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2020年2月21日 (金)

困った時の「大本営発表」

大本営(だいほんえい)とは、現代史辞典風に言えば、「戦時または事変の際に設置された、天皇直属の最高統帥機関」のことです。明治26年に制定され、第二次世界大戦後廃止されました。

大本営発表(だいほんえいはっぴょう)と言った場合には、太平洋戦争中に、大本営の陸軍部及び海軍部が行った、戦況などに関する公式発表を指します。公式発表だからといって内容の正確さが保証されているわけではありません。大本営に都合のいいように、言葉を換えれば国民の誘導に都合がいいように、攻撃面をより華美に、損害を実際よりも相当に矮小化して公表しました。そういう意味の大本営発表で最初に有名になったのが、おそらく以下の1942年6月の「ミッドウェー海戦」に関する発表です。

__19426

現在の新型コロナウィルスに関する(とくに、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に関する)厚労省やその関連機関の発表も、大本営発表に近い内容のものがあります。

国立感染症研究所は「現場からの概況:ダイアモンドプリンセス号におけるCOVID-19症例」を2月19日に発表しました。そのなかで、いささか断定的に次のような「暫定的な結論」なるものを提示しています。

「発症日の判明している確定例の検討に基づいて評価すると、2月5日にクルーズ船で検疫が開始される前にCOVID-19の実質的な伝播が起こっていたことが分かる(下記船内の常設診療所に発熱で受診した患者数参照)。確定患者数が減少傾向にあることは、検疫による介入が乗客間の伝播を減らすのに有効であったことを示唆している。」

「一部の症例は、客室内での二次感染例であった可能性はあるが、検疫が始まる前に感染した可能性も否定できず、実際にいつ感染したか、判断は難しい。」

確定患者数が減少傾向にあるグラフとは以下の棒グラフです。

《2020年2月6日から17日におけるクルーズ船乗員乗客の発症日別COVID-19確定症例報告数(n = 151)》

Covid19-20200219

これと矛盾するのが、当該クルーズ船の陽性者数(赤い部分)の日別の推移で、船内での二次感染増殖を明確に示唆しているようにぼくには思われます(この棒グラフは、三重大学名誉教授・奥村晴彦 (Haruhiko Okumura) 様のブログから引用させていただきました)。

Covid19-20200219_20200220192901

また、以下のニュースは、その内容に大本営発表風の脚色がないとして、その感染が明らかに追加的な船内の二次感染なので、上述の大本営発表風の強引さ(「2月5日にクルーズ船で検疫が開始される前にCOVID-19の実質的な伝播が起こっていたことが分かる」)と合わせて厚労省発表の信頼性を相当程度に損なっているようです。

「厚生労働省は20日、新型コロナウイルスの集団感染が起きた大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の船内で事務業務をしていた、厚労省の40代男性職員と内閣官房の30代男性職員の計2人の感染が確認されたと発表した。2人は同じチームだったという。
 厚労省職員は12日から船内の業務にあたっていたという。18日夜から発熱を訴え、翌19日に熱は下がったものの、鼻水の症状はあった。その後、検査で陽性とわかったため、東京都内の医療機関に搬送された。
 内閣官房職員は11日から船内で業務。18日にせきなどの不調を感じ、翌19日はホテルで休んだという。その後、検査で陽性だとわかり、20日午前に都内の医療機関に搬送された。」

「大本営発表」についてその背景の政治構造や時代風景も含めて知りたい場合は、「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」という本が参考になります。


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