料理と化粧
プラトンは料理と化粧が好きではなかったみたいです。プラトンの対話篇のひとつが「ゴルギアス」で、副題をつけるとすると「弁論術批判」ですが、そこに料理と化粧が嫌いな理由が述べられています。その理由をひとことでいうと、それらが最善ということを無視して快さだけを狙っているから、です。
仕事にはその主たる性質が「迎合」となっているものが4つあって、その4つとは「料理法」「弁論術」「化粧法」「ソフィストの術」。それらと最善を目指すものとの関係は次の通りです。
「さて、医術のもとには・・・料理法という迎合がしのび込んでいるのだが、他方、体育術のもとには、同じようにして、化粧法がしのび込んでいる。・・・(中略)・・・つまり、化粧法が体育術に対する関係は、ソフィストの術が立法術に対する関係に等しく、また、料理法が医術に対する関係は、弁論術が司法(裁判)術に対する関係に等しい、ということである。」(岩波文庫版より引用)
化粧法とは、体育術によって得られる自己本来の美ではなく、人びとに借り物の美を提供するという理由でプラトンには嫌われているのですが、そのときの化粧法は、女性というよりも古代ギリシャの市民であり体育術に励む男性が対象です。したがって、プラトンが女性の化粧をどう考えていたのかよくわかりません。プラトン風だと「美の本質」に変わりはないのですが、女性の化粧は「美の本質」を化粧する力がありそうです。
ビジネスという場において顧客を喜ばせることを迎合だとすると、たしかに料理法には迎合の香りが強いかもしれません。しかし、家族のための料理法、健康のための料理法となるとその様子は違ってきます。迎合というよりも最善に近くなる。医術も、患者側と医薬品供給者側のどちら側に重みを置くかによって、最善と迎合のバランスが微妙なものに変化します。
「収縮期血圧が129以下 /拡張期血圧が 79以下」というメッセージが復活してきました。それを活用していた商品広告もタイミングよく再開しているのを目にすると、「弁論術」は相変わらずの人気です。政府答弁や政府方針にも、憲法や共謀罪や国家戦略特区に関して牽強付会な「弁論術」や「ソフィストの術」が目立ちます。
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 新型コロナと健全な常識(2021.04.16)
- この時期の果物は九州の甘夏(あまなつ)(2021.04.13)
- 酒を飲むから、花見(2021.04.05)
- 交差点の砂利、これも札幌の春の風物詩(2021.03.29)
「食べもの」カテゴリの記事
- 久しぶりのおでんでしたが、揚げ物の油が・・(2021.04.20)
- 再び、「サンふじ」のアップルパイ(2021.03.11)
- アップルパイは檸檬果汁を加えた「サンふじ」に限る(2021.03.03)
- 蔵出しの鳴門金時が夜10時に届いた(2021.01.25)
- 小股の切れ上がった色白のレンコン(2020.12.07)
「経営とマーケティング」カテゴリの記事
- この時期の果物は九州の甘夏(あまなつ)(2021.04.13)
- 地元のプロ野球球団はテレビ中継ではマーケティング対象外らしい(2021.04.12)
- デジタル風だけどアナログの目覚まし時計(2021.04.08)
- 40年ものの電動鉛筆削りと、30年もののシャープペンシル(2021.04.09)
「雑感」カテゴリの記事
- マスクの付け方の反面教師(2021.04.14)
- 地元のプロ野球球団はテレビ中継ではマーケティング対象外らしい(2021.04.12)
- デジタル風だけどアナログの目覚まし時計(2021.04.08)
- 40年ものの電動鉛筆削りと、30年もののシャープペンシル(2021.04.09)
「ヘルシーエイジング」カテゴリの記事
- 新型コロナと健全な常識(2021.04.16)
- 不織布マスク、国産だからといって満足度が高いわけでもない(2021.03.19)
- 5-ALAという天然アミノ酸と新型コロナウィルス(2021.03.05)
- 「新型コロナの死者の平均年齢が日本の平均年齢と0.1歳しか変わらない」(2021.02.02)
コメント