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2017年12月22日 (金)

かつての遣唐使船と、最近の北朝鮮からの木造船

「空海の風景」(司馬遼太郎著)を、久しぶりに読み返してみました。そのなかに遣唐使船の構造や航海方法に関する記述があります。この本は、史実をしっかりと踏まえながら著者の思いや文学的なイマジネーションを加えて「歴史的な風景」としての空海を著した書物なので、たとえば遣唐使船に関していえば、日本から中国(唐)への外洋航行という点でそれがどれほど危ない船だったかが、小説風の色合いを含んだ写実的な現実としてよくわかります。
 
「空海の風景」や、遣唐使船に関するその他の情報を整理すると、遣唐使船とは以下のようなけっこうヤバイ船だったようです。使者代表に選ばれたものの、年齢や健康を理由に代表を辞退するベテラン官僚がいたのも肯けます。勉学の意思に燃えているわけではないので、無理に死にに行く必要はない。
 
・大きさは長さが30mで幅は7~9m、排水量約300トン
 
・帆柱は2本。帆は重くバランスが悪い。その上、順風にしか使えない。必要な時は、人力エンジンであるところの艪(ろ)で漕いだ。
 
・船底部が竜骨をもたない平底箱型構造。底の平たいタライのような船なので、波切りが悪く不安定。竜骨が無いので壊れやすい(竜骨とは船底部の基本骨格のこと)。
 
・帆は順風しか使えないのにもかかわらず、順風の秋を待たず、わざわざ気象条件の悪い6月から7月にかけて日本を出港。
 
・鉄釘はほとんど用いず、平板をつぎあわせて造ってあり、強風や波浪に弱い。耐水能力はきわめて低い。船材のつなぎ目には水草を押し込んで水漏れをふせいだ。
 
それがどうヤバイことなのかを、直感的に教えてくれるのが、近頃の北朝鮮からの木造漂流船です。現役の漁船なので駆動力として当然エンジンという内燃機関を積んでいますが、遣唐使船に近い構造を持った船(漁船)も多い。だから遭難する。漂流し、波に転覆させられる。内燃機関が停止すると救いようがない。
 
1年前の例。場所は舞鶴(京都)。
 
『京都府舞鶴市小橋(おばせ)の海岸に11月末、1隻の木造船が漂着した。舞鶴海上保安部(同市)が船体などを調べたところ、9人分の人骨が確認された。北朝鮮の紙幣や漁具なども見つかり、舞鶴海保は北朝鮮の漁船の可能性が高いとみる。・・・「現在の日本ではみられない。原始的な構造」。舞鶴港西港地区第3埠頭(ふとう)で陸揚げした船体を調べた舞鶴海保の職員は、そうつぶやいた。
 
漂着した木造船は長さ約12メートル、幅約3メートル。船底が平らという朝鮮半島の船の特徴が認められた。・・(略)・・驚くべきは、その構造だった。壊れた舷側の船板の間には浮力を得るためか、発泡スチロールのようなものが挟み込まれていた。船板同士はきちんと接合されず、すき間は縄やビニールを詰め込んでタールを塗り、浸水を防いでいるありさまだ。』(産経WEST 2016/12/13)
 
1ヶ月前の例。場所は松前(北海道)。
 
『(2017年11月)29日午前9時半ごろ、北海道松前町の南西約10キロの沖合で、木造船が漂流しているのを第1管区海上保安本部(小樽市)の航空機が発見した。北朝鮮から来たとみて調べている。』(JIJI.COM 2017/11/29)
 
こういう、12~13メートルのそれなりの造りの船でも外洋では(といっても日本海ですが)漂流、転覆してしまいます。いわんや、東シナ海を渡っていく平底箱型構造の当時の遣唐使船においておや。
 
D_2017
北海道松前町沖を漂流する北朝鮮から来たとみられる木造船(第1管区海上保安本部提供、2017年11月29日)
 

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