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2019年6月18日 (火)

サウジアラビアのスンニー派とイランのシーア派に関して

以前に書いたものの再掲です(ただし一部を変更、一部を追加)。

サウジアラビアとイランの関係がよくありませんが、サウジアラビアとイランの不仲は1000年以上前からです。1000年以上前から多くの血が流され続けました。そして、現在はそこに、例によって、ある非イスラム国家による政治と経済の無茶な介入が絡んで、不仲の状況はさらにややこしいものになっています。

配偶者からサウジアラビア(スンニー派)とイラン(シーア派)の違いについて聞かれたので、以下のように答えました。「ともにイスラム教だけれど、サウジは商売・ビジネスの国、イランは哲学と文学の国」。その回答の後ろにはある参考書の存在があって、その参考書とは井筒俊彦著『イスラーム文化』です。

この記事は、配偶者とぼく自身のための簡単な備忘録として書いています。『イスラーム文化』の読書記憶をもとに自由にまとめているので記憶違いや勝手なはみだしがあるかもしれませんが、個人的な備忘録なのでよしとします。

イスラム教は、アラビア半島のメッカで、商人であるムハンマド(マホメット)を預言者として生まれました。預言者とは神の言葉を預かり民に伝達する者という意味です。その意味では神託を伺い口寄(くちよせ)をする者であるところの巫女(みこ)やシャーマンも預言者です。

ムハンマドによれば、イスラム教は、ユダヤ教とキリスト教と対立するものではなく、その二つを包み込むという意味で、ユダヤ教とキリスト教のスーパーセットと云うことになっています(逆に云えば、ユダヤ教とキリスト教はイスラム教のサブセットということになる)。だから、イスラム側からすれば、対立などあり得ない。サブセットと位置付けられた方は、その位置づけに憤慨しているかもしれませんが。

イスラム教の聖典はコーランです。コーランは宗教の聖典であると同時に法の聖典でもあるという二重性(二重の性格)を持っています。法教一致、政教一致の聖典です。

宗教も法も、もともとは一体化していたので、同じ重みをもっていましたが、時代の流れとともに、そして人々の思惟の方向の変化や価値観の変化とともに、どちらかに比重が偏ってきます。つまり、コーランに書かれた文字の意味するところを(法の条文を解釈するように)そのままに受け取る人たちと、書かれた文字の向こう側の見えない奥に深い意味を読み取ろうとする人たちが現れます。前者は法の人であり、後者は霊の人です。イスラム教は宗教なので、かりに顕教と密教という用語を使えば、前者は顕教の世界、後者は密教の世界です。

サウジアラビアのイスラム教宗派はスンニー派(一部はシーア派)で、イラン(ペルシャ)のそれはシーア派ですが、両者を先ほどの価値の重みのかけ方という座標軸に沿って配置してみると、スンニー派は「法の宗派・政治的な宗派・現実主義的な宗派・顕教の宗派」、一方、シーア派は「霊の宗派・哲学的な宗派・神秘的な宗派・密教の宗派」ということになります。

イランといえばペルシャであり、ペルシャといえば、ペルシャ絨緞、千夜一夜物語、光と闇のゾロアスター教を思い浮かべます。神秘的で幻想的です。形而上学者・神秘哲学者であるところの井筒俊彦は、1975年(61歳)から1979年(65歳)までイラン王立研究所の教授でした。イランとはそういう国です。一方、サウジアラビアという土地は、形而上学や神秘哲学はあまり似合わない。

ただしそういう区分となじまない個人がいるのは当然のことで、以前、短期間ですがいっしょに仕事をしたことのあるイラン出身のITエンジニアは、アラブ以上にアラブ的な現実主義者でした。もっとも、それは昼間の仕事場だけで、夜は哲学的瞑想にふけっていたのかもしれません。

そういう世界観の対立がメッカ期とメディナ期以来、ずっと続いています。世界観の違う二つがぶつかった時には、現実主義的な政治権力に価値を置く宗派が、そうでない宗派を、たいていは政治的に圧迫します。そういう場面では、聖職者の犠牲も多い。現在の対立の底にも、そういう歴史的な思惟の違いと価値の体系の違いが潜んでいます。

世界のイスラム人口のうち圧倒的に多いのはスンニー派です。シーア派は少ない(統計資料によれば、イスラム人口の10%から13%)。北海道でも、イスラム教徒向けの食材の調達や礼拝設備を充実してインドネシアからの観光客誘致に努めていますが、インドネシアのイスラムはスンニー派です。

 

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