農産物

2017年11月29日 (水)

生鮮品の宅配サービス

先日、地元の生協のコールセンターのようなところから配偶者あてに電話がかかってきました。宅配サービスの勧誘電話です。配偶者は会員です。食材や加工食品や弁当などを組み合わせた形の宅配サービスの案内だと思いますが、とりあえずはお断りしたようです。宅配サービスは便利ですが、欲しいものだけを選んで注文しそれを都合の良い日時に届けてもらう限りにおいては便利ということで、提供者側のプリセット的な品揃えがその中に紛れ込んでくると、話は違ってきます。
 
「生鮮品の宅配サービス」に関する新聞記事がありました。長い記事ですが、最初のあたりを一部引用します(引用は『・・・』部分)。
 
『セブン&アイ・ホールディングス(HD)とアスクルは28日から生鮮宅配サービス「IYフレッシュ」を始める。共働き世帯などのニーズを見込み、カット野菜や調理キットなど5000品を扱う。・・・生鮮宅配はアマゾンジャパン(東京・目黒)も4月から「アマゾンフレッシュ」を展開するなど、競争が激しさを増している。・・・・・セブン&アイの商品力とアスクル独自の配送網で利便性を高め、生鮮品宅配の利用拡大を目指す。・・・「配送がタイムリーではないといったネットスーパーへの不満解消を目指したい」・・・・・IYフレッシュはアスクルの通販サイト「ロハコ」内に出店し、扱う商品は生鮮品を中心に5000品。午後2時までの注文で翌日の午前9時以降、午後2~11時の注文で翌日午後4時以降の受取時間を1時間刻みで指定できる。配送料は1回当たり350円。ロハコの商品を含む購入金額が4500円以上で無料にする。』(日本経済新聞 2017年11月28日)
 
インターネットには次のような「“生鮮”宅配」関連記事もありました。午前5時から午前7時の早朝宅配という今のところはニッチな新規セグメントに着目した宅配です。
 
『生協が一部の地域で試験的に始めたのは、「午前5時から7時」に届ける早朝宅配です。共働きの現役世代に対し、出勤前に食品を届けることで差別化を図る狙いです。「共働きなので買い物する間も惜しいので、(朝は)絶対家にいるので確実に受け取れるのはいい」(利用者)また、早朝は渋滞にあわないため、配送効率も上がるといいます。「(配達は)早い方がいい。1日が有効に使える」(利用者)』(TBS NEWS 2017年11月27日)
 
対象が生鮮食材や生鮮食品でも、宅配サービスなので、届けるということの利便性がどういう形であれベースにないとビジネスができません。
 
しかし、そうではあるにしても、方向は一つではありません。資本と設備と豊富な労働力で届けるということの利便性をもっと押し進めようとする上記記事のような方向と、とりあえずの利便性を保証したうえでより安心な食・安全な食の提供に向かう方向の二つに分かれようとしているようです。両者が部分的に重なるところはありますが、対象顧客(ターゲット顧客)の層が違うので、そういうことが成立します。
 
以下は後者の例。ウェブサイトのコピーです。なおその野菜の宅配業者では、期間限定で「1,980円で無農薬野菜を無料お届け」キャンペーンをやっているようです。セグメントは違うとはいえ競争は激化しています。
 
Fb_1
Fb_2b
 
こういうサービスを使うか使わないか、利用するとしたらどの方向のサービスを使うかは、消費者しだいです。しかし、いずれにせよ、生鮮食材の購入なので、料理が前提となります。加工食品の手抜きチンではない。そういう消費者がこのサービスを支えている。

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2017年9月 7日 (木)

食べものや体における「無用者の系譜」

唐木順三の著書に「無用者の系譜」というのがあります。出版社の短い紹介文をお借りするとその内容は、「業平、一遍、秋成等から荷風に至る無用者に独自の視点を当て日本文化の底辺を探る」「業平、一遍、芭蕉、荷風ら、『文人』を追って、日本文化の底辺をさぐる」というものです。
 
ヒトや食べものにも無用者の系譜があります。無用者、役立たずと思われてきたものが、実際には、われわれの「科学的な」知性・知見の外側でとても重要な役割をはるかに以前から演じてきたらしいということです。
 
三大栄養素とは「脂質」と「タンパク質」と「炭水化物」で、以前はそれ以外は関心の対象外でした。それに、「ビタミン」と「ミネラル」が加わって五大栄養素となり、その後、無用者の系譜に属していた「オリゴ糖類(おなかの環境を整える)」「食物繊維類」「ペプチド類(血圧の上昇を抑える)」「ファイトケミカルと総称されるポリフェノール類やカロテノイド類(抗酸化作用で炎症を予防する)」が、表舞台に登場してきました。
 
腸内フローラというきれいな名前がつけられた腸内微生物叢や腸内細菌叢。これも無用者の系譜の一員でした。これに(アンチバイオティクスに対抗して)「プロパイバイオティクス」(たとえば乳酸菌やビフィズス菌など、「善玉菌」とも呼ばれている)という名前がつけられ、「オリゴ糖」などが「善玉菌」の食べものという意味で「プレバイオティクス」と称されるようになり、市民権を獲得しました。(ちなみに、生体内の微生物の総体(微生物叢)は英語でマイクロバイオーム(microbiome)。)
 
DNAの総体をゲノム(genome)といいます。ぼくたちにとってはおなじみの用語です。ゲノムの全部が遺伝子であるわけではなくて、ゲノムの中で「遺伝情報を持ったDNA」(つまり遺伝子)は、量としては数%~10%くらい、残り(残りという言い方は、残りに属するDNAにとっては失礼な話ではありますが)であるところの90%は遺伝情報とは直接の関係のない、存在理由がいまだによくわからないところのあるDNAです(だから、ジャンクDNAなどと呼ぶ礼を失した研究者もいます。)つまり、いまのところ、無用者の系譜に連なっているようです。
 
「体という自然」や「生命」には実質的な無駄やジャンクが存在しないとすると、ぼくたちのまわりに無用者の系譜がそれなりに存在するというのは、ヒトの身体や食べもの関して要はその存在理由や働きがいまだによくわかっていないものがいっぱいあるということです。
 
ぼくが遺伝子組み換え作物や遺伝子組み換え食品を避けるのは、それがたいていはRound-upという除草剤や殺虫剤やRound-up Readyと呼ばれているRound-upに抵抗性を持ったトウモロコシや大豆に関連しているからです。
 
そういう薬剤やそういう薬剤に抵抗性を持った穀物や豆は、たとえば腸内微生物叢や腸内細菌叢を殺してしまう。控えめに言っても、長期的にどういう悪影響を生体内の微生物叢に及ぼすのかほとんどわかっていない。換言すれば、「無用者の系譜」との関連がまったくわからないし、生産者側も認可する側もそれを公表しない。知らぬ間にひそかに「ジャンクDNA」の構成にダメージを与え続けているかもしれません。「君子危うきに近寄らず」です。

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2017年8月24日 (木)

活性酸素と脂肪酸(その1)

1年ほど前から糠漬けを作り始めた知り合いの若い女性から、飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸、酸化や活性酸素などという言葉をインターネットの食べもの関連サイトでときどき見かけるのだがその意味がよくわからない、とこぼされました。たしかにそうだと思います。自分でその気になってキョーカショやサンコーショを調べてみないとこういうことの意味はよくわかりません。ぼくは糠漬けやその他の漬物(家庭発酵食品)を作る若い女性には親切です。で、この記事です。
 
まず、酸素や酸化ということから。
 
電子を他の物質から奪い取ることを「酸化」といいます。このときに、わかりやすい身近な例なのでいろいろな場所でよく引き合いに出されるのが、皮をむいたリンゴです。酸素は、リンゴから電子を奪い取り(「酸化」)、その結果、皮をむいたリンゴはすぐに薄茶色に変色してしまいます。鉄が錆びるのと同じことです。皮をむく前のリンゴは酸化しません。リンゴの皮に含まれているファイトケミカル(ポリフェノール)が酸化を防止しているからです。(逆に、電子を多く持っていてそれを他に提供することを「還元」といいます。)
 
そういう目で活性酸素を見てみると、活性酸素とは、他から電子を奪い取って何とか酸化活動をやりとげたいという欲求に満ちた、とても不安定な状態の酸素だと言えます。
 
活性酸素は、後述のように、呼吸などのヒトの自然な生体活動の中で発生します。しかし、活性酸素の発生はそれにとどまりません。ヒトが以下のような環境変化や環境条件(おおざっぱにいえばヒトにとっての異物、ないしは異物相当物)に出合った場合には、活性酸素が過剰に体内に発生すると考えられています。
 
・紫外線
・大気汚染、排気ガス、煙草
・激しいスポーツ、ストレス
・医薬品、X線(レントゲン)
・加工食品、食品添加物、殺虫剤・農薬
・電磁波
 
ここまでが前置きです。
 
ヒトは呼吸によって体内に酸素を取り込みます。食べものによって取り込んだ栄養素と呼吸によって取り込んだ酸素を使って、ヒトは活動エネルギーを生み出します。その場所は細胞内の工場(ないし発電機)といわれているミトコンドリアです。このとき、エネルギー産生活動の副産物として「活性酸素(活発な酸素)」も生み出されます。その量は吸った酸素量の2%くらいです。
 
世の中には、ヒトとは違って、空気(酸素)を嫌う微生物がたくさんいて、これらは嫌気性の微生物と呼ばれています。ヒトや微生物やバクテリアがエネルギーを作る時に、空気(酸素)が関与する場合にはその行為は「呼吸」と呼ばれ、空気(酸素)が関与しない場合は「発酵」と呼ばれています。発酵とは、微生物が空気の無いところで生きるための一つの方法です。微生物の中には、発酵でアルコールや乳酸などを作るものがあり、その産物として日本酒や乳酸発酵食品ができあがります。それらをぼくたちは発酵食品としてありがたく頂戴する。
 
大昔、あるときあるところに、太陽の光エネルギーを利用して、空気中にふんだんにある二酸化炭素から有機物を作るのを得意とする光合成バクテリアというのが出現しました。これはほとんど経費がかからない、つまり省エネの有機物生産方式です。そういう光合成バクテリアがその生産方式でおおいに繁殖した結果、地球環境に「酸素」がだんだんと蓄積されてきました。しかし、バクテリアなどはそもそもが非常に酸素に弱い。酸素は彼らにとっては猛毒のようなものです。つまり、自分たちの繁茂の結果、環境が自分たちにとっては嫌な、困った方向に変化したわけです。そういうことになるとは想像しなかったと思います。
 
そこで、酸素に弱いバクテリアは、酸素が蓄積されてきた新しい地球環境で生き延びるために、いわば、かれらにとっての持続可能な社会の構築のために、何をしたか。画期的な適応戦略をとった。「酸素に強いミトコンドリアの祖先」と仲間になった。ミトコンドリアの祖先は、酸素を利用してブドウ糖からエネルギーを取り出す代謝経路の作成に成功した、酸素に強い変な奴です。バクテリアは地中深くに潜り込み酸素を避けて逃げ回るのではなく、酸素に強いミトコンドリアを自分の細胞内に取り込むことで酸素がいっぱいの地球環境と折り合いをつけ、生き延びることに成功しました。その結果、ぼくたちヒトの細胞の中でも、この細胞内工場(ないし発電機)とでもいうべきミトコンドリアが常に活躍しています。
 
活性酸素は、ヒトにとってとても重要な役割を演じています。ウィルスや細菌など体内に侵入してきた外敵から身体を守るという防御系機能の一部としての大切な働きが、それです。病原菌の侵入といった外部からの脅威があれば、細胞内で酸化ストレスを増大させ(活性酸素)、そうすることで免疫を活性化し、外部からの感染に打ち勝つようなメカニズムとプロセスが機能します。
 
しかし、同時に、活性酸素は、体内の細胞を酸化させることでさまざまな炎症や病気や老化を引き起こす原因にもなっています。たとえば、齢を重ねるにしたがって、脅威の対象が、外部から突然にやってくる感染から、細胞内のミトコンドリアの劣化(フリーラジカルの漏出、フリーラジカルの代表的なもののひとつが「活性酸素」)といった内的な現象へとシフトしていきます。細胞の工場機能の劣化がきっかけで細胞内の酸化ストレスが増大し、それによって活性化された防御作用が、外敵ではなく、自分自身を継続的に傷つけます。継続的に発生する炎症(慢性的な炎症)が、ヒト自身の内部に心臓病やガン、関節炎などを引きおこします。

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2017年8月 1日 (火)

ぼくが「最強の食事」を面白いと考える理由

直接にお会いしたことはありませんが、米国には「健康のためなら死ぬのも厭わない」というような健康オタクがいるらしい。そういう人たちのうちでシリコンバレー(IT分野)でひと稼ぎしたひとりが書いた本が「最強の食事」だと思っていました。
 
原題は「The Bulletproof Diet」。原著に忠実に意訳すると「スーパーマン・ダイエット」。「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「いや、スーパーマンだ!」のスーパーマンです。
 
スーパーマンは機関銃で打たれても弾を跳ね返すので「Bulletproof」(防弾)です。ただし、スーパーマンもクリプトナイト(という隕石)には弱いらしい。近づくと体調を崩し下手をすると死んでしまう。つまり、体調の崩れの原因となるハイリスク食品(クリプトナイト)を巧みに回避しながら、頭も体もスーパーマンに近づくためのノウハウが詰まったダイエット本という意味で「The Bulletproof Diet」というタイトルにしたのだと思います。米国人ならわかりやすい。しかし、日本では受けない。というわけで、日本語タイトルは「最強の食事」「完全無欠レシピ集」としたのでしょう。
 
相当なオタク本に違いないと思って読み始めたのですが、どうもそういう雰囲気ではありません。そういう雰囲気でないどころか、妙に理屈っぽい。その理屈っぽさも理屈のための理屈、牽強付会の理屈ではなく、「思想」の雰囲気が漂っています。
 
似た感じの雰囲気の本が、たしか、まだ本棚にあったはずだと、それらしき場所を捜したら、ありました。「TRONを創る」(坂村 健著、共立出版、1987年)がそれです。「TRONを創る」のカバー見開きに下のような一節があります。少し用語を置き換えたら「最強の食事」の紹介文としてそのまま使えそうです。
 
「本書は主にエンジニアのためのTRONの入門書である。TRONプロジェクトがどのような技術的な問題点の把握を出発点としているのか、またコンピュータ周辺の技術をどのように見ているのか、といったことについて突っ込んだ記述をしている。」
 
何が似ているかというと、「TRONを創る」がTRONという「コンピュータ・アーキテクチャ」、「コンピュータの設計思想」について述べた書物であるように、「最強の食事」は食べものと健康(健康の中には頭の状態の持続的活性化も含まれる)に関する考え方、言葉を換えると、日々のQOL (Quality of Life) を高く維持するための「食事のアーキテクチャ」、「日々の食事の設計思想」について述べた本だからです。IT分野の出身者らしい雰囲気が出ています。
 
細部で間違いがあり、味噌・醤油・納豆のような大豆の発酵食品が好きで自家製味噌を作っているぼくには違和感のある記述もある。著者が弱いらしい醤油に関しては、ある通販サイトのカスタマーレビュー欄で米国在住の日本人女性読者が「思うに著者が寿司を食べていた時は、(1) 150kgの巨漢だったから食べる量が多い。(2) アメリカ人は寿司に醤油をほんとうにべたべたにつける。この二つの要素も多いと思います。」とお書きになっていらっしゃる。しかし、そういうことにかかわりなく、アーキテクチャは堅牢です。ただし、そのアーキテクチャを納得するかどうかは、また別の話です。
 
アーキテクチャ骨子は以下の通り。
 
●健康とは頭と体の両方のクオリティーを高いレベルで維持すること。
 
●そのためには、何をおいても「野菜」を食べること。ただし、「果物」は控えめに。「牧草を食べて育った牛肉やラム肉の動物性脂肪」は完全無欠の脂肪源なのでどんどん食べよう。鶏肉は放し飼いのものを。「バター」(短鎖脂肪酸)と「ココナッツオイル」(中鎖脂肪酸)はともにお勧め。ただし、一般の乳製品や植物油にはご用心。「コーヒー」は最大のポリフェノール供給源なのでお勧め。ご飯は玄米よりも「白米」。
 
●「体調不良」や多くの「慢性疾患」の原因は「炎症」。「炎症」は心疾患、がん、糖尿病だけでなく、多くの自己免疫病や一部の精神衛生上の問題とも連関。「慢性炎症」の原因は「反栄養素(栄養阻害物質)」。自然由来の反栄養素の主なものに、「レクチン」、「フィチン酸」、「シュウ酸」、「カビ毒」がある。反栄養素は、植物および植物製品の栽培や貯蔵中に形成される。反栄養素を含む食品はなるべく摂らない。
 
●「生体アミン」のひとつである「ヒスタミン」は季節性アレルギーを起こすことでおなじみ。「ヒスタミン」等を含む食品に注意。
 
といったことをコアにして、
 
(1) 食材や加工食品や調味料といった「入力系」を、
 
「野菜」
「脂肪・油」
「タンパク質」
「乳製品」
「ナッツ・豆類」
「でんぷん質」
「果物」
「調味料・スパイス」
「甘味料」
「飲み物」に分類し、それぞれのカテゴリーで、
 
「QOL維持のために食べることが非常に望ましいもの」
「望ましいもの」
「食べてもいいがとくには役に立たないもの」
「食べないほうがいいもの」
「QOLを阻害するリスクが高いので食べないほうがいいもの」へと、アナログ的に区分し、

(2) 調理方法という「共通サブルーティーン」を、最も望ましい方から順番に
 
「生食/未調理、軽い加熱調理」
「アルデンテに蒸す(歯ごたえを遺す程度に)、160℃以下で焼く」
「とろ火で煮る、茹でる、ポーチ(湯・出汁に落とす)」
「軽いグリル(焦がさないようにあぶる)」
「真空調理、スロークッカー調理」
「バーベキュー、電子レンジ」
「強火で炒める」と、アナログ的に並べたあと、
「焦がす(焼きすぎ)、たっぷりの油で揚げる」を最もリスクの高い調理法と位置づけ、
 
そうした食材と調理方法の組み合わせで日々の食事というユーザインターフェース重視の「処理系」を考える、そうすれば、頭と体の状態(QOL)を高いレベルで維持するという「出力系」が結果する。
 
それが、アーキテクチャの概要。
 
そういう風に読むと「最強の食事」はけっこう面白い。
 

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2017年7月 5日 (水)

大豆と大豆を使った食品に関する複数の考え方

食べものを含む特定の対象物に対する常識、あるいは考え方、あるいは知見は時とともに変化します。常に進歩とは言えませんが、そういう方向に変化することを、ぼくたちは、いちおうは期待しています。そして、たいていは、別々の時期に生まれた異なった複数の考え方や知見が、おのおのの勢力範囲を徐々に変えながら、同時に存在しています。食品としての大豆に関してもその図式が当てはまるようです。
 
(グループ1)大豆は健康食品であり、伝統食である。
 
・大豆はタンパク質の豊富な健康食品である。「畑の牛肉」と呼ぶ人もいる。
 
・大豆が健康食品と考えているのは日本人だけでなく、たとえば多くの米国人もそう考えている。米国のスーパーマーケットではTOFUは人気食品のひとつ。赤ちゃん用の粉ミルクがありますが、大豆の粉ミルクというのも米国では需要が高い。
 
・大豆は、とくに加工食品や発酵食品は、ぼくたち日本人の食生活からは切り離せない。大豆がないと、豆腐も厚揚げも味噌も醤油も納豆も作れない。
 
 
(グループ2)発酵食品以外の形で大豆を食べると、健康を害する場合がある。大豆はほとんどが遺伝子組み換えなので、それも問題である。
 
・米国で生産されている大豆の90%以上が遺伝子組み換え。遺伝子組み換えということは、除草剤や殺虫剤に耐性があるような具合に(そんなものを噴霧されてもどうということもないように)遺伝子を組み換えられているということ。大豆を食べるということは、よほど注意していないとそういう不思議な農産物、あるいはそういう不思議な農産物をエサにして育てられた家畜を食べるということ。これは人類史上初めての経験なので、どういう風な影響が出るかは誰もよくわからない。
 
・大豆油はn-6系のリノール酸を多く含む植物油のひとつ。つまり、日本人が揚げ物や加工食品(ドレッシングやマヨネーズ)を通して過剰に摂取している油のひとつです。消費量は抑えた方が健康的。
 
・大豆は、納豆や味噌や醤油のような大豆を発酵させた食品は別だが、サポニンやフィチン酸といった自然毒素であるところの反栄養素を含んでいる。この反栄養素は、タンパク質の消化酵素の働きを阻害する。
 
・大豆に含まれるイソフラボンは女性に悪影響を与える。
 
・大豆粉ミルクは、大豆に含まれるエストロゲンが赤ちゃんの健康を危機にさらす。
 
・大豆油、豆乳、豆乳を使ったヨーグルトやチーズ、大豆で作った「もどき牛肉」、大豆タンパク、大豆粉ミルクなどにはMSG(グルタミン酸ソーダ、グルタミン酸ナトリウム)が含まれていることが多いので食べないほうがいい。
 
・食品表示法では「【アレルギー物質を含む食品の原材料表示について】(食品衛生法に基づく)」という項目で下記の原材料の表示を義務付けている。その理由は「近年、乳幼児から成人に至るまで、特定の食物が原因でアレルギー症状を起こす人が増えてきました。アナフィラキシーショックも年々増加しています。・・・食物アレルギーでは、極微量でも発症することから、加工食品1kgに対して数mg以上含まれる場合、表示されることとなります」。
 
 必ず表示しなくてはならない特定原材料は「卵、乳、小麦、落花生、えび、そば、かに」、それから表示が勧められている20品目は「いくら、キウイフルーツ、くるみ、大豆、バナナ、やまいも、カシューナッツ、もも、ごま、さば、さけ、いか、鶏肉、りんご、まつたけ、あわび、オレンジ、牛肉、ゼラチン、豚肉」で、大豆は20品目のうちのひとつ。
 
 
(グループ3)大豆は、発酵させてあっても、悪影響を被る人がいる。
 
・グループ2では、健康にいい食べもの、安全・安心な食べものとされている「大豆の発酵食品」(つまり、味噌や醤油や納豆など)も、発酵過程で生成された生体アミン(ヒスタミンやチラミンなど)がそれを食べた人に炎症やアレルギーなどの悪影響を及ぼすことがあるので、それらに敏感なかたは大豆発酵食品も避けた方がいい(関連記事は「味噌と醤油とヒスタミン」)。
 
 
以上、現在、世界に同居している「大豆や大豆食品に関する複数の考えかた」をまとめてみました。このブログの身近な読者からそういうリクエストがあったからです。個人メモ的な記事です。
 
【註】国産大豆の国内大豆消費量に占める割合、つまり自給率は、5%~6%程度です。大豆は、日本では、煮豆惣菜として食べたり、豆腐や油揚げという形で食卓に並べたり、味噌・醤油・納豆といった発酵食品に加工して口に入れています。植物油の原料としても大豆は大量に使います。
 
内訳をみると、食品用(豆腐や味噌や納豆として食べる)の自給率は21%くらい。油糧用(植物油用)の自給率は0%。つまり、大豆は大部分が米国などから輸入されています。油糧用(植物油用)の大豆消費量は食品用の約3倍なので、総体的な自給率は5%程度になります(農水省データ)。

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2017年1月31日 (火)

Out of Control状態が継続していることを、意識して確認

福島第1原発が決してUnder Control状態でないことを改めて示す発表がありました。その発表の性格は「大本営」ですが、いくつかのマスメディアの報道内容を拝見すると、同じ「大本営発表」をよく実態が分からないということも含めてUnder Control状態に近いというニュアンスの記事にするのを好む媒体と、Out of Control状態の継続という姿勢が明瞭な媒体(マスメディアとしては珍しことですが)に分かれています。
 
以下、そのうちのひとつから関連部分を引用(『・・・』部分)します。
 
『原子炉真下に堆積物、溶融燃料か 福島2号機』
 
 『東京電力は30日、福島第1原子力発電所2号機でカメラ調査を実施し、原子炉直下の金網状の足場に褐色や黒っぽい堆積物を確認した。事故で起きた炉心溶融によって溶け落ちた核燃料(デブリ)の可能性があるという。事故からまもなく6年となるが、デブリの実態は不明だった。東電は2月にもロボットを投入して放射線量や温度なども調べ、最終的に判断する。』
 
 『1979年の米スリーマイル島の原発事故でも炉心溶融が起きたが、デブリは原子炉の圧力容器の底にとどまった。今回の堆積物がデブリなら、底を突き破っていることになる。廃炉で最大の関門とされる取り出しは非常に困難な作業となる。』
 
『スリーマイル島事故では遠隔操作でデブリを取り出すことができた。一方、86年の旧ソ連のチェルノブイリ原発事故では外部に大量の放射性物質が放出され、溶け落ちたデブリは原子炉建屋の底で固まった。デブリは建屋内に残ったままだ。』(2017/1/30 日本経済新聞)
 
大本営発表ではないところのリアルタイム映像を含む観察データは、以前から、福島第1原発の原子炉がメルトダウン、メルトスルー(あるいはメルトアウト)していることを示していて、したがって福島では今でもOut of Control状態が継続しています。そういうことを気にする人の数は減ってきたようにも見えますが、実際は減ってきているということはなくて、以前よりも、より静かに対応行動をとっているだけかもしれません。
 
そういうことは、たとえば、消費者がどういう産地の農産物や水産物を選んでいるか、その姿勢を実際にその購入現場で観察すれば、よくわかることです。それは居住行動にも現れているようです。Out of Control状態が継続していることを認識し、その長期対策を静かにとっている人たちもいるということになります。

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◇補足

以下は、『東電は2月にもロボットを投入して放射線量や温度なども調べ、最終的に判断する』に関するあるメディアの2月2日の記事です。このエントリーの補足情報として、2017年2月3日に追加しました。

『格納容器、最大530シーベルトの線量推定 福島2号機』

『東京電力は2日、メルトダウン(炉心溶融)した福島第一原発2号機の原子炉格納容器内の放射線量が、推定で最大毎時530シーベルトに達すると明らかにした。運転中の圧力容器内部に匹敵する線量で、人が近くにとどまれば1分足らずで死に至る。また、圧力容器直下の作業用の足場には1メートル四方の穴が開いていることも判明した。溶けた核燃料(デブリ)が落下し、足場を溶かした可能性もあるという。』(朝日新聞デジタル 2017年2月2日21時09分)

下の写真は、東京電力がメディアに提供したものをインターネットから借用。

20170202_12

◇補足2

『2号機格納容器推定650シーベルト…過去最高』

『東京電力は9日、福島第一原子力発電所2号機の原子炉格納容器内で、毎時650シーベルト(速報値)の高い放射線量が推定される場所が見つかったと発表した。

カメラの映像のノイズから分析した。1月末の映像から推定した530シーベルトを上回り、過去最高の線量を更新した。東電は今後の調査方法を慎重に検討する。

毎時650シーベルトは、人間が30秒ほどの被曝(ひばく)で死亡する恐れがある線量で、炉心溶融(メルトダウン)で原子炉圧力容器から落下した核燃料が関係していると考えられる。推定値には上下30%程度の誤差があるという。

この日は溶融燃料の調査に向けた準備として、掃除用のロボットを格納容器内に投入した。しかし、累積で1000シーベルトの放射線被曝に耐えられる設計のカメラの映像が暗くなってきたことなどから、約2時間で作業を中止した。』(読売新聞 2017年2月9日)

◇補足3

『<福島2号機>想定以上の破損』

『東京電力福島第1原発2号機で、自走式の「サソリ型ロボット」を使った格納容器内部の調査は目標の原子炉直下まで到達できないまま、16日に終了した。2号機は水素爆発した1、3号機より損傷が比較的少ないと見られていたが、格納容器内部にある格子状の足場に穴が見つかるなど破損状況は想定以上に激しく、廃炉作業の難しさを改めて示した。

・・・・・・今回の調査は「基礎データ」になるはずだったが2号機内部の全体像は不明のままで、調査の出直しを求められることは確実になった。』(毎日新聞 2017年2月16日)

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2016年9月12日 (月)

「台風とタマネギと農産物貨物列車」補遺、あるいは、北海道産野菜の季節別の移出量

「台風とタマネギと農産物貨物列車」という先週のブログ記事で「北海道での収穫量・出荷量が多くて、かつ、北海道の全国に占めるその割合(シェア)が非常に高い野菜にはジャガイモ(シェア66%)、タマネギ(シェア61%)、カボチャ(シェア59%)、ニンジン(シェア32%)などがあります。」と書きました。
 
量を勘案してもっと要約すると「ジャガ(イモ)・タマ(ネギ)・ニンジン」ということになります。
 
北海道産野菜の(2013年の)季節別の移出量をきれいにまとめたグラフに新聞紙上で出合ったので引用させていただきます(データソースは北海道開発局)。蛇足ですが、移出量とは北海道から他の地域への国内移出量のことです。保存のきくジャガイモやタマネギは翌年の春まで出荷されていきますが、夏野菜の移出は8月、9月、10月に集中します。だから、農業関係者は、現在、野菜の複数の移送手段の確保に懸命です。
 
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2016年9月 7日 (水)

台風とタマネギと農産物貨物列車

下の図は「朝日新聞デジタル」(2016年9月4日)のある記事から引用したものです。その記事は以下のような記述で始まっています。「台風10号の豪雨は、秋の味覚にも大きな打撃を与えた。ジャガイモなどの一大産地である北海道・十勝地方で農地が広範囲で冠水し、流通網も寸断された。食卓への影響が懸念されている。」
 
Rev
北海道での収穫量・出荷量が多くて、かつ、北海道の全国に占めるその割合(シェア)が非常に高い野菜にはジャガイモ(シェア66%)、タマネギ(シェア61%)、カボチャ(シェア59%)、ニンジン(シェア32%)などがあります。
 
今回の複数の台風(7号・11号・9号・10号)で被害の大きかった十勝地方(帯広・芽室・音更・幕別など)や上川地方(和寒・名寄・富良野など)やオホーツク地方(北見・網走など)はそうした野菜の産地です。ニンジンのようにすでに出荷が始まっているのもありますが、これからが旬です(下の図参照)。
 
Bkup
(大根が囲まれていますが、特に意味はありません。)
 
北海道でタマネギ収穫量が、例年だといちばん多いのは北見ですが、その北見のタマネギ畑も相当が冠水してしまったそうです。全国2位の生産量を誇る佐賀のタマネギも今年は「べと病」というタマネギの成長を阻害する病気の影響で不作です。タマネギ好きの消費者としては、値段が高止まりしていてどうも落ち着きません。
 
北海道の鉄道流通網も打撃を受けています。道東から本州へ向かうJR根室線は複数の橋が流され、復旧のめどは立っていないらしい。タマネギやジャガイモなどを運ぶ貨物列車も運休しています。
 
ちなみに、北海道と青森をつなぐ青函トンネルは、新幹線専用ではなく、新幹線と貨物列車が共用しています。以前に書いたブログ記事「北海道新幹線の乗車率と他の新幹線の乗車率、羽田-札幌便の搭乗率」に次のような一節があります。
 
「青函トンネルを新幹線といっしょに通過する貨物列車はJR(JR貨物)にとって高収益ビジネスであるはずで、しかも、旬の季節には北海道の三大農産物であるところのジャガイモ・タマネギ・ニンジンなどの農産物が北海道から本州に臨時便で大量搬送されていく。だから、そういう意味では、新幹線は貨物列車の隙間を、貨物列車の速度で走らせてもらっていることになる。」
 
道央からの農産物貨物列車が運休中です。北海道新幹線は、当面は、青函トンネル内をいくぶんかの貸し切り状態で運行することになるのでしょう。

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2016年7月 8日 (金)

カップ麺と化学調味料

次のような新聞記事が目に入りました。
 
「味の素、南米でカップ麺、ベトナムでは調味料を増産」「味の素は南米でカップ麺市場に参入する。ペルーに新工場を建設し、同国を中心にチリなど4か国に販売する。ベトナムではうま味調味料『味の素』を増産する。南米や東南アジアでは中間所得層の増加に伴い、加工食品や外食需要が拡大している。市場に合わせた製品投入で・・・(後略)。」(日本経済新聞 2016年7月5日)
 
食のグローバル化とは、世界中の人たちが同じようなもの・似たようなものを食べるようになることで、つまりは、食べものの均質化ということです。農産物や食のグローバル化に関して、大まかにまとめてみると、以下のようになります。
 
□食や農業は、そもそもが、人々がそこで生き延びるためのローカルな営みである。嗜好品や贅沢品以外の農産物の貿易率は低い。
 
□農業が経済化し、農産物輸出国と農産物輸出国と密接な関係を持ったアグリビジネスのマーケティングや政治活動によって、世界中の人が同じような食材を同じような調理法で食べるようになった。これが食のグローバル化である。たとえば、
  ・パンと肉類と油脂類で食の欧米化・グローバル化(60年代以降の日本や最近の中国)
  ・世界中にハンバーガーショップ
  ・世界中で即席麺やカップ麺の消費が進行(51か国で年間1056億食、世界の人口は70億人なので大人も子供もひとりあたり年間15食)
  ・遺伝子組み換え農産物
 
□グローバル化の進んだ食材や料理は手に入れ易く、同時に奪われやすい。
 
□一方、地域独自性を維持した食材や料理(発酵食品など)は食糧安保が楽。たとえば、
  ・ジャポニカ米(世界のコメ消費量の15%)、刺身、ゴボウ、納豆、塩辛
 
農産物の生産はそもそも国内・地域内のローカルな営みで、胡椒やコーヒーといった嗜好品、あるいは高級果物を除き、農産物は国を超えた貿易の対象ではありませんでした。地域単位の地産地消が食の基本です。それぞれの地域や国が必要量を生産し、消費し、不測の事態に備えて少し蓄えておく。だから、農産物の貿易率(輸出量を生産量で割ったもの)は、自動車や石油といった製品に比べると当然に低い。これには、食べものは腐りやすいといういう事情もあります。それから、貿易率という意味では逆に、かつての植民地プランテーションで栽培作物が長年にわたって人為的に単作化されてしまい、それ以外の農産物については今でも輸入に頼らざるを得ないという別の事情を引きずっている国もあります。
 
しかし、農産物余剰国とその農産物余剰国を本籍地とするアグリビジネス(巨大な農業ビジネス)が、他国に対して農産物の販売活動、マーケティング活動を開始すれば、農産物は、衣類や自動車と同じような経済の一要素になり、食は徐々にグローバル化します。食がグローバル化するとは、世界中の人が同じような食材を同じような調理法で食べるようになることです。パソコンやパソコンOS、スマートフォンやスマートフォンOSのグローバル化と基本的には同じことです。
 
一部で最近のはやり言葉になっているらしい「攻める農業」というのも、その中身は、「たとえば、高級メロンや高級マンゴーのような贅沢な付加価値農産物」や「日本では数少ない農産物輸出品目のひとつであるカップ麺のような加工食品」をどういう風に輸出してどういう風に儲けるかということで、人々が地元で継続的に生き延びるための基礎農産物の安定的な生産という視点からは遠いようです。
 
【註】輸出入農産物といった場合、小麦粉やコメやジャガイモやパプリカだけでなく、カップ麺やビール、ウイスキーや煙草も農産物です。
 
最近では「うま味調味料」と呼ばれるようになった「化学調味料」も、かつては日本の食卓の人気商品で「白いふりかけ」風の瓶をよく見かけたものです。しかし、実態は「化学調味料」なので、直接の摂取という意味では日本では人気がなくなりました。もっとも、同じ現象が数年前から東南アジアで観察できます。食のグローバル化の一側面です。
 
この「うまみ調味料」は外食産業では日常活用品目だし、また、小型の瓶の消えた家庭の食卓から化学調味料がすっかり消えてしまったかというと決してそうではなく、後を引くような刺激的でおいしい味付けがされた加工食品や何とかの素という別の形でしっかりと浸透しています。
 
4年前の関連記事は「白いふりかけ、あるいは、うまみ調味料」。

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2016年6月 6日 (月)

米国における遺伝子組み換え食品の状況、日本の状況

米国は、以下の表の様に(データは若干古いですが)、遺伝子組み換え作物の生産がとても好きな国です。したがって、米国では、食品に遺伝子組み換え作物を使っているかどうかの表示義務は、現在はありません。

Gm_

しかし米国のバーモント州では、来月(2016年7月1日)から遺伝子組み換え作物を使った食品の「表示義務化法案(GMOラベリング法案)」が施行されます(法案の成立は2年前の2014年4月23日)。

バーモント州の遺伝子組み換え表示基準は、EUと同じで、遺伝子組み換え作物の含有比率が0.9%以上。つまり、遺伝子組み換え原材料の、当該食品の全重量に占める割合が0.9%以上だと、この食品は遺伝子組み換え技術を使って生産されています、この食品には遺伝子組み換え作物が含まれています、などの表示が必要になります。

遺伝子組み換え食品の生産と流通が禁止されたわけではありませんが、そういう食品には遺伝子組み換え表示義務が課せられました。遺伝子組み換え食品が嫌いな人や不安な人は買わない、食べない。気にならない人は、買う、食べる。それを購入するかどうかは消費者の判断、その判断のための(言葉を換えれば、消費者の「知る権利」のための)情報表示義務です。

Gmo_labelinglogo_ctsy_vt_right_to_k バーモント州の消費者団体や市民団体が使った「GMOを知る権利」キャンペーン・ロゴ(関連ウェブサイトより勝手にお借りしました。この場を借りてお礼申し上げます)。

もっとも米国も一枚岩ではなく、カリフォルニア州議会はGMO(遺伝子組み換え品)表示義務化法案を2014年6月1日に否決しました。2014年11月4日にはオレゴン州とコロラド州で遺伝子組み換え表示義務化の賛否を問う住民投票が行われましたが、結果は二州とも否決(オレゴン州では賛成49%、反対51%という僅差での否決、コロラド州では賛成34%、反対66%の大差で否決)。

日本では、遺伝子組み換え作物を原材料に使用していたとしても、表示義務があるのは「原材料の重量に占める割合の高い原材料の上位3位までのもので、かつ、原材料の重量に占める割合が5%以上のものをいう」(「遺伝子組換えに関する表示に係る加工食品品質表示基準第7条第1項及び生鮮食品品質表示基準第7条第1項の規定に基づく農林水産大臣の定める基準」より)となっています。0.9%と5%。

去年の秋から徐々にその内容が公開されてきたTPP協定における遺伝子組み換え作物や遺伝子組み換え食品に関してその要点をまとめてみると、

① TPP協定の中では「バイオテクノロジー」と云う用語が使われ、遺伝子組み換え (GM) という用語は現れない。

② バイオテクノロジーという用語が実際に使われているのは第2章(内国民待遇及び物品の市場アクセス)のみだが、バイオテクノロジーという用語が現れる箇所の狙いは、有体に言えば、バイオテクノロジーを使った生産品(GM作物)のマーケティング・プロモーションである。したがって、GM商品の販売促進を妨げる可能性のある措置をできるだけ押し込める、封じ込めるような規定になっている。

先月の17日に、米科学アカデミーが以下のような骨子の報告書を発表しました。バーモント州の表示義務施行日ことを考えるととてもタイミングが良かったので、ぼくはこのニュースを知った時に、地球温暖化に関する政策提言グループないし政治団体であるところのIPCC(変動に関する政府間パネルIntergovernmental Panel on Climate Change)をすぐに連想してしまいました。

「遺伝子組み換え作物は『安全』 米科学アカデミーが報告書」

「米科学アカデミーは(2016年5月)17日、遺伝子組み換え作物は人間や動物が食べても安全だと結論づける報告書をまとめた。過去20年間の約900件におよぶ研究成果をもとに包括的に評価した結果、がんや肥満、胃腸や腎臓の疾患、自閉症、アレルギーなどの増加を引き起こす証拠はないとした。・・・中略・・・日本や欧州では食品に遺伝子組み換え作物を使う際に表示義務を課しているが、報告書では『表示義務化は国民の健康を守るために正当化されるとは思われない』と指摘。ただ『製品表示には食品の安全性を超える意味がある』として、社会的、経済的に幅広く検討する必要があるとした。」(日本経済新聞 2016年5月18日)

TPPに関しては米国でも経済のグローリゼーションと国民経済がせめぎ合っていますが、そういう構図における重要な景色のひとつとして、遺伝子組み換えを推進する食のグローバリゼーションと、そういうものに対してはとても慎重な人たちの食べものについての考え方とが対峙しています。大手食品メーカーが遺伝子組み換え情報の表示の方向に戦略転換し始めたという話も聞こえてきます。少し国民経済寄りに、様子が変わってきたのかもしれません。

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