化されてしまい、それ以外の農産物については今でも輸入に頼らざるを得ないという別の事情を引きずっている国もあります。
 
しかし、農産物余剰国とその農産物余剰国を本籍地とするアグリビジネス(巨大な農業ビジネス)が、他国に対して農産物の販売活動、マーケティング活動を開始すれば、農産物は、衣類や自動車と同じような経済の一要素になり、食は徐々にグローバル化します。食がグローバル化するとは、世界中の人が同じような食材を同じような調理法で食べるようになることです。パソコンやパソコンOS、スマートフォンやスマートフォンOSのグローバル化と基本的には同じことです。
 
一部で最近のはやり言葉になっているらしい「攻める農業」というのも、その中身は、「たとえば、高級メロンや高級マンゴーのような贅沢な付加価値農産物」や「日本では数少ない農産物輸出品目のひとつであるカップ麺のような加工食品」をどういう風に輸出してどういう風に儲けるかということで、人々が地元で継続的に生き延びるための基礎農産物の安定的な生産という視点からは遠いようです。
 
【註】輸出入農産物といった場合、小麦粉やコメやジャガイモやパプリカだけでなく、カップ麺やビール、ウイスキーや煙草も農産物です。
 
最近では「うま味調味料」と呼ばれるようになった「化学調味料」も、かつては日本の食卓の人気商品で「白いふりかけ」風の瓶をよく見かけたものです。しかし、実態は「化学調味料」なので、直接の摂取という意味では日本では人気がなくなりました。もっとも、同じ現象が数年前から東南アジアで観察できます。食のグローバル化の一側面です。
 
この「うまみ調味料」は外食産業では日常活用品目だし、また、小型の瓶の消えた家庭の食卓から化学調味料がすっかり消えてしまったかというと決してそうではなく、後を引くような刺激的でおいしい味付けがされた加工食品や何とかの素という別の形でしっかりと浸透しています。
 
4年前の関連記事は「白いふりかけ、あるいは、うまみ調味料」。

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