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2019年3月26日 (火)

誤文訂正問題

中学や高校の「社会」のテストで以下のような問題が出題されたとします。

これは誤文訂正問題です。以下の記事における大臣の発言には誤り、あるいは説明に不十分なところがあるので国民には彼の発言意図が分かりにくくなっています。国民に事実を正しく伝えるという観点から、大臣発言をわかりやすく補足ないし変更してみてください。

<岩屋毅防衛相は25日、米軍普天間飛行場の移設先、沖縄県名護市辺野古沿岸部の新たな区域で土砂投入を始めたことに関し「抑止力維持と基地負担軽減の両方を満たす唯一の選択肢だ。作業を進めたい」と防衛省内で記者団に述べた。(共同通信 2019年3月25日)>

(やや冗漫な)解答例。

政府にとって「米軍普天間飛行場の移設先、沖縄県名護市辺野古沿岸部の新たな区域で土砂投入を始めたこと」が「唯一の選択肢」というのは現時点では正直な発言だと思います。しかしその理由として「抑止力維持と基地負担軽減」を挙げていますがそれは表面を取り繕った理由で、国民には背景や実態がわかりやすく説明されているとはとても思えない。わかりやすく説明すると、それが国民の賛同をまったく得られないにしても、以下のようになります。

(1959年の「砂川裁判」判決以降、最高裁の正式なお墨付きのもとに)「日米安保条約と日米地位協定」の取り決め内容が、日本国憲法や国内法が規定する内容の上位に位置することになりました。その階層構造はそのまま継続しているので、日本政府は「普天間・辺野古問題」に関しては、「日米地位協定」にもとづいた米国の意思をそのまま受け入れるしかありません。従って米国の意思とは相容れないところの、沖縄の県民投票で示された民意が政府の政策に反映されることはありません。そういう意味で辺野古への土砂投入再開は「(政府としては)唯一の選択肢だ」という防衛大臣発言になります。

□□□

日米間の重要な条約のひとつが日米安保条約です。日米安保条約は、日米のどちらかが延長したくないと云えば、1年後に解消できるような取り決めになっています。以下は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」、いわゆる日米安保条約の第十条の引用です(外務省ウェブサイトより)。

『第十条
 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。
 もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。』

この条約の締結日が1960年1月19日なので、十年間効力を存続した後とは1970年1月19日以降ということです。

ところで当該条約の第六条は以下のようになっており、これが上記の防衛相発言の背景となっています。

『第六条
 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。』

別個の協定とは、日米安保条約の補足協定(実質内容協定)としての日米地位協定のことで、その前身が日米行政協定です。普天間・辺野古問題やオスプレイの配備や飛行訓練は、この協定内容の実施・遂行にかかわる最近の事例です。

1960年に締結された日米安保条約は、「理屈の上では」当事者のどちらかがこの条約が嫌になれば、「ご破算に願いましては」と通告することができる仕組みをとっています。言葉を換えれば、米国との軍事的な協力関係が今後も必要な場合でも、現行の条約をその補足協定である日米地位協定を含めて破棄し、日本にとって好ましい内容の「新・日米安保条約」と「新・日米地位協定」を結びなおすことが「理屈の上では」できるということです。

戦後、日米安保条約や日米地位協定の改定や米国債の売却に関心を持ち、関心を持っていることをまわりに発言し、そしてそれらの実行に取り掛かろうとした人たちのうち、その時に政治の表舞台で顕職にあった政治家は、たいていの場合、なぜか、短期間のうちに不幸な事件に遭遇するか、その後に不運な境涯を経験することになりました。小沢一郎氏がそうでしたし、「最低でも県外、できれば国外」の鳩山由紀夫元総理もそうでした。その前は、故・田中角栄元総理や故・橋本龍太郎元総理がそうでした。所属政党は無関係です。それから、元財務大臣の故・中川昭一氏もそうでした。彼は、実質的には売却に相当するところの10兆円規模の米国債の活用を2009年2月に実行に移そうとしていました。

「理屈の上では」できる、というのはそういう意味です。

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