野菜と果物

2017年9月 5日 (火)

根が深い、根が浅い

根が深いなどというと、恨みの根が深いといった慣用句が浮かんできますが、そういう怖い話ではありません。
 
狭い経験値の範囲では、根が「浅い」植物の代表がセントポーリア。もともと山の岩肌の陽当たりのいいところで育っていたと記憶しています。土などありません。岩の隙間に浅い根を張って生きている。だから、鉢植えでも根は浅い。
 
それから、ラベンダーも根が浅い。ラベンダーは乾燥した環境を好みますが(富良野などに行ってみるとよくわかる)、そのことと根の浅さとがどういう風に関係しているのかはよくわかりませんが、根は浅い。
 
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一方、夏のサラダに楽しんでいるルッコラやバジルは根が「深い」。鉢植えやプランターだと細い根が容器の端まで、土をぐるっと取り巻くように伸びています。だから栽培時期が終わったときに、土を乾燥させておくと、根が絡まった土はスポッと抜けるように取り出せます。
 
ルッコラは今年はもう終わりましたが、バジルは元気です。他の買ってきた野菜や果物(たとえば、セロリやアボカド)と組み合わせて毎晩のサラダの主たる食材になっています。なにしろ、鉢が7つあり、それぞれが写真のような状態なので、摘芯と水遣りを欠かさなければ、9月下旬にさしかかる頃までは自家供給は大丈夫だと思います。
 
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2017年8月29日 (火)

土は乾いたかな?

ルッコラは素焼きのプランターや素焼きの丸い鉢植えで栽培しています。今年は三期作でした。三期目を収穫し終わったところで、今年は打ち止め。季節がルッコラ向きではなくなってきました。
 
ルッコラは葉の様子からは想像できないくらいに長く広くプランター中にその細い根を張ります。土は収穫が終わり次の種蒔きごとに総入れ替えです。
 
収穫の終わった土はしっかりと乾かしてから処分します。土がよく乾いたかどうかを見て確かめるために、少しだけ小さな葉を残してあります(写真)。まだ緑です。どこかに水分が残っているのでしょう。その葉が緑でなくなったら、土を処分するタイミングです。
 
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2017年8月25日 (金)

活性酸素と脂肪酸(その2)

脂質とは「あぶら」のことですが、この「あぶら」はヒトの中にもあれば、食べものの中にもあります。「あぶら」をここでは「脂質」と表現します。脂質は、炭水化物やタンパク質とならぶ三大栄養素の一つです。ちなみに、常温で液体の食用あぶら(植物系が多い)を「油」、常温で固体の食用あぶら(動物系が多い)を「脂」、まとめて、「油脂」と呼んでいます。
 
「脂質」を分類すると「ステロイド(コレステロール)」「脂肪(中性脂肪)」「リン脂質」「糖脂質」の4つに分かれます。食べものに含まれる脂質でも、ヒトの身体の中にある脂質でも、9割以上が「脂肪(中性脂肪)」です。
 
ぼくたちが健康診断・メタボ診断の結果などでお目にかかる「中性脂肪」というのは、「トリアシルグリセロール(またはトリグリセリド Triglycerides)」と呼ばれていて、次のような構造をしています。(絵は農水省ウェブサイトの「トランス脂肪酸」説明ページからお借りしました。)
 
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この「脂肪酸3本+グリセリン(最近はグリセロールといいます)」は、それが食べものの中にあっても、ヒトの体内にあっても、「脂肪」や「中性脂肪」と呼ばれています。
 
「中性脂肪」(トリアシルグリセロール)は、果糖・砂糖などの糖質(炭水化物)や動物性脂肪を主な原料として肝臓でつくられます。食事でこれらを多く摂りすぎると、皮下脂肪の主成分として蓄積されます。ヒトの体が活動するとき、第一のエネルギー源となるのは、一般的には、ブドウ糖(グルコース)ですが、不足してくると、貯蔵されていた脂肪が分解されて血液中に放出されエネルギーとして使われます。
 
「中性脂肪」の構成要素である「脂肪酸」には「飽和脂肪酸(炭素の二重結合という弱い部分がない、そういう意味で飽和)」と「不飽和脂肪酸(炭素の二重結合という弱い部分がある、そういう意味で不飽和)」の2つがあります(下の絵参照、絵は先ほどと同じ農水省のウェブサイトから引用)
 
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飽和脂肪酸は、炭素の二重結合がないので、通常は酸化されません。
 
比較的酸化されにくいのは、炭素の二重結合が1カ所の単価不飽和脂肪酸。たとえば、オレイン酸を含むオリーブオイルやアボカドオイルなどがこのタイプの食材です。
 
酸化されやすいのは、炭素の二重結合が複数個ある多価不飽和脂肪酸。たとえば、大豆油・ごま油やそれらを使ったサラダオイルやマヨネーズ。青魚に多く含まれるω-3系のDHA/EPAも酸化されやすい。相手を酸化したくてしかたない活性酸素は、炭素の二重結合部分とという弱い部分を襲います。二重結合のない飽和脂肪酸には、活性酸素は悪さを仕掛けられません。
 
飽和脂肪酸は、その長さによって、短鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸に区分されています。短鎖脂肪酸は1~7個の炭素で構成されている飽和脂肪酸。中鎖脂肪酸は8~10個。それよりも構成炭素数の多いものが長鎖脂肪酸です。
 
吸収効率や吸収速度が高いのは、飽和脂肪酸の中で長さが短かめのもの、つまり、短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸は、非常に簡単にエネルギーに変換されて、体脂肪として残らない。短鎖脂肪酸を含む食材は牛乳やバター、中鎖脂肪酸を含む食材はココナッツオイルなど。いずれにせよ、食材の種類は非常に少ない。
 
それに、短鎖脂肪酸を含む牛乳とバターにしても、飽和脂肪酸全体の10%弱くらいが短鎖です。乳脂肪全体からみると、短鎖脂肪酸の量はわずかです。また、中鎖脂肪酸は、ぼくたちが日常よく食べている食品にはほとんど含まれていません(東南アジアでココナッツオイルを料理に毎日使っている人たちは別ですが)。
 
牛肉などの食品に含まれる飽和脂肪酸の大部分は、炭素数16のパルミチン酸と炭素数18のステアリン酸、つまり長鎖脂肪酸です。こうした胴体の長い脂肪酸は、すぐにエネルギー放出のために利用することもできるし、体脂肪としてためておくこともできます。
 
短鎖・中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸では、体内への吸収のされ方も違います。長鎖脂肪酸は、腸の中で胆汁と混ざりあってはじめて体内で吸収できるかたちになります。つまり、腸壁から吸収されたあとは、まずリンパ管に入り、それから血液中に入るという流れになります。一方、短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸は、胆汁と合体する必要はありません。そのまま血液中に吸収されていきます。
 
乳脂肪にはわずかしか含まれない短鎖脂肪酸ですが、短鎖脂肪酸は別の形でも手に入ります。
 
水溶性食物繊維は、大腸の中に棲んでいる善良な腸内細菌叢(ビフィズス菌などいろいろ)の働きで発酵し、分解され、その結果、短鎖脂肪酸が作り出されます。こうして作られた短鎖脂肪酸は、腸内の有益菌にとっても重要な食糧になります。ヒトと細菌叢の共生関係です。大腸の中を短鎖脂肪酸の豊饒な海にするためには、水溶性食物繊維の豊富な野菜や海藻、それから豆類(豆類が向いていない人もいますが)をたくさん食べると簡単です。
 
脂肪の中には、酸化されやすいものもありますが、飽和脂肪酸のように通常は酸化されないものや、簡単にエネルギー変換されるので体内に蓄積されないもの(飽和脂肪酸の中の短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸)があります。「脂肪を食べる=体内にたまって太る」ということではありません。健康な細胞膜とホルモンは、酸化されていない飽和脂肪酸を使って作られます。
 
以上を、それ以外のω-3・ω-6・ω-9関連情報などをいっしょに整理すると以下のようになります。通常は酸化しない飽和脂肪酸も、調理の仕方によっては酸化するので(焦げるほど焼く、強く揚げるなど)、配慮が必要です。
 
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2017年8月24日 (木)

活性酸素と脂肪酸(その1)

1年ほど前から糠漬けを作り始めた知り合いの若い女性から、飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸、酸化や活性酸素などという言葉をインターネットの食べもの関連サイトでときどき見かけるのだがその意味がよくわからない、とこぼされました。たしかにそうだと思います。自分でその気になってキョーカショやサンコーショを調べてみないとこういうことの意味はよくわかりません。ぼくは糠漬けやその他の漬物(家庭発酵食品)を作る若い女性には親切です。で、この記事です。
 
まず、酸素や酸化ということから。
 
電子を他の物質から奪い取ることを「酸化」といいます。このときに、わかりやすい身近な例なのでいろいろな場所でよく引き合いに出されるのが、皮をむいたリンゴです。酸素は、リンゴから電子を奪い取り(「酸化」)、その結果、皮をむいたリンゴはすぐに薄茶色に変色してしまいます。鉄が錆びるのと同じことです。皮をむく前のリンゴは酸化しません。リンゴの皮に含まれているファイトケミカル(ポリフェノール)が酸化を防止しているからです。(逆に、電子を多く持っていてそれを他に提供することを「還元」といいます。)
 
そういう目で活性酸素を見てみると、活性酸素とは、他から電子を奪い取って何とか酸化活動をやりとげたいという欲求に満ちた、とても不安定な状態の酸素だと言えます。
 
活性酸素は、後述のように、呼吸などのヒトの自然な生体活動の中で発生します。しかし、活性酸素の発生はそれにとどまりません。ヒトが以下のような環境変化や環境条件(おおざっぱにいえばヒトにとっての異物、ないしは異物相当物)に出合った場合には、活性酸素が過剰に体内に発生すると考えられています。
 
・紫外線
・大気汚染、排気ガス、煙草
・激しいスポーツ、ストレス
・医薬品、X線(レントゲン)
・加工食品、食品添加物、殺虫剤・農薬
・電磁波
 
ここまでが前置きです。
 
ヒトは呼吸によって体内に酸素を取り込みます。食べものによって取り込んだ栄養素と呼吸によって取り込んだ酸素を使って、ヒトは活動エネルギーを生み出します。その場所は細胞内の工場(ないし発電機)といわれているミトコンドリアです。このとき、エネルギー産生活動の副産物として「活性酸素(活発な酸素)」も生み出されます。その量は吸った酸素量の2%くらいです。
 
世の中には、ヒトとは違って、空気(酸素)を嫌う微生物がたくさんいて、これらは嫌気性の微生物と呼ばれています。ヒトや微生物やバクテリアがエネルギーを作る時に、空気(酸素)が関与する場合にはその行為は「呼吸」と呼ばれ、空気(酸素)が関与しない場合は「発酵」と呼ばれています。発酵とは、微生物が空気の無いところで生きるための一つの方法です。微生物の中には、発酵でアルコールや乳酸などを作るものがあり、その産物として日本酒や乳酸発酵食品ができあがります。それらをぼくたちは発酵食品としてありがたく頂戴する。
 
大昔、あるときあるところに、太陽の光エネルギーを利用して、空気中にふんだんにある二酸化炭素から有機物を作るのを得意とする光合成バクテリアというのが出現しました。これはほとんど経費がかからない、つまり省エネの有機物生産方式です。そういう光合成バクテリアがその生産方式でおおいに繁殖した結果、地球環境に「酸素」がだんだんと蓄積されてきました。しかし、バクテリアなどはそもそもが非常に酸素に弱い。酸素は彼らにとっては猛毒のようなものです。つまり、自分たちの繁茂の結果、環境が自分たちにとっては嫌な、困った方向に変化したわけです。そういうことになるとは想像しなかったと思います。
 
そこで、酸素に弱いバクテリアは、酸素が蓄積されてきた新しい地球環境で生き延びるために、いわば、かれらにとっての持続可能な社会の構築のために、何をしたか。画期的な適応戦略をとった。「酸素に強いミトコンドリアの祖先」と仲間になった。ミトコンドリアの祖先は、酸素を利用してブドウ糖からエネルギーを取り出す代謝経路の作成に成功した、酸素に強い変な奴です。バクテリアは地中深くに潜り込み酸素を避けて逃げ回るのではなく、酸素に強いミトコンドリアを自分の細胞内に取り込むことで酸素がいっぱいの地球環境と折り合いをつけ、生き延びることに成功しました。その結果、ぼくたちヒトの細胞の中でも、この細胞内工場(ないし発電機)とでもいうべきミトコンドリアが常に活躍しています。
 
活性酸素は、ヒトにとってとても重要な役割を演じています。ウィルスや細菌など体内に侵入してきた外敵から身体を守るという防御系機能の一部としての大切な働きが、それです。病原菌の侵入といった外部からの脅威があれば、細胞内で酸化ストレスを増大させ(活性酸素)、そうすることで免疫を活性化し、外部からの感染に打ち勝つようなメカニズムとプロセスが機能します。
 
しかし、同時に、活性酸素は、体内の細胞を酸化させることでさまざまな炎症や病気や老化を引き起こす原因にもなっています。たとえば、齢を重ねるにしたがって、脅威の対象が、外部から突然にやってくる感染から、細胞内のミトコンドリアの劣化(フリーラジカルの漏出、フリーラジカルの代表的なもののひとつが「活性酸素」)といった内的な現象へとシフトしていきます。細胞の工場機能の劣化がきっかけで細胞内の酸化ストレスが増大し、それによって活性化された防御作用が、外敵ではなく、自分自身を継続的に傷つけます。継続的に発生する炎症(慢性的な炎症)が、ヒト自身の内部に心臓病やガン、関節炎などを引きおこします。

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2017年8月17日 (木)

ルッコラとバジルとアボカドのサラダ

人間にとっては涼しくて心地いい札幌の8月はまったく文句を言う筋合いではないのですが、夏野菜や秋に収穫を迎える農産物にとってはやや涼しすぎるかもしれません。晴れの日が多く雨は降っても適度なので、気温は彼らにとって全般的にギリギリ手前といったところでしょうか。
 
このところの涼しさのせいか、アブラナ科の葉野菜・ハーブであるところのルッコラの葉が、6月下旬から7月末にかけてほどは、大きくなりません。さらに、ルッコラが、日中の長さ、陽の長さに敏感に反応するタイプだとすると、夏至から二か月近く経過した8月の中旬は、彼らにとってはそろそろ店仕舞いの準備の時期かもしれません。もう一回種蒔きができるかと考えていたのですが、無理なようです。
 
一方、シソ科のバジルは元気です。脇芽管理をきちんとしているのでどんどんと増えてきます(関連記事は「シソ科は摘芯」、「バジルの摘芯、脇芽と新芽」)。バジルは、ルッコラとは涼しさや日照時間の長短に対する反応が明らかに違います。
 
自家栽培のルッコラと自家栽培のバジルが毎晩のサラダの主要素材です。これらに買ってきた中南米産のアボカドを加えて亜麻仁油でドレッシングし、軽く塩を振りかけるととても贅沢なサラダができあがります。
 
8月の下旬以降は、ルッコラの替わりにどんな葉物野菜を使うか思案中。なくてもいいのですが。

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2017年8月 9日 (水)

露地もの野菜の夏は一瞬

実際には一瞬というわけではありませんが、露地もの夏野菜の出荷期間が短いことに違いはありません。
 
近くの小売店の「ご近所野菜コーナー」や「有機野菜コーナー」はご近所の農家で収穫された夏野菜がいっぱいです。ご近所というのは、札幌市内、および札幌から1時間くらいまでの距離の農家のことです。なかでも、緑と黄色のズッキーニやスナップエンドウなどは、在庫一掃セールのような感じで並んでいます。
 
特定の農家の特定の種類の野菜の収穫期間、出荷期間は長くありません。とくにズッキーニやキュウリは頃合いの収穫時期を逃すと、お化けズッキーニやお化けキュウリになり、味の分かった消費者は手を出しません。値引きの札が貼られます。もったいないなとは思いますが、仕方ない。

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2017年8月 8日 (火)

トマトの毀誉褒貶(きよほうへん)

トマトはナス科の野菜です。トマトがナス科植物だと聞いてびっくりするかたがいらっしゃるかもしれませんが、ぼくたちが普段よく口にしているナス科の野菜には、ナス、トマト、ピーマンやジャガイモがあります。
 
色は違っても花の形がナスに良く似ている野菜に出会ったら、それはナス科だと考えて間違いないと思います(たとえば、下の写真だと、左がナスの花、まん中がミニトマトの花、右がジャガイモの花。なおジャガイモの花は自分で撮ったのが手元になかったのでWikipediaからお借りしました。この場を借りてお礼申し上げます)。
 
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トマトは、かつて、赤茄子(あかなす)と呼ばれていました。トマトがナス科植物であることが日本人の世間知として共有されていたのでしょう。ナスは生では食べない。というか食べられない。生の風味を味わう場合は糠漬けのような発酵食品にして食べる。だからナス科のトマトも「若いころは、赤茄子は気持ちが悪いので普通は食べないということになっていた」。お年寄りからそう聞いたこともあります。確かに、昔のトマトは生で食べるにはおいしくはなかった。ぼくもそう記憶しています。
 
しかし時代は変わり、今では一番の人気野菜になりました。完熟系品種や高糖度トマトやフルーツトマトのような甘いミニトマトやミディトマトが次から次と登場するので、生食トマトの人気は相変わらず沸騰中というか、人気企業の株価のように高値安定中です。総務省の家計調査では、魚の中でいちばん出費金額の多いのが「まぐろ」、果物だと「バナナ」、そして野菜では「トマト」です。最も新しい調査資料には目を通していませんが、この順位は、まず、変わらないと思います。
 
トマトは南米・アンデス高原が原産地ですが、「トマトが赤くなると医者が青くなる」という諺がヨーロッパのどこかにあるそうです。ぼくはそういう諺を直接聞いたことはありませんが、トマト生産(ただし、生食トマトではなく調理用トマトです)の盛んな地中海沿岸地方のどこかにそういう言い伝えがあっても不思議ではない。
 
「トマトが赤くなると」のトマトの赤い色はリコペンという色素によるものです。リコペンを始め野菜の天然色素成分(カロテノイド)には抗酸化作用があり、そういう野菜を食べると体内で悪さをする活性酸素が取り除かれます。
 
ここまでが、トマトの「毀誉褒貶」のうちの主に「誉」と「褒」(ともに、「ほめる」の意)に関する部分です。しかし、最近は、同じトマトの「毀」と「貶」(ともに「けなす」の意)に関する事柄も報告されています。
 
「秋茄子(あきなすび)嫁に食わすな」という日本の言い伝えがあります。「秋ナスのようなおいしいものを嫁に食べさせてはもったいないという、姑(しゅうとめ)の嫁いじめ」的な解釈か、「ナスは体を冷やすので、元気な子供を産んでもらわないといけない大切な嫁には食べさせてはいけないという、嫁への気遣い」的な解釈が一般的です。
 
しかし、「秋茄子(あきなすび)嫁に食わすな」は、「秋なすび早酒(わささ)の粕(かす)につきまぜて棚におくとも嫁に食わすな」の一部だったのが独立したという説もあり、そうだとすると「ナスは、食べるのなら、粕漬け、糠漬けで」「できることなら大事な人には食べさせないほうがいい」という「食に関する知恵」の話になるので、ぼくにはそのほうが腑に落ちます。
 
トマトに関しては、β-カロテンを含んだおいしい生の健康野菜というだけでなく、別の「知見」も登場しています。それはどういうものかというと、トマトやナス、ピーマンやジャガイモのようなナス科の野菜は、レクチンという「反栄養素」(および、アルカロイドという物質)を含んでおり、これが、人によっては関節リウマチや肌荒れのような自己免疫反応を引き起こすので要注意、というものです。レクチンは熱で破壊されることが多いのですが、ナス科野菜のレクチンは熱でも破壊されない。
 
反栄養素というと怖そうな言葉ですが、要は、植物や野菜の自己防御システム(自然環境や外敵から自分を守る)が作り出した、人間や動物にとっては害となるような栄養素のことです。すごくおおざっぱに言うと、反栄養素とは野菜の「アク」のことです。「アク」は抜かないと食べられません。そのままで食べてもいいけれど死ぬほど苦しむことになります。「アク」は晒したり熱を加えたり発酵させたりしないと取り除けません。そこで、いろいろな調理方法が工夫されてきました。「きんぴらゴボウ」などはそのひとつです。
 
植物が光合成をするときに避けて通れないのが太陽の紫外線による被害です。この害から身を守るために作られたものが、ファイトケミカルです(ファイトやフィトは植物の意)。ファイトケミカルには、強い抗酸化作用を持つポリフェノールやカロテノイドがふくまれますが、言葉を換えれば、ファイトケミカルとは、ヒトにとって有用な、温和なタイプの「アク」ということになります。
 
植物や野菜が作り出した自己防御システムのなかには、したがって、ナス科のレクチンのような性質のものも当然含まれます。以前からヒトが食生活の知恵として気づいていたことが、「反栄養素」という科学の概念をまとって再登場してきたとも言えます。

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2017年8月 1日 (火)

ぼくが「最強の食事」を面白いと考える理由

直接にお会いしたことはありませんが、米国には「健康のためなら死ぬのも厭わない」というような健康オタクがいるらしい。そういう人たちのうちでシリコンバレー(IT分野)でひと稼ぎしたひとりが書いた本が「最強の食事」だと思っていました。
 
原題は「The Bulletproof Diet」。原著に忠実に意訳すると「スーパーマン・ダイエット」。「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「いや、スーパーマンだ!」のスーパーマンです。
 
スーパーマンは機関銃で打たれても弾を跳ね返すので「Bulletproof」(防弾)です。ただし、スーパーマンもクリプトナイト(という隕石)には弱いらしい。近づくと体調を崩し下手をすると死んでしまう。つまり、体調の崩れの原因となるハイリスク食品(クリプトナイト)を巧みに回避しながら、頭も体もスーパーマンに近づくためのノウハウが詰まったダイエット本という意味で「The Bulletproof Diet」というタイトルにしたのだと思います。米国人ならわかりやすい。しかし、日本では受けない。というわけで、日本語タイトルは「最強の食事」「完全無欠レシピ集」としたのでしょう。
 
相当なオタク本に違いないと思って読み始めたのですが、どうもそういう雰囲気ではありません。そういう雰囲気でないどころか、妙に理屈っぽい。その理屈っぽさも理屈のための理屈、牽強付会の理屈ではなく、「思想」の雰囲気が漂っています。
 
似た感じの雰囲気の本が、たしか、まだ本棚にあったはずだと、それらしき場所を捜したら、ありました。「TRONを創る」(坂村 健著、共立出版、1987年)がそれです。「TRONを創る」のカバー見開きに下のような一節があります。少し用語を置き換えたら「最強の食事」の紹介文としてそのまま使えそうです。
 
「本書は主にエンジニアのためのTRONの入門書である。TRONプロジェクトがどのような技術的な問題点の把握を出発点としているのか、またコンピュータ周辺の技術をどのように見ているのか、といったことについて突っ込んだ記述をしている。」
 
何が似ているかというと、「TRONを創る」がTRONという「コンピュータ・アーキテクチャ」、「コンピュータの設計思想」について述べた書物であるように、「最強の食事」は食べものと健康(健康の中には頭の状態の持続的活性化も含まれる)に関する考え方、言葉を換えると、日々のQOL (Quality of Life) を高く維持するための「食事のアーキテクチャ」、「日々の食事の設計思想」について述べた本だからです。IT分野の出身者らしい雰囲気が出ています。
 
細部で間違いがあり、味噌・醤油・納豆のような大豆の発酵食品が好きで自家製味噌を作っているぼくには違和感のある記述もある。著者が弱いらしい醤油に関しては、ある通販サイトのカスタマーレビュー欄で米国在住の日本人女性読者が「思うに著者が寿司を食べていた時は、(1) 150kgの巨漢だったから食べる量が多い。(2) アメリカ人は寿司に醤油をほんとうにべたべたにつける。この二つの要素も多いと思います。」とお書きになっていらっしゃる。しかし、そういうことにかかわりなく、アーキテクチャは堅牢です。ただし、そのアーキテクチャを納得するかどうかは、また別の話です。
 
アーキテクチャ骨子は以下の通り。
 
●健康とは頭と体の両方のクオリティーを高いレベルで維持すること。
 
●そのためには、何をおいても「野菜」を食べること。ただし、「果物」は控えめに。「牧草を食べて育った牛肉やラム肉の動物性脂肪」は完全無欠の脂肪源なのでどんどん食べよう。鶏肉は放し飼いのものを。「バター」(短鎖脂肪酸)と「ココナッツオイル」(中鎖脂肪酸)はともにお勧め。ただし、一般の乳製品や植物油にはご用心。「コーヒー」は最大のポリフェノール供給源なのでお勧め。ご飯は玄米よりも「白米」。
 
●「体調不良」や多くの「慢性疾患」の原因は「炎症」。「炎症」は心疾患、がん、糖尿病だけでなく、多くの自己免疫病や一部の精神衛生上の問題とも連関。「慢性炎症」の原因は「反栄養素(栄養阻害物質)」。自然由来の反栄養素の主なものに、「レクチン」、「フィチン酸」、「シュウ酸」、「カビ毒」がある。反栄養素は、植物および植物製品の栽培や貯蔵中に形成される。反栄養素を含む食品はなるべく摂らない。
 
●「生体アミン」のひとつである「ヒスタミン」は季節性アレルギーを起こすことでおなじみ。「ヒスタミン」等を含む食品に注意。
 
といったことをコアにして、
 
(1) 食材や加工食品や調味料といった「入力系」を、
 
「野菜」
「脂肪・油」
「タンパク質」
「乳製品」
「ナッツ・豆類」
「でんぷん質」
「果物」
「調味料・スパイス」
「甘味料」
「飲み物」に分類し、それぞれのカテゴリーで、
 
「QOL維持のために食べることが非常に望ましいもの」
「望ましいもの」
「食べてもいいがとくには役に立たないもの」
「食べないほうがいいもの」
「QOLを阻害するリスクが高いので食べないほうがいいもの」へと、アナログ的に区分し、

(2) 調理方法という「共通サブルーティーン」を、最も望ましい方から順番に
 
「生食/未調理、軽い加熱調理」
「アルデンテに蒸す(歯ごたえを遺す程度に)、160℃以下で焼く」
「とろ火で煮る、茹でる、ポーチ(湯・出汁に落とす)」
「軽いグリル(焦がさないようにあぶる)」
「真空調理、スロークッカー調理」
「バーベキュー、電子レンジ」
「強火で炒める」と、アナログ的に並べたあと、
「焦がす(焼きすぎ)、たっぷりの油で揚げる」を最もリスクの高い調理法と位置づけ、
 
そうした食材と調理方法の組み合わせで日々の食事というユーザインターフェース重視の「処理系」を考える、そうすれば、頭と体の状態(QOL)を高いレベルで維持するという「出力系」が結果する。
 
それが、アーキテクチャの概要。
 
そういう風に読むと「最強の食事」はけっこう面白い。
 

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2017年7月21日 (金)

続・果物も、褒められたりけなされたり、たいへんです

2年ぶりの遊歩道のサクランボ」を読んだ知り合いから、サクランボは好きだったのだが、花粉症になったら果物アレルギーまで発症してしまい、それから食べられなくなって残念だ、という内容のメッセージをもらいました。
 
こういうのは体験者でないとわからないので、ぼくにはわからない。しかし「果物も、褒められたりけなされたり、たいへんです」という記事を書いたばかりだったので、気になって調べてみました。(以下、手元の本や複数の花粉症関連サイトからの引用を含みますが、内容はほぼ同じなので、ここでは参照先はいちいちお断りしません。)
 
・花粉症患者のなかには、特定の新鮮な生の果物や野菜を食べると、およそ15分以内に唇、口の中や咽喉に痒みや痛みやイガイガするような症状が出る人がいる。これは口腔アレルギー症候群とよばれ、花粉症患者のうちの10人に1人の割合で発症するらしい。
 
・特定の果物や野菜に含まれるアレルゲン(原因となる抗原)の構造は、花粉のアレルゲンと構造がよく似ている。特定の果物や野菜を食べると花粉が侵入してきたと勘違いし、すでに体内で作られているIgE抗体と反応してアレルギー症状を起こす。
 
・花粉症を引きおこす花粉の種類によって、口腔アレルギー症候群を引きおこす果物・野菜は異なる。
 
ではサクランボ・アレルギーと関連が深い花粉には何があるかというと、どうも2種類あって、ひとつは
 
【カバノキ科】ハンノキ属 「ハンノキ」、「オオバヤシャブシ」。日本全国に分布。水辺や湿地に自生するほか、公園などにも植えられている。
 
もうひとつは、
 
【カバノキ科】シラカンバ属 「シラカンバ」。北海道~本州中部に分布。一般的には「シラカバ」という名称で呼ばれる。
 
その知り合いは北海道のかたではないけれど、どちらかが原因となっているのでしょう。
 
「ハンノキやオオバヤシャブシ」の花粉と関連がある「口腔アレルギー症候群」の原因となる果物や野菜には「リンゴ、モモ、ナシ、ビワ、サクランボ、イチゴ、メロン、スイカ、キュウリ、ダイズ(主に豆乳)、キウイ、オレンジ、ゴボウ、ヤマイモ、マンゴー、アボカド、ヘーゼルナッツ、ニンジン、セロリ、ジャガイモ、トマト」があるそうです。
 
ちなみに日本人の大好きな野菜である「トマト」と関連が深い花粉は、「スギ」と「ヒノキ」だそうです。
 
なお、食物アレルギーの原因となる食品は、代表的なものが「卵、乳、小麦、落花生、えび、そば、かに」、それ以外の要注意食品が「いくら、キウイフルーツ、くるみ、大豆、バナナ、やまいも、カシューナッツ、もも、ごま、さば、さけ、いか、鶏肉、りんご、まつたけ、あわび、オレンジ、牛肉、ゼラチン、豚肉」(食品衛生法)です。
 
こういうものには家庭や個人で個別に対応するしかなさそうです。「サクランボ」の場合はなんとか花粉症をなくせばカタがつくとも言えますが、食物アレルギー関連の食べものの場合は、たとえば「小麦パン」をやめて「グルテンフリーの米粉パン」にするなど対応はたいへんです。

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2017年7月14日 (金)

アボカドと脂肪酸成分表

たまには手元の「日本食品標準成分表」や「脂肪酸成分表」に目を通すのもいいものです。記憶がリフレッシュされます。
 
森のバターと呼ばれることもあるアボカドは、分類上はイチゴやミカンと同じ果実です。野菜ではありません。ある小売店の野菜・果物売り場では、リンゴの近くでレモンの隣に、メキシコ産のアボカドを並べてあるので、係の人がそういうことをしっかりと意識しているのでしょう。
 
アボカドは確かにバター風味ですが、その脂肪酸構成と風味を合わせると、以下のように表現できます。
 
アボカド = 牛のフィレ肉 + オリーブ油
 
脂肪(中性脂肪)の主要構成要素である脂肪酸は、酸化されないもの、酸化されにくいもの、酸化されやすいものに分けられます。酸化されやすいものは加熱料理向きではありません。そういう観点で脂肪酸を並べてみると
 
・飽和脂肪酸(通常環境では酸化されない。パルミチン酸やステアリン酸など。バターやラードに非常に多く含まれる。加熱料理向き。)
 
・一価不飽和脂肪酸(酸化されにくい。オレイン酸など。オリーブ油やアボカド油に大量に含まれる。加熱料理やドレッシングなど応用範囲が広い。)
 
・n-3系の多価飽和脂肪酸(酸化されやすい。亜麻仁油や紫蘇油に多く含まれるα-リノレン酸や、青魚やマグロのトロに多く含まれるEPA/DHAなど。)
 
・n-6系の多価飽和脂肪酸(酸化されやすい。リノール酸など。大豆油やキャノーラ油や調合サラダ油に多く含まれる。)
 
脂肪酸ほど、その評価の推移、その毀誉褒貶の移り変わりが激しいものも珍しいようです。栄養学というものにおける知見が多くの学者のおかげでどんどんと進歩しているとも云えますし、栄養学というのはまだ未成熟なところのある学問だとも云えますし、ヒトの生というのは、形而上的なことを別にしても、あるいは分析に分析を重なても総体的にはまだまだよくわからないところのあるものだとも云えます。
 
たとえば、数十年前は、n-6系の脂肪酸を多く含むところの「植物油」を摂取することが健康のもとのように考えられていました。しかし、そういう(当時の)知見とその知見を利用した企業のマーケティングプロモーション活動の結果、揚げ物(フライ)やファストフードやサラダドレッシングやマヨネーズなどの摂取過剰で不健康が蔓延し、しばらく前から、n-6系の摂取を抑え、その代わりにn-3系を増やして両者のバランスをとることが推奨されるようになってきました。
 
バターやラードも同じで、n-6系植物油がもてはやされ始めた頃は、悪の枢軸のような扱いを受けていましたが、現在では、(製品の原料にもよりますが)バターやラードに含まれる飽和脂肪酸はとてもヒトの健康に貢献しているという風に認識が変わってきました。
 
マーガリンも評価の逆転現象が発生した加工食品のひとつで、健康を促進するために植物油で作られたけっこうな食材だという以前の評価から、トランス脂肪酸を含んだ健康を阻害するどうしようもない食材だという現在の評価へと、その評価がひっくり返ってしまいました。
 
そういう文脈で、アボカドを眺めてみると、さきほど 「アボカド = 牛のフィレ肉 + オリーブ油」だと書きましたが、アボカドに含まれる脂肪酸の割合は、「成分表」によれば
 
・飽和脂肪酸(=バターなど):         20%
・一価飽和脂肪酸(=オリーブ油など):   67%
・n-3系多価飽和脂肪酸(=亜麻仁油など):  1%
・n-6系多価飽和脂肪酸(=大豆油など):  12%
 
なので、少しだけn-6系が多いのですが、現在の知見では、非常にバランスのよい食べもの(ほとんど野菜のような果物)です。ドレッシングは自家製でシンプルなものにして、サラダで、2~3種類の葉物野菜や軽く蒸したブロッコリーと一緒に生で食べるのがいちばんおいしいようです。

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