植物と花

2019年8月 7日 (水)

春は梅、秋はさくら葉

寒い季節の訪れはできるだけ遅い方がいいのですが、先週ほどではないにしても今週の札幌もそれなりに暑いので、以前ひんやりとした季節に撮影した「紅葉・黄葉」の写真を見るともなく見ていたら、桜の紅葉を撮ったのがそれなりにありました。

あまり注目されませんが、秋には桜も紅葉します。楓(かえで)のような鮮やかな紅に染まるのではなくて、葉の色を地味な、渋い抑えた赤に変えます。短期間とはいえ春に花が他よりも目立ちすぎることを恥じて、秋にはつつましくしているのかもしれません。

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                                         紅葉した桜

「もみじ」とは、秋になって赤や黄色に変色した草木の葉のことを指します。漢字だと「紅葉」や「黄葉」と表記されます。「桜紅葉(さくらもみじ)」とは赤くなった桜の葉のことです。「もみじ」も「さくらもみじ」も秋の季語です。

「楓(かえで)」は紅葉の代表格なので「楓」の別称として「もみじ」を使うことも多い。だから、会話の中でそのときの「もみじ」がどちらを指しているのか紛らわしいことも少なくありません。「桜」の葉が赤くなるのは「楓」よりも早く、あまり来てほしくない寒い季節が近づいていることを「楓」よりも早めに教えてくれます。

下は上とは別の年の10月下旬、同日同時刻の札幌市内のある公園の「桜」と「楓」です。

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念のために季語の歳時記を当ってみると、【桜紅葉 さくらもみじ/さくらもみぢ 仲秋】〈桜の葉が色づくこと。桜の木は日本国中どこにでもあるが、あざやかな朱色にならないのであまり注目されることがない。比較的早く色づく〉とそっけない記述がありました。

「春は桜木、秋は桜葉」とすると、いくら桜紅葉が控えめであっても桜の自信が鼻につくので、「春は梅、秋はさくら葉」というのがいいかもしれません。

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2019年7月12日 (金)

山椒も紫蘇(シソ)科風の摘芯?

青紫蘇(大葉)やバジルやアップルミントのようなシソ科植物は、このままだと茎が伸び過ぎるあたりの茎を葉をつけたまま切り取ってやると(この作業を「摘芯」と云います、切り取った葉は当然食べます)、切り取られた茎(「芯」)の根元の辺りから新しい芽がペアで伸び始め、そのペアのおのおのからまた芽がペアで発生するので、葉は倍々ゲームで増えていきます。

と言うと難しそうですが、実作業はもっと簡単です。つまり、紫蘇(しそ)科の野菜は食べごろの大きさになった葉を収穫するときに、摘み取る葉の下に、左右に一対の小さい葉(脇芽)を残してその少し上あたりで茎を注意深く切り取ると(たいていは小さい脇芽が出ているのでその少し上で)、残った左右の小さい葉の枝の部分からまた新しい新芽がそれぞれに出てくるので、倍々ゲームで葉が増えます。写真をご覧いただくほうが解り易い。

最初の写真のような具合に摘芯すると、それが、たとえば、二枚目の写真のような状態になります。そういうことを知らないと、背が高くなるだけで野菜にボリュームが出ません。背を伸ばさないで横というか、前後左右にふくらませていく。

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山椒は、ミカン科サンショウ属の落葉低木です。シソ科植物ではありません。しかし、妙に背が高くなってきたので、上に伸び過ぎた枝を複数本、適当に切り詰めてみました。すると切り詰めたあたりから、まるでバジルや紫蘇を摘芯したような具合に、若い芽が出てきました(下の写真)。これなら山椒にもボリューム感が出ます。山椒にも摘芯、ということのようです。

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2019年7月 9日 (火)

一本の立ち葵が美しい

遅い午後や夕方の立ち葵が美しい。タネがそういう風に落ちて増えるのか、いくぶんかは人の手が入った結果なのか、最初の写真のように仲間と一緒が多くて、それが道路際に順番に同じ色や同じ系統の色の濃淡を違えて連なっているので見続けているとやや食傷気味になります。

葵の原産地は小アジア(トルコ)だそうです。生命力の強い背の高い夏の花です。万葉集にも登場します。ずいぶん昔に中国経由で日本に入ってきたらしい。葵は夏(仲夏)の季語です。

「梨 棗 黍に粟つぎ 延ふ葛の 後も逢はむと 葵花咲く」(万葉集16巻3834番 よみ人しらず)
「なしなつめ きみにあはつぎ はふくずの のちもあはむと あふひはなさく」

次にお会いする日には葵の花が咲いていることでしょう、ならわかりやすいのですが、掛詞の仕掛けが多すぎる歌なので意味がよくわかりません。

ひとりでぽつんと(凛と、というと大げさですが、まあそういう風情を漂わせて)咲いているのもあります。そういう立ち葵に出会うと(二番目の写真)、きれいな女性のポートレートを撮影する気分になります。

日本の夏の樹の花は「百日紅(さるすべり)」です。札幌では5月のライラック、6月のニセアカシアと連続して樹の花を楽しめますが、百日紅の樹は札幌ではまず見かけません。樹と草とでは雰囲気はずいぶん違います。しかし、夏の札幌では立ち葵が百日紅のとりあえずの代わりということにしておきます。

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2019年7月 3日 (水)

道端のラベンダーと立ち葵の生命力

遊歩道に並んでいる植栽コーナーでのひとつでラベンダーがいっぱい咲いていました。そこでは、最初にどなたかが思い付きで植え付けたのか、毎年この時期に紫の花を咲かせます。人の手がとくには入っていない場所(のはず)ですが、ラベンダーは北海道育ちらしく6月の下旬に咲くことを忘れません。

富良野のラベンダー畑はプロの仕事なのでじつに見事です。しかし、札幌の街中の道端でも紫色のそれなりの拡がりをそれなりに楽しめます。

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 富良野の農園

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 札幌市内の道端

それからこれは札幌に限りませんが、立ち葵もピンクや白や赤や黒の花を開き始めました。じつに生命力の強い植物で、毎年、この時期が来ると舗装道路わきの土などなさそうな場所や植栽コーナーの隅や端から、それぞれは数本ずつですが、それらの連なりを合わせるとびっくりするくらいの本数で出現していることに気がつきます。

Photo_20190629123901  濃いピンクと淡いピンクの立ち葵

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2019年6月27日 (木)

少し不気味なスズラン

リラ(ライラック)は札幌市の樹ですが、では札幌市の花はというとこれがスズランです。漢字だと鈴蘭、漢字のほうがその形を思い浮かべやすい。そのあたりの植栽場や公園でよく見かけます。スズランを自治体の花としているところも日本では多いみたいで、必ずしも北海道や長野の自治体の独占というわけではありません。

下は、札幌市内のある公園で、とくに手入れもされずにそのあたりに葉が拡がって控えめに花を咲かせていたスズランです。撮影は5月末です。いい匂いがしました。

Photo_20190627150901

可憐で芳香を発するところのスズランは、実は、有毒植物です。有毒物質はスズラン全体に存在しますが、花や根にとくに多く含まれているそうです。ある種の植物はたとえばレクチンなどで動物から食べられないように自分を護っていますが、スズランの毒も昆虫や小動物からの自己防衛のためでしょうか。そのあたりはよくわからない。

「耐寒性が強い、日陰でも育つ、強い香りがある」という風にスズランの特徴を並べると、たしかに薄暗いところでも平気で咲いているので、スズランには申し訳ないのですが、ぼくはドクダミを連想してしまいます。ドクダミは「蕺草」と書き、「毒を矯(た)める・止める」草という意味です。毒を持つスズランと毒を止めるドクダミ、似たもの同士かもしれません。

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                 ドクダミ

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2019年6月26日 (水)

札幌と、『荒地』の書き出し部分の季節感

以下はT・S・エリオット『荒地』 (The Waste Land, 1922) の第一部「死人の埋葬」の書き出し部分です(吉田健一訳)。

「四月は残酷な月で、死んだ土地から
リラの花を咲かせ、記憶と欲望を
混ぜこぜにし、鈍った根を
春雨で生き返らせる。
冬は何もかも忘れさせる雪で
地面を覆ひ、干からびた根で少しばかりの生命を養い、
それで我々は温くしてゐることが出来た。
夏は俄か雨となってスタルンベルガエゼを渡って来て、
我々を驚かせた。我々は柱廊の所で立ち止り、
日光を浴びてホフガルテンに出て行き、
そこでコオヒイを飲んで一時間ばかり話をした。」

札幌に住んでいると引用した詩の季節感を、表面的には、よく理解できます。著者の土地(英国)の緯度は札幌よりも高く(従って夏の日は長く)、しかし暖流の関係で冬は札幌よりも暖かいのですが、英国と札幌は季節の雰囲気が似ているのかもしれません。

「四月は残酷な月」の「残酷」の意味が、「その月」がもはや冬でもないけれど、しかしまだまだ寒くてとても春とは言えない、春の暖かさを期待しているのに毎日のように裏切られてしまう、そんな中途半端な感じなので「残酷」だ、というのでしょうか。

「冬は何もかも忘れさせる雪で地面を覆ひ」は確かにその通りで、冬は地面がどこまでも雪と氷で覆われます。でもその「死んだ土地」に「春雨」(根雪を溶かせる雨)が降ると、「死んだ土地」から「リラ(ライラック)」が、冬の「記憶」と春への「欲望」を「混ぜこぜにして」5月半ばに薄紫色の花を咲かせ始めます。

そして、翌月にはニセアカシアの白い花が続き、短い夏が俄かに、ちょうど「俄か雨」が来るようにやってきます。

「死んだ土地から、リラの花を咲かせ、記憶と欲望を混ぜこぜにし、鈍った根を春雨で生き返らせる。」

こうした瞬間の連なりがゆっくりと、しかし気がつけば急に動いているのを実感できるのは札幌に生活することの楽しみのひとつです。

 

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2019年6月21日 (金)

ニセアカシアは札幌の6月の樹

札幌で5月に可憐な紫色の花を咲かせる樹は「ライラック」です(リラとも呼ばれる)。樹によって濃淡の違う紫の花が開きます。たまに白い花もある。街路樹、公園樹です。

_0517d-s  ライラック

いい香りがその周辺に漂う白い花を咲かせる札幌の6月の樹は「ニセアカシア」です。用途はライラックと同じで街路樹、公園樹ですが、ライラックが植えっぱなしだと相対的にヒョロヒョロしているのに対し、ニセアカシアは大きくなると樹の風格が出てきます。

Photo_15 ニセアカシア

ニセアカシアは英語ではPseudo-acacia。直訳すると「アカシアもどき」「疑似アカシア」。可哀そうな名前ですが、別にアカシア(Acacia)という属があるのでしかたない。ニセアカシアは北米原産のマメ科ハリエンジュ属の落葉高木。和名は「ハリエンジュ(針槐)」だそうです。

札幌のすべての通りにニセアカシアが並んでいるのではなく、ニセアカシア通り(高木になって長大な並木が見られるのも、植栽されて10年未満の成長中のものも)は限定されていますが、そばを歩くと穏やかではあるのですがやや強い香りが花から伝わってきます。

北海道に限らず東日本ではニセアカシアの花は「蜜源」のひとつです。ニセアカシアの花から良質なハチミツが採れます。いい香りには理由があります。

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2019年5月31日 (金)

白いレンゲ?

白いレンゲのような花が道端に咲いていました。白いレンゲ?

レンゲはピンクで田んぼにいっぱい咲くもの、のはずです。ぼくのレンゲの記憶はすべてその範囲に収まります。しかし、白いレンゲというのがあるとは聞いたことがある。かりに今、目の前にあるのがレンゲとして、レンゲがなぜ札幌の湿った場所でもない道端に咲いているのか。

咲いている場所は、タンポポなんかが黄色い花を咲かせていたあたりか、その近所です。よくよく見ると、この白いのはどうもシロツメクサ(つまりクローバー)であるようです。それなら、この時期の札幌の道端のよく見かける風景になります。

Not シロツメクサ

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2019年5月21日 (火)

外では白いライラック、室内で白いジャスミン、もう一つの春らしさ

満開に近づいているジャスミンにとっては外は風が強すぎたので、小さな一鉢を屋内に退避させたのですが、朝起きたら室内はジャスミンの香りでいっぱいでした。近所の花屋で購入したもので、それをプラスチックの鉢から素焼きに移し替えて、白い花と香りを楽しんでいます。桜と同じで花の命は長くありません。

_may2019 

札幌市のシンボルの木はライラックです。リラともいいます。5月の中旬から6月にかけては公園やそのあたりの道路際や遊歩道にライラックが咲いています。そのころに「さっぽろライラックまつり」も開催されます。

桜に花冷えがあるように、リラの季節にもリラ冷えの日があります。淡い紫や濃い紫の紫系の花が多いのですが、白にもそれなりの頻度で出合えます。

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夏至に向かって段々と長くなる昼間の心地よさを実感できる季節です。

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2019年5月16日 (木)

見上げる春、地面の春

冬と雪の長い札幌に住んでいると春に貪欲になります。歩いている途中でも春を捜すし、公園や植物園や大学のキャンパスに行ったときは上下左右の春と仲良くなります。

見上げると、ぼくが名前を知らない(しかし、ニレっぽい)広葉樹の新緑とライラックの花が重なっていました。そこから少し歩いて視線を地面に落とすと松の樹の根元に黄色いタンポポです。

Photo_8

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タンポポは広場でも道端でもそのあたりで黄色い花を咲かせます。タンポポは札幌だと例外なく「西洋タンポポ」です。在来種は、駆逐されてしまったのか、見かけません(関連記事は「野菜生産地帯のタンポポとカエルと加工食品」)。

札幌はニレ(漢字では楡、英語ではエルムelm)の樹がいっぱいです。とくにハルニレ。高く大きくなります。晴れた日の春の夕方には長く伸びた影がおとぎ話風で幻想的です。

201905

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