農産物

2017年1月31日 (火)

Out of Control状態が継続していることを、意識して確認

福島第1原発が決してUnder Control状態でないことを改めて示す発表がありました。その発表の性格は「大本営」ですが、いくつかのマスメディアの報道内容を拝見すると、同じ「大本営発表」をよく実態が分からないということも含めてUnder Control状態に近いというニュアンスの記事にするのを好む媒体と、Out of Control状態の継続という姿勢が明瞭な媒体(マスメディアとしては珍しことですが)に分かれています。
 
以下、そのうちのひとつから関連部分を引用(『・・・』部分)します。
 
『原子炉真下に堆積物、溶融燃料か 福島2号機』
 
 『東京電力は30日、福島第1原子力発電所2号機でカメラ調査を実施し、原子炉直下の金網状の足場に褐色や黒っぽい堆積物を確認した。事故で起きた炉心溶融によって溶け落ちた核燃料(デブリ)の可能性があるという。事故からまもなく6年となるが、デブリの実態は不明だった。東電は2月にもロボットを投入して放射線量や温度なども調べ、最終的に判断する。』
 
 『1979年の米スリーマイル島の原発事故でも炉心溶融が起きたが、デブリは原子炉の圧力容器の底にとどまった。今回の堆積物がデブリなら、底を突き破っていることになる。廃炉で最大の関門とされる取り出しは非常に困難な作業となる。』
 
『スリーマイル島事故では遠隔操作でデブリを取り出すことができた。一方、86年の旧ソ連のチェルノブイリ原発事故では外部に大量の放射性物質が放出され、溶け落ちたデブリは原子炉建屋の底で固まった。デブリは建屋内に残ったままだ。』(2017/1/30 日本経済新聞)
 
大本営発表ではないところのリアルタイム映像を含む観察データは、以前から、福島第1原発の原子炉がメルトダウン、メルトスルー(あるいはメルトアウト)していることを示していて、したがって福島では今でもOut of Control状態が継続しています。そういうことを気にする人の数は減ってきたようにも見えますが、実際は減ってきているということはなくて、以前よりも、より静かに対応行動をとっているだけかもしれません。
 
そういうことは、たとえば、消費者がどういう産地の農産物や水産物を選んでいるか、その姿勢を実際にその購入現場で観察すれば、よくわかることです。それは居住行動にも現れているようです。Out of Control状態が継続していることを認識し、その長期対策を静かにとっている人たちもいるということになります。

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◇補足

以下は、『東電は2月にもロボットを投入して放射線量や温度なども調べ、最終的に判断する』に関するあるメディアの2月2日の記事です。このエントリーの補足情報として、2017年2月3日に追加しました。

『格納容器、最大530シーベルトの線量推定 福島2号機』

『東京電力は2日、メルトダウン(炉心溶融)した福島第一原発2号機の原子炉格納容器内の放射線量が、推定で最大毎時530シーベルトに達すると明らかにした。運転中の圧力容器内部に匹敵する線量で、人が近くにとどまれば1分足らずで死に至る。また、圧力容器直下の作業用の足場には1メートル四方の穴が開いていることも判明した。溶けた核燃料(デブリ)が落下し、足場を溶かした可能性もあるという。』(朝日新聞デジタル 2017年2月2日21時09分)

下の写真は、東京電力がメディアに提供したものをインターネットから借用。

20170202_12

◇補足2

『2号機格納容器推定650シーベルト…過去最高』

『東京電力は9日、福島第一原子力発電所2号機の原子炉格納容器内で、毎時650シーベルト(速報値)の高い放射線量が推定される場所が見つかったと発表した。

カメラの映像のノイズから分析した。1月末の映像から推定した530シーベルトを上回り、過去最高の線量を更新した。東電は今後の調査方法を慎重に検討する。

毎時650シーベルトは、人間が30秒ほどの被曝(ひばく)で死亡する恐れがある線量で、炉心溶融(メルトダウン)で原子炉圧力容器から落下した核燃料が関係していると考えられる。推定値には上下30%程度の誤差があるという。

この日は溶融燃料の調査に向けた準備として、掃除用のロボットを格納容器内に投入した。しかし、累積で1000シーベルトの放射線被曝に耐えられる設計のカメラの映像が暗くなってきたことなどから、約2時間で作業を中止した。』(読売新聞 2017年2月9日)

◇補足3

『<福島2号機>想定以上の破損』

『東京電力福島第1原発2号機で、自走式の「サソリ型ロボット」を使った格納容器内部の調査は目標の原子炉直下まで到達できないまま、16日に終了した。2号機は水素爆発した1、3号機より損傷が比較的少ないと見られていたが、格納容器内部にある格子状の足場に穴が見つかるなど破損状況は想定以上に激しく、廃炉作業の難しさを改めて示した。

・・・・・・今回の調査は「基礎データ」になるはずだったが2号機内部の全体像は不明のままで、調査の出直しを求められることは確実になった。』(毎日新聞 2017年2月16日)

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2016年9月12日 (月)

「台風とタマネギと農産物貨物列車」補遺、あるいは、北海道産野菜の季節別の移出量

「台風とタマネギと農産物貨物列車」という先週のブログ記事で「北海道での収穫量・出荷量が多くて、かつ、北海道の全国に占めるその割合(シェア)が非常に高い野菜にはジャガイモ(シェア66%)、タマネギ(シェア61%)、カボチャ(シェア59%)、ニンジン(シェア32%)などがあります。」と書きました。
 
量を勘案してもっと要約すると「ジャガ(イモ)・タマ(ネギ)・ニンジン」ということになります。
 
北海道産野菜の(2013年の)季節別の移出量をきれいにまとめたグラフに新聞紙上で出合ったので引用させていただきます(データソースは北海道開発局)。蛇足ですが、移出量とは北海道から他の地域への国内移出量のことです。保存のきくジャガイモやタマネギは翌年の春まで出荷されていきますが、夏野菜の移出は8月、9月、10月に集中します。だから、農業関係者は、現在、野菜の複数の移送手段の確保に懸命です。
 
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2016年9月 7日 (水)

台風とタマネギと農産物貨物列車

下の図は「朝日新聞デジタル」(2016年9月4日)のある記事から引用したものです。その記事は以下のような記述で始まっています。「台風10号の豪雨は、秋の味覚にも大きな打撃を与えた。ジャガイモなどの一大産地である北海道・十勝地方で農地が広範囲で冠水し、流通網も寸断された。食卓への影響が懸念されている。」
 
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北海道での収穫量・出荷量が多くて、かつ、北海道の全国に占めるその割合(シェア)が非常に高い野菜にはジャガイモ(シェア66%)、タマネギ(シェア61%)、カボチャ(シェア59%)、ニンジン(シェア32%)などがあります。
 
今回の複数の台風(7号・11号・9号・10号)で被害の大きかった十勝地方(帯広・芽室・音更・幕別など)や上川地方(和寒・名寄・富良野など)やオホーツク地方(北見・網走など)はそうした野菜の産地です。ニンジンのようにすでに出荷が始まっているのもありますが、これからが旬です(下の図参照)。
 
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(大根が囲まれていますが、特に意味はありません。)
 
北海道でタマネギ収穫量が、例年だといちばん多いのは北見ですが、その北見のタマネギ畑も相当が冠水してしまったそうです。全国2位の生産量を誇る佐賀のタマネギも今年は「べと病」というタマネギの成長を阻害する病気の影響で不作です。タマネギ好きの消費者としては、値段が高止まりしていてどうも落ち着きません。
 
北海道の鉄道流通網も打撃を受けています。道東から本州へ向かうJR根室線は複数の橋が流され、復旧のめどは立っていないらしい。タマネギやジャガイモなどを運ぶ貨物列車も運休しています。
 
ちなみに、北海道と青森をつなぐ青函トンネルは、新幹線専用ではなく、新幹線と貨物列車が共用しています。以前に書いたブログ記事「北海道新幹線の乗車率と他の新幹線の乗車率、羽田-札幌便の搭乗率」に次のような一節があります。
 
「青函トンネルを新幹線といっしょに通過する貨物列車はJR(JR貨物)にとって高収益ビジネスであるはずで、しかも、旬の季節には北海道の三大農産物であるところのジャガイモ・タマネギ・ニンジンなどの農産物が北海道から本州に臨時便で大量搬送されていく。だから、そういう意味では、新幹線は貨物列車の隙間を、貨物列車の速度で走らせてもらっていることになる。」
 
道央からの農産物貨物列車が運休中です。北海道新幹線は、当面は、青函トンネル内をいくぶんかの貸し切り状態で運行することになるのでしょう。

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2016年7月 8日 (金)

カップ麺と化学調味料

次のような新聞記事が目に入りました。
 
「味の素、南米でカップ麺、ベトナムでは調味料を増産」「味の素は南米でカップ麺市場に参入する。ペルーに新工場を建設し、同国を中心にチリなど4か国に販売する。ベトナムではうま味調味料『味の素』を増産する。南米や東南アジアでは中間所得層の増加に伴い、加工食品や外食需要が拡大している。市場に合わせた製品投入で・・・(後略)。」(日本経済新聞 2016年7月5日)
 
食のグローバル化とは、世界中の人たちが同じようなもの・似たようなものを食べるようになることで、つまりは、食べものの均質化ということです。農産物や食のグローバル化に関して、大まかにまとめてみると、以下のようになります。
 
□食や農業は、そもそもが、人々がそこで生き延びるためのローカルな営みである。嗜好品や贅沢品以外の農産物の貿易率は低い。
 
□農業が経済化し、農産物輸出国と農産物輸出国と密接な関係を持ったアグリビジネスのマーケティングや政治活動によって、世界中の人が同じような食材を同じような調理法で食べるようになった。これが食のグローバル化である。たとえば、
  ・パンと肉類と油脂類で食の欧米化・グローバル化(60年代以降の日本や最近の中国)
  ・世界中にハンバーガーショップ
  ・世界中で即席麺やカップ麺の消費が進行(51か国で年間1056億食、世界の人口は70億人なので大人も子供もひとりあたり年間15食)
  ・遺伝子組み換え農産物
 
□グローバル化の進んだ食材や料理は手に入れ易く、同時に奪われやすい。
 
□一方、地域独自性を維持した食材や料理(発酵食品など)は食糧安保が楽。たとえば、
  ・ジャポニカ米(世界のコメ消費量の15%)、刺身、ゴボウ、納豆、塩辛
 
農産物の生産はそもそも国内・地域内のローカルな営みで、胡椒やコーヒーといった嗜好品、あるいは高級果物を除き、農産物は国を超えた貿易の対象ではありませんでした。地域単位の地産地消が食の基本です。それぞれの地域や国が必要量を生産し、消費し、不測の事態に備えて少し蓄えておく。だから、農産物の貿易率(輸出量を生産量で割ったもの)は、自動車や石油といった製品に比べると当然に低い。これには、食べものは腐りやすいといういう事情もあります。それから、貿易率という意味では逆に、かつての植民地プランテーションで栽培作物が長年にわたって人為的に単作化されてしまい、それ以外の農産物については今でも輸入に頼らざるを得ないという別の事情を引きずっている国もあります。
 
しかし、農産物余剰国とその農産物余剰国を本籍地とするアグリビジネス(巨大な農業ビジネス)が、他国に対して農産物の販売活動、マーケティング活動を開始すれば、農産物は、衣類や自動車と同じような経済の一要素になり、食は徐々にグローバル化します。食がグローバル化するとは、世界中の人が同じような食材を同じような調理法で食べるようになることです。パソコンやパソコンOS、スマートフォンやスマートフォンOSのグローバル化と基本的には同じことです。
 
一部で最近のはやり言葉になっているらしい「攻める農業」というのも、その中身は、「たとえば、高級メロンや高級マンゴーのような贅沢な付加価値農産物」や「日本では数少ない農産物輸出品目のひとつであるカップ麺のような加工食品」をどういう風に輸出してどういう風に儲けるかということで、人々が地元で継続的に生き延びるための基礎農産物の安定的な生産という視点からは遠いようです。
 
【註】輸出入農産物といった場合、小麦粉やコメやジャガイモやパプリカだけでなく、カップ麺やビール、ウイスキーや煙草も農産物です。
 
最近では「うま味調味料」と呼ばれるようになった「化学調味料」も、かつては日本の食卓の人気商品で「白いふりかけ」風の瓶をよく見かけたものです。しかし、実態は「化学調味料」なので、直接の摂取という意味では日本では人気がなくなりました。もっとも、同じ現象が数年前から東南アジアで観察できます。食のグローバル化の一側面です。
 
この「うまみ調味料」は外食産業では日常活用品目だし、また、小型の瓶の消えた家庭の食卓から化学調味料がすっかり消えてしまったかというと決してそうではなく、後を引くような刺激的でおいしい味付けがされた加工食品や何とかの素という別の形でしっかりと浸透しています。
 
4年前の関連記事は「白いふりかけ、あるいは、うまみ調味料」。

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2016年6月 6日 (月)

米国における遺伝子組み換え食品の状況、日本の状況

米国は、以下の表の様に(データは若干古いですが)、遺伝子組み換え作物の生産がとても好きな国です。したがって、米国では、食品に遺伝子組み換え作物を使っているかどうかの表示義務は、現在はありません。

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しかし米国のバーモント州では、来月(2016年7月1日)から遺伝子組み換え作物を使った食品の「表示義務化法案(GMOラベリング法案)」が施行されます(法案の成立は2年前の2014年4月23日)。

バーモント州の遺伝子組み換え表示基準は、EUと同じで、遺伝子組み換え作物の含有比率が0.9%以上。つまり、遺伝子組み換え原材料の、当該食品の全重量に占める割合が0.9%以上だと、この食品は遺伝子組み換え技術を使って生産されています、この食品には遺伝子組み換え作物が含まれています、などの表示が必要になります。

遺伝子組み換え食品の生産と流通が禁止されたわけではありませんが、そういう食品には遺伝子組み換え表示義務が課せられました。遺伝子組み換え食品が嫌いな人や不安な人は買わない、食べない。気にならない人は、買う、食べる。それを購入するかどうかは消費者の判断、その判断のための(言葉を換えれば、消費者の「知る権利」のための)情報表示義務です。

Gmo_labelinglogo_ctsy_vt_right_to_k バーモント州の消費者団体や市民団体が使った「GMOを知る権利」キャンペーン・ロゴ(関連ウェブサイトより勝手にお借りしました。この場を借りてお礼申し上げます)。

もっとも米国も一枚岩ではなく、カリフォルニア州議会はGMO(遺伝子組み換え品)表示義務化法案を2014年6月1日に否決しました。2014年11月4日にはオレゴン州とコロラド州で遺伝子組み換え表示義務化の賛否を問う住民投票が行われましたが、結果は二州とも否決(オレゴン州では賛成49%、反対51%という僅差での否決、コロラド州では賛成34%、反対66%の大差で否決)。

日本では、遺伝子組み換え作物を原材料に使用していたとしても、表示義務があるのは「原材料の重量に占める割合の高い原材料の上位3位までのもので、かつ、原材料の重量に占める割合が5%以上のものをいう」(「遺伝子組換えに関する表示に係る加工食品品質表示基準第7条第1項及び生鮮食品品質表示基準第7条第1項の規定に基づく農林水産大臣の定める基準」より)となっています。0.9%と5%。

去年の秋から徐々にその内容が公開されてきたTPP協定における遺伝子組み換え作物や遺伝子組み換え食品に関してその要点をまとめてみると、

① TPP協定の中では「バイオテクノロジー」と云う用語が使われ、遺伝子組み換え (GM) という用語は現れない。

② バイオテクノロジーという用語が実際に使われているのは第2章(内国民待遇及び物品の市場アクセス)のみだが、バイオテクノロジーという用語が現れる箇所の狙いは、有体に言えば、バイオテクノロジーを使った生産品(GM作物)のマーケティング・プロモーションである。したがって、GM商品の販売促進を妨げる可能性のある措置をできるだけ押し込める、封じ込めるような規定になっている。

先月の17日に、米科学アカデミーが以下のような骨子の報告書を発表しました。バーモント州の表示義務施行日ことを考えるととてもタイミングが良かったので、ぼくはこのニュースを知った時に、地球温暖化に関する政策提言グループないし政治団体であるところのIPCC(変動に関する政府間パネルIntergovernmental Panel on Climate Change)をすぐに連想してしまいました。

「遺伝子組み換え作物は『安全』 米科学アカデミーが報告書」

「米科学アカデミーは(2016年5月)17日、遺伝子組み換え作物は人間や動物が食べても安全だと結論づける報告書をまとめた。過去20年間の約900件におよぶ研究成果をもとに包括的に評価した結果、がんや肥満、胃腸や腎臓の疾患、自閉症、アレルギーなどの増加を引き起こす証拠はないとした。・・・中略・・・日本や欧州では食品に遺伝子組み換え作物を使う際に表示義務を課しているが、報告書では『表示義務化は国民の健康を守るために正当化されるとは思われない』と指摘。ただ『製品表示には食品の安全性を超える意味がある』として、社会的、経済的に幅広く検討する必要があるとした。」(日本経済新聞 2016年5月18日)

TPPに関しては米国でも経済のグローリゼーションと国民経済がせめぎ合っていますが、そういう構図における重要な景色のひとつとして、遺伝子組み換えを推進する食のグローバリゼーションと、そういうものに対してはとても慎重な人たちの食べものについての考え方とが対峙しています。大手食品メーカーが遺伝子組み換え情報の表示の方向に戦略転換し始めたという話も聞こえてきます。少し国民経済寄りに、様子が変わってきたのかもしれません。

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2016年5月20日 (金)

TPP協定のなかの遺伝子組み換え農産物

TPP協定関連資料に目を通す(農業や遺伝子組み換え農産物に関して)(その1)」および「(その2)」の補足記事です。

TPP協定の中では、協定作成者が言葉のネガティブな響きを気にしたのか、いわゆる「遺伝子組み換え (GM) 」という言葉は現れません。「遺伝子組み換え農産物」に対しては「バイオテクノロジー生産物」と云う用語が使われています。、

バイテク情報普及会」 (Council for Biotechnology Information Japan) という団体があります。同会の活動方針は遺伝子組み換え(GM)作物プロモーションなので、そのホームページには、たとえば以下のようなグラフが掲載されています。

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日本モンサント社などが会員であるところの同普及会は、日本が輸入している年間約3100万トンの穀物(飼料用のトウモロコシを含む)のうち、約1700万トンが遺伝子組み換え穀物だと推計しています。その推計だと、日本への輸入穀物量の55%が遺伝子組み換え銘柄穀物ということになります。コメの国内消費量は約800万トン、その2倍は1600万トン。だから、「バイテク情報普及会」のホームページのバナーメッセージの一つは下のようなものになっています。

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TPPで遺伝子組み換え農産物をどう取り扱っているかの概要は、「TPP協定関連資料に目を通す(農業や遺伝子組み換え農産物に関して)(その2)」で触れましたが、この記事では、TPP協定の中で「バイオテクノロジー」という用語が使われている箇所を抜き出してみました。こうしておけば、細部をすぐに参照できます。ぼく自身のためのメモです。

バイオテクノロジーという用語が実際に使われているのは「第2章(内国民待遇及び物品の市場アクセス)」のみです。蛇足ですがTPPの中でとても重要な章である「内国民待遇及び物品の市場アクセス」は英文では”NATIONAL TREATMENT AND MARKET ACCESS FOR GOODS”。ここで、内国民待遇とは、外国人待遇ではない、つまり自国民と同じ扱いということです。

バイオテクノロジーという用語が現れる箇所に込められた総体的な意図は、有体に言えば、バイオテクノロジーを使った生産品(GM農産物)のマーケティング・プロモーションで、したがって、そのためには、GM商品の販売促進・流通促進を妨げる可能性のある(輸入国での)措置をできるだけ押し込める、封じ込めるような規定があった方が好都合です。そういう作りになっていると、ぼくの目には、映ります。

以下が、TPP協定の中で「バイオテクノロジー」という用語が使われている箇所です。

◇◇◇◇◇

第C節 農業 (【「高いお米、安いご飯」による註】第C節は「日本語訳」では54頁より始まる)

第二・十九条 定義(【「高いお米、安いご飯」による註】第二・十九条とは、第二章の第十九条のこと、以下同じ)

この節の規定の適用上、「農産品」とは、農業協定第二条に規定する産品をいう。

「輸出補助金」の語は、農業協定第一条(e)(同条の改正を含む。)において当該語に与えられる意味を有する。

「現代のバイオテクノロジー」とは、自然界における生理学上の生殖又は組換えの障壁を克服する技術であって伝統的な育種及び選抜において用いられない次のいずれかのものを適用することをいう。

(a)生体外における核酸加工の技術(組換えデオキシリボ核酸(以下「組換えDNA」という。)の技術及び細胞又は細胞小器官に核酸を直接注入することを含む。)
(b)異なる分類学上の科に属する生物の細胞の融合

「現代のバイオテクノロジーによる生産品」とは、現代のバイオテクノロジーを用いて作り出された農産品並びに魚及び魚製品をいい、薬剤及び医療用の生産品を含まない。

注(【原註】です) 第二・二十七条(現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易)の規定及び「現代のバイオテクノロジー」の定義の適用上、「魚及び魚製品」とは、統一システムの第三類の生産品をいう。

第二・二十七条 現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易 (【「高いお米、安いご飯」による註】「日本語訳」62頁より)

1 締約国は、現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易に関する透明性、協力及び情報交換の重要性を確認する。

2 この条のいかなる規定も、締約国が世界貿易機関設立協定又はこの協定の他の規定に基づく自国の権利及び義務に基づいて措置を採用することを妨げるものではない。

3 この条のいかなる規定も、締約国に対し、自国の領域において現代のバイオテクノロジーによる生産品を規制するための自国の法令及び政策を採用し、又は修正することを求めるものではない。

4 各締約国は、可能な場合には、自国の法令及び政策に従うことを条件として、次のものを公に利用可能なものとする。

(a)現代のバイオテクノロジーによる生産品の承認のための申請を完了させるための書類に係る要件
(b)危険性又は安全性の評価であって現代のバイオテクノロジーによる生産品の承認をもたらしたものの概要
(c)自国の領域において承認された現代のバイオテクノロジーによる生産品の一覧表

5 各締約国は、第二十七・五条(連絡部局)の規定に従い、微量の混入(以下この節において「LLP」という。)(注) の発生に関連する問題に関する情報を共有するための一又は二以上の連絡部局を指定し、通報する。(【「高いお米、安いご飯」による註】LLPはLow Level Presence の略)

注(【原註】です)この条の規定の適用上、「LLPの発生」とは、組換えDNAによる植物性の材料であって、その利用が少なくとも一の国において承認されている(ただし、当該植物性の材料について食品としての利用が承認されているときは、組換えDNAによる植物から得られる食品の安全性の評価の実施のための食品規格委員会の指針(文書番号CAC/GL四五二〇〇三)に従ってその食品としての安全性の評価が行われている場合に限る。)が輸入国においては承認されていないものが植物又は植物性生産品(薬剤又は医療用の生産品であるものを除く。)の貨物に不注意によって微量に混入することをいう。

6 輸出締約国は、LLPの発生に対処し、及び将来のLLPの発生を防止するため、輸入締約国の要請がある場合において、可能なときは、自国の法令及び政策に従うことを条件として、次のことを行う。

(a)当該輸出締約国が特定の現代のバイオテクノロジーによる生産品(植物性生産品であるもの)の承認に関連して危険性又は安全性の評価を実施した場合には、当該評価の概要を提供すること。
(b)判明している場合には、現代のバイオテクノロジーによる生産品(植物性生産品であるもの)の承認を受けた自国の領域内の事業体であって、次の情報を有している可能性があると当該輸出締約国が信ずるものの連絡先を提供すること。

(i)貨物の中に微量に存在する現代のバイオテクノロジーによる生産品(植物性生産品であるもの)を検出するために存在する方法であって、有効なものと認められたもの
(ii)LLPの発生を検出するために必要な参照用の見本
(iii)輸入締約国が危険性若しくは安全性の評価を実施するために使用することができる関連の情報又は食品としての安全性の評価を行うことが適当である場合には、組換えDNAによる植物から得られる食品の安全性の評価の実施のための食品規格委員会の指針(文書番号CAC/GL四五二〇〇三)附属書三の規定に従って実施される食品の安全性の評価のための関連の情報

(c) (b)に規定する事業体に対し、(b) (i)から(iii)までに規定する情報を輸入締約国と共有するよう奨励すること。

7 輸入締約国は、LLPの発生があった場合には、自国の法令及び政策に従うことを条件として、次のことを行う。

(a)当該LLPの発生の事実及び当該LLPの発生が判明した貨物の処分に関する決定を当該輸入締約国が行うために輸入者に提出を要求する追加的な情報について、当該輸入者又はその代理人に対して通知すること。
(b)可能な場合には、当該LLPの発生について当該輸入締約国が実施した危険性又は安全性の評価の概要を輸出締約国に提供すること。
(c)当該LLPの発生に対処するためにとられる措置(注)が自国の法令及び政策に合致する適当なものであることを確保すること。

注(【原註】です) この7の規定の適用上、「措置」には、罰則を含まない。(【「高いお米、安いご飯」による註】わざわざ、罰則を含まない、としている)

8 LLPの発生による貿易の混乱の可能性を減ずるため、

(a)各輸出締約国は、自国の法令及び政策に従い、技術開発を行う者に対し、現代のバイオテクノロジーによる生産品(植物及び植物性生産品であるもの)の承認のための申請を締約国に提出することを奨励するよう努める。
(b)現代のバイオテクノロジーから得られる植物及び植物性生産品を承認する締約国は、次のことを行うよう努める。

(ア)現代のバイオテクノロジーによる生産品(植物及び植物性生産品であるもの)の承認のための申請の提出及びその審査を年間を通じて認めること。
(イ)世界的な情報交換を改善するため、現代のバイオテクノロジーによる生産品(植物及び植物性生産品であるもの)の新たな承認に関する締約国間の連絡を増進すること。

9 締約国は、貿易に関連する事項であって現代のバイオテクノロジーによる生産品に関連するものについて情報交換及び協力を行うため、ここに、農業貿易に関する小委員会の下に現代のバイオテクノロジーによる生産品に関する作業部会(以下この条において「現代バイオテクノロジー生産品作業部会」という。)を設置する。現代バイオテクノロジー生産品作業部会は、締約国の政府の代表者によって構成されるものとし、それらの締約国は、農業貿易に関する小委員会に対して現代バイオテクノロジー生産品作業部会に参加する旨を書面により通報し、及び現代バイオテクノロジー生産品作業部会に対する一又は二以上の自国政府の代表者を指名する。

10 現代バイオテクノロジー生産品作業部会は、次のことのための場を提供する。

(a)締約国の法令及び政策に従うことを条件として、現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易に関連する事項(効力を有する法令及び政策並びに法令及び政策の案を含む。)について情報を交換すること。
(b)二以上の締約国間において、現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易について相互に関心を有している場合には、協力を更に促進すること。

◇◇◇◇◇

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2016年3月25日 (金)

ヤーコン入門には、寝かせたヤーコンのキンピラ

ヤーコンは飽きない」、「再び、ヤーコンは飽きない」、「土付き野菜は人気がない、そして、そのひとつとしてのヤーコン」の続きです。

ヤーコンは色黒なサツマイモのような外貌と、梨のような瑞々しい切り口と風味を持った不思議な根菜類です。生(なま)は細長く切ってサラダに、ミキサーで野菜ジュースに、加熱すると汁物の具やキンピラになります。旬は10月から12月ですが、北海道では貯蔵してあったのを3月まで販売しています。

ヤーコンにはフラクト・オリゴ糖が野菜の中ではいちばん多く含まれているので、もともとほのかに甘い。収穫後、貯蔵しておくと甘さが増します。だから、2月の下旬などにキンピラをつくると、醤油と日本酒だけでも、しっかりと甘いのができ上がります。ぼくには甘すぎる。

市販の惣菜としてのゴボウのキンピラを何かの事情で口にしたのはずいぶん前のことです。とても甘かった記憶があります。今は、コメもトマトもイチゴもリンゴも甘いのが好まれる時代なので、デパ地下の総菜売り場やコンビニで売っているゴボウのキンピラも、以前と同じように、あるいはそれ以上に甘いに違いない。大人の消費者も子供もそういう味に慣れています。

ゴボウのキンピラをつくるのが面倒な主婦の方がヤーコンのキンピラに挑戦する機会は少ないと思いますが(その理由は、ヤーコンは比較的にサクサクと切れますが、たいていは泥付きなのでタワシでこすらないといけない、きれいな野菜以外は野菜と考えない主婦は尻込みする)、ヤーコンというものを一度家族で味わってみたいとお考えなら、旬の時期を過ぎたあたりのヤーコンのキンピラがお勧めです。

砂糖や味醂なしで十分に甘く仕上がるので、子供も含め、家族みんなで楽しめます。ヤーコン入門にはキンピラが便利です。

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2016年3月18日 (金)

環境問題の主張の一部に対して抱く違和感

「なんですか、あなたは資源を無駄遣いした方がいいというのですか?」

「いいえ、資源は無駄使いをしない方がいいと思います。わが家でも電気は節約しているし、野菜も旬の露地物がいちばん好きです。流行の洋服を追いかけたりもしません。3R (Reduce, Reuse, Recycle) や5R (Refuse, Reduce, Reuse, Repair, Recycle) という考え方と最近の優先順位づけも気に入っています。つまり、Recycle の優先順位がいちばん低いのが、すばらしい。強引なリサイクル化はコストパフォーマンスが悪く、つまり、無理をして商品化し、そのために無駄にエネルギーを使うので適正利益の出るまともなビジネスとしては成立しない。そういうことが身に沁(し)みたのでしょう。使用済みのペットボトルでフリースやクリアファイルや卵パックを作るなどというのは数少ないリサイクル商品の成功例ですね。」

環境問題の主張の一部に対して持つ違和感は以前から続いていて、薄くなりません。環境や環境問題に熱心な方と、環境や環境問題について会話を交わす機会があったような場合、どうもうまく噛み合わない。だからぼくはお相手の意見に違和感を抱き、先方は、煮え切らないぼくに対してイライラを募らせるようです。

お相手の感じているであろうこのイライラは、ぼく自身にもよく理解できるような気がします。「正しいこと」に対してすぐに「そうだそうだ」と賛成しないのですから。もし今が戦前なら、流れに棹ささないぼくはお相手から「非国民」と呼ばれていたかもしれません。しかし今は戦前ではなくグローバルという形容詞が蔓延する時代なので、「非国民」ではなく「人非人」、人にあらざる人、ということになりそうです。

環境問題に熱心な方の話題の中心は、CO2濃度の増加と地球温暖化です。地球温暖化は英語だとGlobal Warmingですが、ぼくは、頭にGlobalとつくとその議論はひょっとしてマユツバかもしれないと考える傾向があるので、そういう言葉が頻出する主張を前にすると一歩引いてしまいます。

ものごとには、たいていの場合は、アドバンテージ(利点)とディスアドバンテージ(欠点、不利)があるので、なにかを考える場合には、その両方を並べてみるとそのことの理解が進みます。しかし、二酸化炭素や温暖化が話題の場合、そういうことは今さらしないことになっているのか、アドバンテージとディスアドバンテージが提示されることや確認されることは少ないようです。提示された場合でも、なにか違和感の漂う例や不思議な想定例といっしょの場合が多い。

たとえば、次のような主張があります。

「CO2が増え続けている。困ったことだ。地球が産業革命あたりから温暖化している。困ったことだ。CO2を削減しなくてはならない。地球の温暖化を止めなくてはならない。」

(蛇足めきますが、CO2を削減し地球の温暖化を止めなければならないと主張する人で、地球環境の保全や持続する社会のためには、地震を止めなければならない、津波の発生を抑制する必要がある、台風の発生を防止しなければならない、と言った人にはぼくはお目にかかったことがない。)

そういう、CO2の増加そのものが大問題だ、温暖化そのものが悪いといった主張を聞いた場合、もし、その方とゆったりとした私的な会話の機会があれば、次のようなことを尋ねるようにしています。

「CO2が増加して何か悪いことがありましたか?逆に、CO2が増加してよかったことはありませんでしたか?」「この200年で地球が温暖化して何か悪いことがありましたか?温暖化してよかったことはありませんでしたか?」

たいていの場合は、おそらく想定外の内容の質問なので、すぐには答えがありません。沈黙がその場を支配します。そういう場合は申し訳ないので、「助け舟」を出します。

「CO2が増えると農産物の収穫量は増えますよ。CO2が300ppm増えたら、たとえばCO2濃度が300ppm (0.03%) から 600ppm (0.06%) になったら、米や大豆やジャガイモやニンジンやトマトの収穫量が1.3倍から1.5倍になったという研究事例がたくさんあります。ご存じのように、植物は光と二酸化炭素と水の光合成が命です。だから普通の露地栽培でも産業革命当時よりも今の方が農産物の収穫量は多いです。北海道のような農産物生産地には、CO2の上昇はいいことです。ぼく自身はCO2の増加で困ったことはとくにはありません。もっとも空気のきれいな札幌に、北京から汚れた空気が流れてくるのは嫌ですが。・・・・・

ところで、あなたは温暖化で困ったことはありましたか。外国の山地生まれで朝夕の寒冷な気候が好きな野菜もあるし、寒冷地仕様の農産物も開発された。しかし全般的には暖かくなった方が農産物の生産には有利です。北海道はその方がいい。シベリアも穀倉地帯になるかもしれない。北極海の氷が融けると、北極海経由の船舶輸送が活発になります。ロシアや北欧との貿易は楽になる。飛行機を使わなくていいし、船も遠回りをしなくていい。エネルギー資源の節約です。」

そう云うと、ほっとした表情で「そういう地方の視点だけではダメなんですよ。」

「そうですか。でも、繰り返しで申しわけないけれど、この200年の地球温暖化であなたが実際に困ったことはありましたか?」
「南太平洋の小国が水没の危機にある。日本も将来海に沈むかもしれない。あなたの家がそうなったらどうするんですか。」と恐ろしいことを口にします。
「6000年から7000年ほど前に、日本でも縄文海進がありましたから、そういう可能性はあります。東京だと東京タワーのあたりで貝塚が発見されましたが、当時はそこまで海だった。でも、IPCCの初代議長は、この方はスウェーデンの気象学者ですが、2020年にはロンドンもニューヨークも水没すると予言していました。今は2016年だから、ロンドンもニューヨークもそろそろヤバイですね。」

以前は、原子力発電は「CO2を出さない」となっていましたが、今は「発電時にはCO2を出さない」と控えめになりました。しかし、原子力発電の裏側には電力量の調整のために揚水発電が存在し、揚水発電の設備はCO2を排出するので、必ずしも正しい表現ではない。

こういうのを、ぼくは、「環境問題の主張の一部に対して抱く違和感」と呼んでいます。

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2016年3月16日 (水)

TPP協定と、そのいちばんの受益者について

TPP協定の狙いは何かという質問をされたら、TPP協定の締結・実施で「いちばん」得をするのは誰でしょうかという質問を返すといいと思います。そこに答えがあるからです。答えはグローバル経済で活動するグローバル企業です。

グローバル企業にとって経営がもっとも効率的なのは、同じ製品や商品を、均質的な市場に大量販売することです。だから世界の市場は国境を感じさせないほどに均質化していた方がいい。関税の廃止というのは均質化のための荒っぽい手段のひとつですが、商品の流通の方法も均質化していた方が経費は少なく利益は多い。均質化を妨げるものがあれば、それを打ち砕く方策がなにかそばにあると便利です。

市場の均質化といっても、やはり文化的な違いや地域経済の特性の違いから市場ニーズには差が出ます。たとえば、インドでは軽乗用車需要が圧倒的に強い。しかし、市場ニーズに言語以外の差がないような場合も多い。たとえば、スマートフォン。

均質化から今でも一番遠い場所にあるのは、食べもの、食事です。マクドナルドやKFCといったプレーヤーによってファストフード分野でのグローバルな均質化はある程度は浸透しましたが、札幌の渡辺家の朝ごはん(鮭の塩焼きとお味噌汁)は、ロスアンジェルス近郊に住むファーガソンさんのお宅の朝ごはん(ベーコン&目玉焼きとサラダ、あるいはコーンフレークかもしれない)とはずいぶん違います。台北の呉さん夫婦の朝ごはん(揚げパンやお粥)が加えてみるともっと違う。晩ごはんになるとさらに違う。しかし三つの家庭のご主人や奥さんはともにiPhoneやWindowsを使っている。

農産物の生産は、食文化の違いが根にあるので、そもそもが国内・地域内のローカルな営みで、胡椒やコーヒーといった嗜好品を除き、農産物は国を超えた貿易の対象ではありませんでした。地域単位の地産地消が食の基本です。それぞれの地域や国が必要量を生産し、消費し、不測の事態に備えて少し蓄えておく。

資本主義が発展すると都市人口が急激に増加します。都市人口の中には工場労働者も含まれます。資本主義の成長にともなって増大する都市人口や工場労働者に食料を供給するために、資本主義各国は国内の農業生産力を高めてきました。明治以降の日本も例外ではありませんでした。多くの先進欧米諸国は(比較生産費説で有名なリカードウの母国であるところの英国などを別としても)今でも高い穀物自給率や食料自給率を維持していますが、そういう歴史遺産が現在まで存続しているわけです。そのことと食文化の違いがいっしょになると、農産物や食べものに関しては国の単位で地産地消を維持することがデフォ(デフォールト・バリュー)になります。

しかし、時代と資本主義が推移し変化し、農産物余剰国とその農産物余剰国を本籍地とする巨大なアグリビジネス(農業ビジネス)が、他国に対して農産物の販売活動、マーケティング活動を開始するようになると、農産物は、衣類や自動車と同じような経済の一要素になり、食は徐々にグローバル化します。食がグローバル化するとは、世界中の人が同じような食材を同じような調理法で食べるようになることです。ITの世界のOSや情報端末のグローバル化と同じことです。日本で生まれたカップラーメンなどもグローバル化した加工食品のひとつの例です。

そういう指向の強いグローバル企業にとって、TPP協定というのは市場の均質化を推し進めてくれる実に快適な仕組みです。ISDS条項なども「均質化を妨げるものがあれば、それを打ち砕く方策がなにかそばにあると便利」なツールに違いない。

グローバル企業は、各国に存在しています。グローバル企業は現地法人や支店を世界中に配置しているという意味ではなく、アップルやグーグルは米国のグローバル企業、トヨタは日本のグローバル企業という意味で主要各国に存在しています。TPP参加国にもそれぞれにグローバル企業が存在し、各国におけるグローバル企業の数はGDPの大きさにだいたいは比例しています。

参加国によってどういう業種にグローバル企業が多いかは各国の事情により異なります。巨大アグリビジネスは米国やオーストラリアにはありますが、日本にはない。しかし自動車は日本、医薬品なら米国です。日本の医薬品会社は世界ではいささか影が薄い。遺伝子組み換え農産物の得意なバイオテクノロジー企業も米国に集中しています。

グローバル企業の存在感が大きい国では、グローバル経済の担い手としてのグローバル企業と国民経済の担い手としての国民や中小企業との間に軋轢が生まれています。経済格差に起因する軋轢です。TPPはこの格差をさらに拡大する方向に働くので、TPP参加表明国では、米国やカナダや日本の様に、TPP協定参加への反対運動が起こっています。

TPP参加国の中でどの国にグローバル企業が最も多いかといえば米国ですが、だから米国ではスムーズにTPP批准かというと、そういうわけにはいかない。国民経済の担い手が、誰がTPPのいちばんの受益者かをよく認識しているからでしょう。

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2016年3月11日 (金)

TPP協定関連資料に目を通す(農業や遺伝子組み換え農産物に関して)(その2)

もうひとつの「さらっとした記述」の例は、「環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の全章概要」「第二章.内国民待遇及び物品の市場アクセス章」の中の「現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易」に関する説明です。バイオテクノロジーによる生産品とは、遺伝子組み換え農作物のことです。

「締約国の法令及び政策の採用又は修正を求めるものではない旨規定した上で、現代のバイオテクノロジーによる生産品(遺伝子組換え作物)の承認に際しての透明性(承認のための申請に必要な書類の要件、危険性又は安全性の評価の概要及び承認された産品の一覧表の公表)、未承認の遺伝子組換え作物が微量に混入された事案についての情報の共有(輸入締約国の要請に基づき輸出締約国において現代のバイオテクノロジーによる生産品につき承認を受けた企業に対し情報の共有を奨励する規定を含む。)、情報交換のための作業部会の設置等について規定。」

遺伝子組み換え農産物は、知らぬ間にというか、なし崩し的に日本市場に浸透しています。その浸透状況は厚生労働省のホームページ「遺伝子組換え食品」でもいちおう確認できますが(そこでのニュアンスは「安心して食べてください」風で遺伝子組み換え作物に関してはとてもポジティブ)、上に引用した文面も、遺伝子組み換え農産物のマーケティング・プロモーション・メッセージに見えなくもない。

念のためにTPP協定の原文や和訳(「第二章 二十七条 現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易」)に当たってみると、遺伝子組み換え農産物の生産と流通というものが、TPP協定の中では確固たる前提となっているようです。なぜなら、

「二十七条 1  締約国は、現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易に関する透明性、協力及び情報交換の重要性を確認する。」

「二十七条 3  この条のいかなる規定も、締約国に対し、自国の領域において現代のバイオテクノロジーによる生産品を規制するための自国の法令及び政策を採用し、又は修正することを求めるものではない。」

といった具合だからです(関連記事は「米国のGM(遺伝子組み換え)小麦」)。

第九章の投資に目を移すと、最初に「投資」というものの定義が列挙されています。グローバルなアグリビジネスでは、遺伝子組み換え農産物の種子とその種子だけが耐性を持つ農薬(除草剤など)を農家にセット販売することがビジネスモデルになっていますが、そういう種子や農薬やビジネス・ノウハウは投資財産です。また、NAFTA(北米自由貿易協定)以降何かと批判の多い「投資家と国との間の紛争解決」条項、いわゆるISDS <Investor-State Dispute Settlement> 条項について知りたければ、第九章のB節に詳しく書かれています。

アグリビジネスのセット販売モデルの片割れであるところの農薬(除草剤)を、そういう背景の除草剤とは知らずに、庭の雑草排除に散布している日本の家庭も少なくありません。宣伝も巧みですし、商品はホームセンターや通販で簡単に手に入ります。

外国(TPP参加国でいえば、米国やカナダ)で生産された遺伝子組み換え農産物は、サラダ油や加工食品の原材料、家畜用飼料として、相当に輸入されています。日本では、遺伝子組み換え作物は「商業用には」栽培されていないということになっていますが、バイオテクノロジー企業がその気になってISDS条項を利用すれば、日本での商業栽培も、なし崩し的に始まるかもしれません。

少し長いですが、TPP協定における「投資」の定義を引用しておきます(仮訳文より)。

「『投資財産』とは、投資家が直接又は間接に所有し、又は支配している全ての資産であって、投資としての性質(資本その他の資源の約束、収益若しくは利得についての期待又は危険の負担を含む。)を有するものをいう。投資財産の形態には、次のものを含む。」

(a) 企業
(b) 株式、出資その他の形態の企業の持分
(c) 債券、社債その他の債務証書及び貸付金
(d) 先物、オプションその他の派生商品
(e) 完成後引渡し、建設、経営、生産、特許又は利益配分に関する契約その他これらに類する契約
(f) 知的財産権
(g) 免許、承認、許可及び締約国の法令によって与えられる類似の権利
(h) 他の資産(有体であるか無体であるかを問わず、また、動産であるか不動産であるかを問わない。)及び賃借権、抵当権、先取特権、質権その他関連する財産権

別の関連記事は「日米関係のサブセットとしてのTPP」。

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