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2019年4月18日 (木)

「令和」は「和せ令(し)む」?

先日の記事「名前の付け方にもそれぞれに風情がある」の関連記事です。

「令和」という元号のもともとが、万葉集の向こう側の、後漢時代の「張衡(ちょうこう)」の「歸田賦」という韻文(「是に於いて仲春の令月、時は和し気は清む、原隰(げんしゅう)鬱茂し、百草滋栄す」〈いい月が出ている春のなかば、和やかな時節、澄んだ空気、鬱蒼と茂る丘と湿地、緑いっぱいの草と咲き誇る花)にあるということは理解したとします。

しかし、突然、何の前置き説明もなしに「令和」と並べた漢字二文字を見せられて、さて、これはどういう意味だと思うと問われたら答えのしようがありません。少し考えて思い付くのは次のどちらかです。「命令」「法令」の「令」に関連するなにか、あるいは「巧言令色」や「令夫人」の「令」に関係するなにか。

漢文の参考書などには、「使役」を表す文字として「使」「令」「教」「遣」などが、たいていは短い用例といっしょに並んでいます。使役形の基本的な訓読は「・・・をして・・・せしむ(ならしむ)」です。「漢文読解辞典」というタイトルの、紙が経年変化でいささか変色している本から「使役」の「令」に関する用例をひとつ(訓読形式で)引用してみます。

「遂に天下の父母の心をして、男を生むを重んぜず、女を生むを重んぜ令(し)む」〈白居易「長恨歌」〉

ぼくにとって「令和」の最初の印象は、「和せ令(し)む」でした。たとえば「民をして和せ令む」。「命令」「法令」の「令」に関連する解釈です。

なぜか。

安倍政権下では日本国憲法を改正しようとする動きが活発で、たとえば「日本国憲法改正草案(現行憲法対照)自由民主党」などというものも平成24年(2012年)に発表されています。最近は、それがうまく動かないので、解釈改憲(政府や議会などが、憲法改正の手続きを経ることなく、憲法の条項に対する解釈を変更することによって、憲法の意味や内容を変えること)で集団的自衛権の行使を推し進めています。

この自民党改正草案(引用部分は【・・・】)はなかなか興味深いものです。政府の勝手な行動(ぼくたちが1945年以前の昭和時代に経験したところの軍部の影響力が強い政府による侵略戦争、はその一例)を規制するものとしてあるのが現代の(ジョン・ロック以降の)憲法ですが、つまり、国民のために憲法を尊重し守るのはまず政府ですが、それが、以下のように、政府ではなく国民という具合に基本的な考え方が逆転しています。

【(憲法尊重擁護義務)】
【第百二条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。】
【2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。】

現行憲法(引用部分は『・・・』)では、その部分は次のようになっています。

『第十章 最高法規』『第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。』

そして、改正案の考え方と整合性が取れるように、『現行憲法前文』の『そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。』という現行憲法の基底となる箇所が、【自民党改正草案】の【前文】からはきれいに剥(は)ぎとられています。

その代わりに、【改正草案】では、その箇所に、【日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。】という一文が置かれています。これを漢字二文字に凝縮すると「令和」になります。

現総理大臣は新元号発表の日にテレビ局をハシゴして「令和」に至った背景説明をされたようですが、その説明内容の骨子は【日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。】を、(たとえて言えば、万葉風に)柔らかく言い換えたものとぼくには聞こえました。【改正草案】の底にある考え方のプロモーション活動です。

ぼくにとって「令和」の最初の印象が「和せ令(し)む」、「民をして和せ令む」だったのはそういう背景からです。(政府ではなく)「国民をして(改正憲法を)守ら令(し)む」。

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