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2019年9月 6日 (金)

「秋刀魚」という表記

「秋刀魚」という漢字の組み合わせで「サンマ」という秋の魚を表現するのは、「鯛(たい)」や「鰆(さわら)」という魚偏の表記法とは違って字の組み合わせに動きがあって、同時に絵画的です。それ以外の説得力のある漢字の組み合わせはちょっと思いつかない。
 
「秋刀魚」が使われ始めたのは、佐藤春夫の「秋刀魚の歌」が発表されてからだそうです。それ以来、人口に膾炙(かいしゃ)した。「秋刀魚の歌」は『我が一九二二年』(ここでは青空文庫を参照)という大正12年(1923年)に出版された本に入っています。最初の数行を以下に引用します。
 
秋刀魚の歌
 
あはれ
秋風よ
情(こころ)あらば伝へてよ
――男ありて
今日の夕餉(ゆふげ)に ひとり
さんまを食(くら)ひて
思ひにふける と。
 
「タチウオ」という、小骨の多い白身の魚は「太刀魚」ないし「刀魚」と書きます。姿かたちが「太刀(タチ)」に似ているからです。銀色の身体で怖い顔と歯並びをしていますが、とても美味しい。
 
サンマも姿かたちが「太刀」です。「タチウオ」が長刀なら「サンマ」は短刀で、確かに「秋」に獲れる「刀」の形をした「魚」です。
 
現在、魚売り場に出回っているサンマは迫力のない短刀ですが、そのうち、「口先が黄色くて」「目の周りが透明に澄んでいて」「背がつやつやと青黒くて」「腹が銀白色に輝いて」そして「全身に張りのある脂ののったずんぐり体形」のサンマが出てきたら、もはやただの「短刀」ではなく「鎧通し」(武士が戦場で組打ちに使った短刀)です。そのうち根室で獲れた鎧通しが売り場に並ぶでしょう。
 


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