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2017年7月 4日 (火)

味噌と醤油とヒスタミン

醤油や味噌といった大豆の発酵食品は体に良くないらしい、という趣旨の文章にインターネットで出合いました。この手のインターネット上の記事というのは眉唾も多いのですが、その記事が参考にしてしていたのが「最強の食事」という2015年9月に発売された翻訳本でした。配偶者に聞くと、読んだことはないけれども本の紹介記事でその存在は知っているという。で、その本を買って、醤油・味噌関連の部分だけでも丁寧に読んでみることにしました。
 
読んでみようと思った理由は味噌や梅干しやタクアンや糠漬けはすべて自家製であり、味噌だけでなく納豆や醤油も好きなぼくとしては、その根拠が気になったからです。(なお、原著は「The Bulletproof Diet」というタイトルで2014年12月に米国で出版されています)。
 
斜め読みなので見落としがあるかもしれませんが「最強の食事」(日本語版)における発酵大豆(の害悪)に関する記述は、以下の2カ所です。『・・・』が引用部分。
 
ところで、この本は、やたらに参照データというかデータ参照の多い書物で、日本語版では、参考資料一覧URLから関連資料を見ることになっています。
 
(1)第1章(日本語版45~46ページ)
 
『ヒスタミンその他の生体アミンは、野菜や種子などの植物性か、ブタや魚といった動物性かにかかわらず、タンパク質を細菌が分解するときに形成される。食物由来のヒスタミンの最大の供給源は、発酵大豆である。僕は、たまたま寿司に醤油をつけてたらふく食べたときに頭痛とじんましんを起こしたが、食事から生体アミンを排除したところ症状はなくなり、集中力が高まった。』 (下線は「高いお米、安いご飯」による)
 
やたらにデータ参照、資料参照が多い書物なのですが、上記下線部分に関してはそういうものはありませんでした。
 
(2)第8章(日本語版226ページ)
 
『アジア料理によくある味噌、納豆、醤油などの発酵大豆は、発酵過程で反栄養素が低減されるので、通常の大豆とはまったく違う。それでもまだ高濃度のヒスタミンなどの生体アミンや真菌代謝産物、グルタミン酸ナトリウム(*18)を含む場合がある。』
 
こちらに関しては、【註】(*18) があり、関連の論文を2つ参照できるのですが(2009年の醤油関連がひとつ、2012年の味噌関連がひとつ)無料で参照できるのはAbstractだけで、それ以上は論文購読料が必要だし、醤油の著者と味噌の著者が違う。味噌・醤油・納豆をいっしょにまとめたタイプの、できたら日本人によって数年以内に書かれた調査資料がないかと探していたら、以下が見つかりました。
 
農水省 消費・安全局の調査報告書(2012年)で、タイトルは「大豆発酵食品中のヒスタミン及びチラミン濃度の調査及び経口暴露の推定」です。報告書の目的(そのまま引用)は、以下の通り。
 
【目的】 ヒスタミン(Him)やチラミン(Tym)は、動植物体内のヒスチジンやチロシンが、脱炭酸酵素により分解されて生成するアミンである。 HimやTymは、食品の腐敗以外にも、食品の製造工程において脱炭酸酵素を産生する細菌等により生成するため、チーズ、ワイン等の発酵食品に含まれている場合かおる。ヒトが食品を経由してHim又はTymを過剰に摂取した場合、急性的にアレルギー様症状が起きる可能性かおる。そこで、日本人が摂取する量・機会が多い大豆発酵食品(しょうゆ、みそ及び納豆)を対象に、Him及びTym濃度を調査し、経口暴露量を推定した。
 
その報告書からこの記事に必要な部分を引用し編集すると以下のようになります。なお、Himとはヒスタミン、Tymとはチラミンのことです。
 
2012
 
当該報告書の【考察】は以下の通り。一部を除き、そのまま引用。
 
『【考察】 大豆の発酵工程でもHim、Tymが生成することが確認された。ただし、ワーストケースにおける各食品からの推定暴露量は、健康被害が報告されている最小量より低かった。これら大豆発酵食品のみの摂取によって、Him、Tymを原因とする健康被害が発生する可能性は通常低いと考えられる。』
 
味噌や納豆は、それらにとても敏感なひとは別ですが、気にするレベルではなさそうです。醤油も摂取量という意味では気にする必要はないと思います。しかしながら、その報告書を見ると、普通の醤油にはヒスタミンやチラミン含有量がけっこう高いものもあるようです。
 
だから、そういうものに敏感なかたや大豆アレルギーのあるかたには、普通の醤油でなく、小麦と塩が主原料の(つまり、大豆を使っていない)「白醤油」という手もあります。白醤油はレンコンなどを煮たときの色が上品に仕上がります。(白醤油の欠点は甘いことですが、甘味料入りの甘いタイプの大豆醤油が好きな地域もあるので、何とも言えない。)
 
「最強の食事」の著者は『僕は、たまたま寿司に醤油をつけてたらふく食べたときに頭痛とじんましんを起こした』と書いてあり、醤油をいっぱいつけて寿司をたらふく食べたのか、醤油を適量つけて寿司をたらふく食べたので、結果として醤油摂取量が急激に増加したのかわかりません。シリコンバレーには旨い寿司屋も多いので(カリフォルニア産のおいしいジャポニカ米と地元と近隣で獲れる新鮮な魚介類とカリフォルニア産のソイソース<醤油>がそこにある)、大豆に弱いかもしれないインテリな巨漢が寿司に醤油をいっぱいつけてたらふく食べるというのは不思議な光景ではありません。
 

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