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2019年9月26日 (木)

ゲノム編集食品と遺伝子組み換え食品

遺伝子組み換え作物は、英語ではGMO、Genetically Modified Organismです(順番はGMOが先で、それが遺伝子組み換え作物という訳語になりました)。遺伝子組み換え食品は、英語ではGenetically Modified Foods、あるいはGenetically Engineered Foodsです
 
一方、ゲノム編集はGenome EditingないしはGenome Engineeringで、だからゲノム編集食品はGenome Edited FoodsないしはGenome Engineered Foods。
 
DNA(デオキシリボ核酸、その生物がもつ遺伝情報を規定する化学物質)の総体をゲノム(genome)といいます。ゲノム(genome)とは、遺伝子(gene)と染色体(chromosome)から合成された言葉で、「遺伝情報の全体・総体」を意味します。先ほど本棚をのぞいたら「ゲノムを読む」(松原謙一・中村桂子著、1996年)というタイトルの古い本がまだ棚の奥のほうにありました。いささか懐かしい。
 
遺伝子組み換えといってもゲノム編集といっても、要は両者とも、特定の目的のために遺伝子や遺伝情報を操作することです。特定の目的とは、一般的には生物の品種の改良とされていますが、その中には結果としての品種の改悪も含まれるので、遺伝子組み換えやゲノム編集の目的は品種の変更や修正としておいたほうがよさそうです。
 
先日、消費者庁は、ゲノム編集で品種改良した食品に関して、特定の遺伝子を切断しただけの食品についてはゲノム編集表示を義務付けないと決めたと発表しました(「ゲノム編集技術応用食品の表示について」 消費者庁食品表示企画課 2019年9月)。
 
その理由は、ゲノム編集食品は、当該食品(食材)にヒトが欲する機能や特性を持たせるために当該食品(食材)の特定の遺伝子を切断して作られますが、そのときに外部から遺伝子を挿入するタイプと挿入しないタイプがあり、現在開発が進んでいる食品の大半は挿入しないタイプで、そういうタイプだと、ゲノム編集食品はそれを作った本人しかそれがゲノム編集されたものだとはわからない(外部の第三者は当該食品の特徴がゲノム編集の結果でであるか従来の育種技術で起きたのかどうか科学的に判別できない)。それが表示義務がない理由だそうです。
 
ところでゲノムは遺伝情報の総体を意味する用語とはいえ、ゲノムの全部が遺伝子であるわけではなくて、ゲノムの中で「遺伝情報を持ったDNA」(つまり遺伝子)は、量としては数%~10%くらい、残り(残りという言い方は、残りに属するDNAにとっては失礼な話ではありますが)であるところの90%は遺伝情報とは直接の関係のない、存在理由がいまだによくわからないDNAです(だから、ジャンクDNAなどと呼ぶ礼を失した研究者もいます)。だから、いまのところ、ゲノムの90%は「無用者」ということになっています。
 
しかし、科学というのが常にそうであるように、ある時点で見えるものは見えるにしても、見えないものは見えない、見えないものの実態はよくわからない、だからとりあえずその「無用者」は「役立たず」としてその存在を許されていますが、そういう「役立たず」を生物はなぜずっと抱え込んでいるのか。かりに「無用者」の一部を毀損した場合その影響が長期でどうなるかは誰もわからない。況や、特定機能を担っている遺伝子をゲノム編集で切断して特定機能を殺した(抑止した)結果の長期の影響に於いておや。
 
身近な例で言うと、以前は(「腑に落ちない」とか「腹に落ちる」という慣用句の長い間の存在にもかかわらず)見向きもされなかった、あるいは頭や心臓と比べると非常に軽視されてきた「腸」や「腸内フローラ」のひそかで重大な役割が最近になって急に見直され始めたというような事例もあります。(関連記事は「食べものや体における『無用者の系譜』」)。
 
牧草と配合飼料とゲノム編集」で書いたように、ゲノム編集食材は日本が世界を一歩リードしています。
 
養殖の鯛やハマチは魚売り場ですでにおなじみですが、ゲノム編集技術を活用して開発した筋肉もりもりの鯛(肉厚マダイ)の生育が進行中だそうです。ゲノム編集した鯖の養殖も実験中です。魚が研究対象になれば、当然、トマトのような人気野菜やイネも対象になります。
 
しかし、ゲノム編集食品と名付けても遺伝子組み換え食品と言っても、遺伝子を操作した結果生まれた食材・食べものという基本的な事実に関して両者に差はありません。農産物でも(たとえばトウモロコシや大豆やジャガイモ)海産物(たとえばマグロや鯛やサバ)や畜産物(たとえば牛や鶏)でも、作りだす側の適用技術の違いから別の表現を付けているだけで遺伝子を操作して新品種を作ったという意味では同じです。「ゲノム編集は、別の種の遺伝子を導入するのではなく既存のDNAに改変を加えるもので、遺伝子組み換え作物(GMO)に使われる技術とは異なる」と主張されても「ああ、そうですか」と聞き流すだけです。
 
日本は、ECと同様に、遺伝子組み換え食品は表示義務があることになっていて、それが遺伝子組み換え少く品の増殖の防波堤になっているような気になりますが、担当省庁も熱心でないし、実質的には遺伝子組み換え農産物の輸入や流通は業者(作る人や運ぶ人)の「お気に召すまま」状態です。最近も「また遺伝子組み換えトウモロコシの輸入ですか」のような出来事がありました。
 
味噌や豆腐だとそこで使われている原材料の大豆が国産の「遺伝子組み換えでない」ものを選択的に購入できます。しかしゲノム編集食品では作った本人や企業はわかっているにもかかわらず自己申告が免れるとすると、消費者は、たとえば「どこどこ産の妙に筋肉モリモリの鯛は買わない」といった消費者の共有知による食材選択をするしかなさそうです。


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