« 文間文法(ぶんかんぶんぽう)という見慣れない用語 | トップページ | 香りの害、だそうです。 »

2017年11月22日 (水)

我が家の食卓は、「絶滅危惧種」らしい

何年か前に読んだ「家族の勝手でしょ!」がとても面白かったので、その続編である、岩村暢子著「残念和食にもワケがある」を買ってみました。2010年の前作と同じように、現在進行形の(その時点で最新の)家族の食卓の風景について、そして食事内容については主婦がフィルム式の簡易写真機で撮影した写真をつけて、解説してあります。ちなみに、その本の中では家族の食卓とは「子供のいる家庭の食卓」を指します。
 
新作であるところの「残念和食にもワケがある」の主題はタイトル通りで、日本の食卓で提供される和食とは呼びがたい不思議な和食(「残念和食」)、和食離れや白米離れ、そういうものが出現してきた背景、つまりその「ワケ」について記述されています。白米離れと言っても、玄米を食べ始めたという意味では、もちろん、ありません。
 
朝食は和食、それも炊き立てご飯と自家製味噌を使った味噌汁、自家製の漬物、自家製の梅干しや自家製の昆布の佃煮などが朝ごはんの必須であるところの、あるいは夜は一汁四菜を基本とするところの我が家のような「アンシャン・レジーム」がこの本を読むと、この調査のために食卓の光景や食事の作り方を提供された方々には申し訳ないのだけれど、何度も笑ってしまいます。捧腹絶倒にちかいところもある。同時に少し悲しい「革命」風景でもあります。
 
登場する主婦のほとんどは30代の初めから40代の終わりくらいの年齢層。「子供のいる家庭の食卓」が対象なので、ご主人の年齢もだいたいわかります。
 
最近の「革命的な食卓」の全体像や個々の詳細やその細かい背景説明については「残念和食にもワケがある」をお読みになってなっていただきたいのですが、ぼくにとって「印象的」だったのは「味噌汁」と「だし」についての記述です。
 
味噌汁は、かつては、ご飯と味噌汁と漬物があればなんとかなるというようなものではあっても、あるいはそうだからこそ、毎食ごとにテキパキと用意するものだったのですが(といっても、おいしい味噌汁作りには慣れと技術が必要です。しかし、それはさておき)、今は、味噌汁とは、主婦が作り置きする料理へと変身したようです。「煮返し味噌汁」だそうです。煮返しの時に具が足りなくなると、『主婦たちは「乾燥ワカメをオンした」「卵を追加投入」などと、ごく当たり前のことのように語る。』
 
味噌汁の調理方法もなかなかにユニークです。作っているのは、繰り返しますが、30代と40代の、つまり、料理歴10年~20年以上のベテラン主婦です。
 
『「何をどう組み合わせて入れても大丈夫なのが、味噌汁」という感覚』『例えば、「ニラ、大根、乾燥ワカメ、油揚げ」の味噌汁を作った主婦(38歳)。「材料を全部沸騰したお湯に入れて私は結構グツグツ煮る。シャキシャキしているものは子どもも食べないので、くたくたになったらだし入り味噌を入れる」。「ナスとネギとワカメ」の味噌汁を作った主婦(37歳)も「具材とだし入り味噌を同時に水の中に入れ、沸騰させて煮る」と言う。「大根、ナス、玉ネギ」の味噌汁を作った主婦は、「美味しくするには、味噌を入れてからグツグツ煮込むのがコツです」(31歳)と教えてくれた。』
 
2年間から3年間ほど寝かせた、たまらなく良い香りの自家製味噌を味噌汁に使っている我が家としては、ちょっとこの「革命的な手法」にはついていけません。これでは、ほとんど「味噌殺し」です。
 
次は、「だし」。最初に『「味噌汁」と「だし」』と書きましたが「出汁」と書かなかったのは、「出汁」と書くと昆布や鰹節できちんと出汁を引くのかとかえって誤解を生むので、この本にならって「だし」としました。
 
『家庭では、だし入りの「つゆの素」「だし醤油」がいつの間にか「醤油」と入れ替わって、基礎調味料と同等に使われているのだ。そのせいか、それらを使って料理する時には、ほとんどの主婦が「顆粒だし」や「だしの素」をさらに添加している。』
 
「だし」を重ねると、「味が決まる」「旨味やコクが出る」「味がはっきりする」「味に深みが出る」のだそうです。だから、『もちろん味噌も例外ではない。「だし入り味噌を使い、最後に風味を出すために顆粒だしを添加する」主婦がとても増えた。』
 
「つゆの素」や「だし醤油」や「だし入り味噌」に入っているのは日本では旨み調味料、グローバルにはMSG(グルタミン酸ナトリウム)とよばれている化学調味料です。化学調味料の入ったA社の「基礎調味料」にA社の別の、あるいはB社の「化学調味料」を追加して、味を深くするらしい。日本の食品会社のマーケティング力というのはあらためてすごい。
 
そんなものを食べ続けていたら、国民の平均寿命はそのうち下降カーブを描きそうですが、しかし、それを新薬とiPSのような最新の部品交換医療技術で食い止めるので、おそらく平均寿命は高止まりするのでしょう。そうなるとマクロな医療費は下がるのでしょうか、上がるのでしょうか。
 
家族がいっしょに集まって一汁三菜を食べるということがなくなり、主食重ね(たとえば、おにぎりとラーメン)を含めそれぞれが好きなものを都合のいい時間に食べるという家族の「自由」に対応するための主婦の知恵の成果が「残念和食」であり、その「ワケ」です。この本にはそのあたりの事情がきれいに整理されています。
 

人気ブログランキングへ

|

« 文間文法(ぶんかんぶんぽう)という見慣れない用語 | トップページ | 香りの害、だそうです。 »

塩・味噌・醤油・酢」カテゴリの記事

米と麦」カテゴリの記事

経営とマーケティング」カテゴリの記事

食べもの」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1317632/72262445

この記事へのトラックバック一覧です: 我が家の食卓は、「絶滅危惧種」らしい:

« 文間文法(ぶんかんぶんぽう)という見慣れない用語 | トップページ | 香りの害、だそうです。 »