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2019年10月15日 (火)

土地の記憶、名前の記憶

今回の台風19号で首都圏も冠水被害を受けましたが、その一つが超高層マンションが近年密集してきた首都圏のある地域です。そこは都心に比較的近く通勤や通学のための公共交通機関の利便性もとても高いところです。
 
そのあたり一帯は以前は工場専用地帯でしたが(今でも一部は工場地域)、そのずっと前は田園だったようです。「旧河道(きゅうかどう)」だったかもしれないと思い調べてみましたが、100年と少し前の地図と現在の地図を見くらべても、川の流れはいくつかの蛇行部分を除きそれほど変化していないので、そのあたりが以前は川だったのがそのうち旧河道になったのかどうかはよくわからない。

旧河道とは、昔、河川だった場所で、河川の流路が変わって水が流れなくなってその結果できたものです(「山から海へ 川がつくる地形」本編資料編 国土地理院)。だから豪雨の場合などは自然が昔の記憶を呼び戻すので、水が流れ込んで冠水被害などを受けやすい。下は、上記資料からの引用で「都市部の旧河道」についての説明です。ちなみに、札幌市の東北部にある大きな美術公園(モエレ沼公園)は旧河道の跡地をうまく利用したものです。

Photo_20191014125301
 
北海道の札幌(さっぽろ)は「アイヌ語で『乾いた大きな川』を意味する『サッ・ポロ・ペツ』」に由来します。稚内・幌加内の「内」や登別・当別・江別「別」は、「ナイ」や「ペツ」という「川」を意味するアイヌ語を(漢字の当て字を通して)受け継いでいます。温泉地である登別の「登」は「ヌプル」の当て字、「ヌプル」の意味は「濁る」、つまり、登別は温泉地らしく「濁っている川」という意味になります。
 
北海道ではありがたいことに漢字の当て字を通してアイヌの土地の記憶が受け継がれており、そういう意味では東京の中心部も同じことです。溜池、赤坂、青山、四谷、渋谷、神泉、荻窪、池袋・・・。池、谷、山、坂、泉、窪、袋。池も窪も袋も「水がたまりやすい場所」という意味です。土地の形状と水の記憶です。
 
昔のいやな記憶を消すために電鉄会社やディベロッパーが自治体に働きかけて駅名や地域の地名をそれらしいものに変更するというのも需給の流れで致し方ないのかもしれませんが、地名は、あまり、いじりたくないものです。
 
氾濫しやすいことで有名な川に利根川支流の「鬼怒川」があります。「鬼」が「怒る」「川」なので、氾濫の記憶に満ちた命名です。北海道にも「深川市」と「沼田町」を流れる「雨竜川」という名前の川があります。氾濫の記憶が「雨」と「竜」に引き継がれています。
 
川が氾濫したり、山を切り崩して造成された高台の住宅地に激しく雨が降ると、「思わぬ場所」や「本来の場所でないところ」にあらたに川が発生することがあります。実際は「本来の場所」に久しぶりにまた川ができたということで、住民の数十年の記憶にある本来よりも、数百年から数千年の自然の推移においての本来のほうが本来度が強かったというわけです。
 
現在は「・・台」や「・・丘」と呼ばれている住宅地の、たとえば、50年前の地名、100年前の地名は何だったのか。古い土地の名前は、その土地の特性をたいていは凝縮しています。100年くらい前までの地形と現在を簡便に比較するには「今昔マップ on the web」が便利です。

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