畜産物など

2017年8月 1日 (火)

ぼくが「最強の食事」を面白いと考える理由

直接にお会いしたことはありませんが、米国には「健康のためなら死ぬのも厭わない」というような健康オタクがいるらしい。そういう人たちのうちでシリコンバレー(IT分野)でひと稼ぎしたひとりが書いた本が「最強の食事」だと思っていました。
 
原題は「The Bulletproof Diet」。原著に忠実に意訳すると「スーパーマン・ダイエット」。「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「いや、スーパーマンだ!」のスーパーマンです。
 
スーパーマンは機関銃で打たれても弾を跳ね返すので「Bulletproof」(防弾)です。ただし、スーパーマンもクリプトナイト(という隕石)には弱いらしい。近づくと体調を崩し下手をすると死んでしまう。つまり、体調の崩れの原因となるハイリスク食品(クリプトナイト)を巧みに回避しながら、頭も体もスーパーマンに近づくためのノウハウが詰まったダイエット本という意味で「The Bulletproof Diet」というタイトルにしたのだと思います。米国人ならわかりやすい。しかし、日本では受けない。というわけで、日本語タイトルは「最強の食事」「完全無欠レシピ集」としたのでしょう。
 
相当なオタク本に違いないと思って読み始めたのですが、どうもそういう雰囲気ではありません。そういう雰囲気でないどころか、妙に理屈っぽい。その理屈っぽさも理屈のための理屈、牽強付会の理屈ではなく、「思想」の雰囲気が漂っています。
 
似た感じの雰囲気の本が、たしか、まだ本棚にあったはずだと、それらしき場所を捜したら、ありました。「TRONを創る」(坂村 健著、共立出版、1987年)がそれです。「TRONを創る」のカバー見開きに下のような一節があります。少し用語を置き換えたら「最強の食事」の紹介文としてそのまま使えそうです。
 
「本書は主にエンジニアのためのTRONの入門書である。TRONプロジェクトがどのような技術的な問題点の把握を出発点としているのか、またコンピュータ周辺の技術をどのように見ているのか、といったことについて突っ込んだ記述をしている。」
 
何が似ているかというと、「TRONを創る」がTRONという「コンピュータ・アーキテクチャ」、「コンピュータの設計思想」について述べた書物であるように、「最強の食事」は食べものと健康(健康の中には頭の状態の持続的活性化も含まれる)に関する考え方、言葉を換えると、日々のQOL (Quality of Life) を高く維持するための「食事のアーキテクチャ」、「日々の食事の設計思想」について述べた本だからです。IT分野の出身者らしい雰囲気が出ています。
 
細部で間違いがあり、味噌・醤油・納豆のような大豆の発酵食品が好きで自家製味噌を作っているぼくには違和感のある記述もある。著者が弱いらしい醤油に関しては、ある通販サイトのカスタマーレビュー欄で米国在住の日本人女性読者が「思うに著者が寿司を食べていた時は、(1) 150kgの巨漢だったから食べる量が多い。(2) アメリカ人は寿司に醤油をほんとうにべたべたにつける。この二つの要素も多いと思います。」とお書きになっていらっしゃる。しかし、そういうことにかかわりなく、アーキテクチャは堅牢です。ただし、そのアーキテクチャを納得するかどうかは、また別の話です。
 
アーキテクチャ骨子は以下の通り。
 
●健康とは頭と体の両方のクオリティーを高いレベルで維持すること。
 
●そのためには、何をおいても「野菜」を食べること。ただし、「果物」は控えめに。「牧草を食べて育った牛肉やラム肉の動物性脂肪」は完全無欠の脂肪源なのでどんどん食べよう。鶏肉は放し飼いのものを。「バター」(短鎖脂肪酸)と「ココナッツオイル」(中鎖脂肪酸)はともにお勧め。ただし、一般の乳製品や植物油にはご用心。「コーヒー」は最大のポリフェノール供給源なのでお勧め。ご飯は玄米よりも「白米」。
 
●「体調不良」や多くの「慢性疾患」の原因は「炎症」。「炎症」は心疾患、がん、糖尿病だけでなく、多くの自己免疫病や一部の精神衛生上の問題とも連関。「慢性炎症」の原因は「反栄養素(栄養阻害物質)」。自然由来の反栄養素の主なものに、「レクチン」、「フィチン酸」、「シュウ酸」、「カビ毒」がある。反栄養素は、植物および植物製品の栽培や貯蔵中に形成される。反栄養素を含む食品はなるべく摂らない。
 
●「生体アミン」のひとつである「ヒスタミン」は季節性アレルギーを起こすことでおなじみ。「ヒスタミン」等を含む食品に注意。
 
といったことをコアにして、
 
(1) 食材や加工食品や調味料といった「入力系」を、
 
「野菜」
「脂肪・油」
「タンパク質」
「乳製品」
「ナッツ・豆類」
「でんぷん質」
「果物」
「調味料・スパイス」
「甘味料」
「飲み物」に分類し、それぞれのカテゴリーで、
 
「QOL維持のために食べることが非常に望ましいもの」
「望ましいもの」
「食べてもいいがとくには役に立たないもの」
「食べないほうがいいもの」
「QOLを阻害するリスクが高いので食べないほうがいいもの」へと、アナログ的に区分し、

(2) 調理方法という「共通サブルーティーン」を、最も望ましい方から順番に
 
「生食/未調理、軽い加熱調理」
「アルデンテに蒸す(歯ごたえを遺す程度に)、160℃以下で焼く」
「とろ火で煮る、茹でる、ポーチ(湯・出汁に落とす)」
「軽いグリル(焦がさないようにあぶる)」
「真空調理、スロークッカー調理」
「バーベキュー、電子レンジ」
「強火で炒める」と、アナログ的に並べたあと、
「焦がす(焼きすぎ)、たっぷりの油で揚げる」を最もリスクの高い調理法と位置づけ、
 
そうした食材と調理方法の組み合わせで日々の食事というユーザインターフェース重視の「処理系」を考える、そうすれば、頭と体の状態(QOL)を高いレベルで維持するという「出力系」が結果する。
 
それが、アーキテクチャの概要。
 
そういう風に読むと「最強の食事」はけっこう面白い。
 

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2017年7月14日 (金)

アボカドと脂肪酸成分表

たまには手元の「日本食品標準成分表」や「脂肪酸成分表」に目を通すのもいいものです。記憶がリフレッシュされます。
 
森のバターと呼ばれることもあるアボカドは、分類上はイチゴやミカンと同じ果実です。野菜ではありません。ある小売店の野菜・果物売り場では、リンゴの近くでレモンの隣に、メキシコ産のアボカドを並べてあるので、係の人がそういうことをしっかりと意識しているのでしょう。
 
アボカドは確かにバター風味ですが、その脂肪酸構成と風味を合わせると、以下のように表現できます。
 
アボカド = 牛のフィレ肉 + オリーブ油
 
脂肪(中性脂肪)の主要構成要素である脂肪酸は、酸化されないもの、酸化されにくいもの、酸化されやすいものに分けられます。酸化されやすいものは加熱料理向きではありません。そういう観点で脂肪酸を並べてみると
 
・飽和脂肪酸(通常環境では酸化されない。パルミチン酸やステアリン酸など。バターやラードに非常に多く含まれる。加熱料理向き。)
 
・一価不飽和脂肪酸(酸化されにくい。オレイン酸など。オリーブ油やアボカド油に大量に含まれる。加熱料理やドレッシングなど応用範囲が広い。)
 
・n-3系の多価飽和脂肪酸(酸化されやすい。亜麻仁油や紫蘇油に多く含まれるα-リノレン酸や、青魚やマグロのトロに多く含まれるEPA/DHAなど。)
 
・n-6系の多価飽和脂肪酸(酸化されやすい。リノール酸など。大豆油やキャノーラ油や調合サラダ油に多く含まれる。)
 
脂肪酸ほど、その評価の推移、その毀誉褒貶の移り変わりが激しいものも珍しいようです。栄養学というものにおける知見が多くの学者のおかげでどんどんと進歩しているとも云えますし、栄養学というのはまだ未成熟なところのある学問だとも云えますし、ヒトの生というのは、形而上的なことを別にしても、あるいは分析に分析を重なても総体的にはまだまだよくわからないところのあるものだとも云えます。
 
たとえば、数十年前は、n-6系の脂肪酸を多く含むところの「植物油」を摂取することが健康のもとのように考えられていました。しかし、そういう(当時の)知見とその知見を利用した企業のマーケティングプロモーション活動の結果、揚げ物(フライ)やファストフードやサラダドレッシングやマヨネーズなどの摂取過剰で不健康が蔓延し、しばらく前から、n-6系の摂取を抑え、その代わりにn-3系を増やして両者のバランスをとることが推奨されるようになってきました。
 
バターやラードも同じで、n-6系植物油がもてはやされ始めた頃は、悪の枢軸のような扱いを受けていましたが、現在では、(製品の原料にもよりますが)バターやラードに含まれる飽和脂肪酸はとてもヒトの健康に貢献しているという風に認識が変わってきました。
 
マーガリンも評価の逆転現象が発生した加工食品のひとつで、健康を促進するために植物油で作られたけっこうな食材だという以前の評価から、トランス脂肪酸を含んだ健康を阻害するどうしようもない食材だという現在の評価へと、その評価がひっくり返ってしまいました。
 
そういう文脈で、アボカドを眺めてみると、さきほど 「アボカド = 牛のフィレ肉 + オリーブ油」だと書きましたが、アボカドに含まれる脂肪酸の割合は、「成分表」によれば
 
・飽和脂肪酸(=バターなど):         20%
・一価飽和脂肪酸(=オリーブ油など):   67%
・n-3系多価飽和脂肪酸(=亜麻仁油など):  1%
・n-6系多価飽和脂肪酸(=大豆油など):  12%
 
なので、少しだけn-6系が多いのですが、現在の知見では、非常にバランスのよい食べもの(ほとんど野菜のような果物)です。ドレッシングは自家製でシンプルなものにして、サラダで、2~3種類の葉物野菜や軽く蒸したブロッコリーと一緒に生で食べるのがいちばんおいしいようです。

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2017年5月12日 (金)

食用油脂のことなど

必ずしもそうとは言えないとは思うのですが、いちおう、長生きの方がそうでないのよりもいいことだということにしておきます。
 
食用油脂、とくに植物油や植物油を使ったマヨネーズのような加工食品は食品会社のマーケティングがとても盛んな領域なので、ときどきはそのマーケティングメッセージの内容を眉に唾をつけて見ることも必要です。食用油脂に関して参考になった本のひとつが「油の正しい選び方・摂り方―最新 油脂と健康の科学」です。8年ほど前に、食用油脂の雑駁な知識の整理のために読んでみました。今もときどきの参照目的のために本棚においてあります。
 
その本の著者がある雑誌(「通販生活」)のインタビューで食用油脂について語っていました。アップデート情報もあったので興味深く読ませてもらいましたが、その骨子は、記事のタイトル通りで「『バターやラードなどの動物油より、サラダ油などの植物油のほうが体にいい』は間違いです。」
 
その方のお勧めの食用油脂は、
 
□飽和脂肪酸であるところの「動物性脂肪」を多く含む「バター」と「ラード」
□多価不飽和脂肪酸であるところの「αリノレン酸(オメガ3系)」を多く含む「エゴマ油(シソ油)」「アマニ油」「魚油(DHA・EPA)」。
 
多価不飽和脂肪酸であるところの「リノール酸(オメガ6系)」を多く含む「ごま油」「大豆油」「コーン油」「紅花油(サフラワー油)や、トランス脂肪酸がいっぱい入っている「マーガリン」を推奨していないのは当然としても、一価不飽和脂肪酸であるところの「オレイン酸(オメガ9系)」を多く含む「オリーブ油」や「菜種油」「キャノーラ油」「(高オレイン酸型の)ヒマワリ油」などもおすすめ対象ではありません。
 
コレステロールに関する箇所では「体に悪いどころか、コレステロ ールは人間に欠かせない成分です。・・・略・・・細血中のコレステロール値が高いと心臓病が増えるとする研究も一 部にはあります。しかし、研究対象の集団に偏りがあり、心臓病のリスクが強調され過ぎています。そもそも心臓病のリスクが多少減ったとしても、長生きできなければ意味がありません。」と語っています。
 
「血中のコレステロール値が高いと心臓病が増えるとする研究」(者)は、血圧の高さと循環器系疾患の関連を妙に強調する人たちと似ています。血圧を下げる薬を飲んで(飲み続けて)心臓病のリスクが多少減ったとしても、長生きできなければ意味がありません。しかしながら、最近ではまた、血圧は130未満というのが勢いを盛り返してきたみたいです。「『収縮期血圧が147以下』で『拡張期血圧が94以下』なら高血圧を気にしなくてもいい」という一般健常者にとって実際的なガイドラインはどこかに隠れてしまいました。
 
 

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2017年2月 6日 (月)

酒粕の季節

日本酒は収穫されたばかりの米(コメ)を使って作り、基本が新酒(ヌーボー)です。だから、酒の副産物であるところの酒粕(さけかす)が一般消費者へ販売される時期は、たいていは、毎年11月から3月のどこかです。
 
買いやすいのは11月から1月。例外もありますが、入手可能な期間が限定されています。一般家庭では、味噌は自分で作れても、日本酒は作れない。したがって酒粕は買うしかありません。
 
酒粕の利用方法(以前は業界用語だったのがスマートフォンの登場で急に一般用語になった言葉を借りると「アプリ」)は、大きく分けて二つです。
 
ひとつは甘酒。酒粕で作る簡易版の甘酒です。
 
もう一つは食材の粕漬け。白身魚の切り身や、鶏のモモ肉などを漬け込んでおきます。味付けと数日間の短期保存機能を兼ねています。頃合いを見て、たとえば、焼いて食べると実に旨い。塩焼きや煮つけでは出ない深い香りが楽しめます。

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2017年1月16日 (月)

エゾ鹿の肩ロース肉でシチュー

北海道ならではの贅沢かもしれません。「肩ロースで柔らかいからローストにしたらおいしいと思いますよ」と恰幅のいい肉屋の親父さんにローストを勧められたのですが、肉の野性の風味や相対的な硬さなどを考えてメニューはシチューを選びました。エゾ鹿肉です。
 
じっくりと肉を煮込むタイプの料理であるところのビーフシチューは、たとえば「すね肉」のような硬い部位の大きなかたまりを使うというのが相場ですが、それと同じことをエゾ鹿肉の肩ロースでやってみました。下の写真のように「リーン」(脂の少ない)な、赤みの肉で、値段は牛肉と比べるととても穏当です。我が家では牛肉も赤身で脂肪分の少ない「リーン」なものが好みですが、鹿肉の脂質量(脂肪分)は牛肉の10分の1です。森林を走りまわっているので、メタボな霜降りにはなりようがない。
 
鹿肉料理は、いわゆるジビエ(狩猟によって食材として捕獲された野生の鳥獣のこと)料理です。北海道では野生の鹿が増えすぎて、畑の農産物や森林植生(たとえば、木の芽や樹の皮)を食い散らかすのでそれを防止するために狩猟しています。どこでもいいのですが、たとえば、知床方面などを旅行してみると、エゾ鹿による森林植生の荒れがよくわかります。
 
クジラと同じです。クジラは今では増えすぎて、大食漢の彼らはイワシなどの海の小魚の相当部分を食べています。世界の海を泳いでいるクジラが胃袋に入れる魚の量と、世界中のヒトが1年あたりに食べる魚の量が同じくらい(クジラ類の魚消費量は人類の魚消費量0.5倍から3倍の間)という推計もあります。
 
北海道産の調理用トマトで作った自家製トマトソースが活躍しました。関連記事は「調理用トマト「なつのしゅん」と、2016年版のトマトソース」。
 
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2016年10月 4日 (火)

ドライエイジド・ポーク(熟成乾燥豚肉)

牛肉などの肉を枝肉のまま吊るして熟成肉を作る方法は古くからあって、牧畜文化や家畜文化の浸透した国や地域ではおなじみの光景です。映画などでも効果的なシーンとして熟成中の枝肉の映像が利用されることがある。この方法は枝枯らし熟成法というそうです。
 
一方、ドライ熟成法、あるいはドライエイジング(Dry Aging)という肉の熟成方法もあります。ドライエイジング(乾燥熟成)とは、お肉を、温度が1℃前後で湿度が70%前後の熟成庫の棚に裸の状態で並べて強い風を送り、表面を乾燥させながら肉固有の臭みを飛ばして熟成させていく方法です。熟成により、肉は柔らかく、味は水分が15%ほど飛ぶので濃厚になる。
 
ドライエイジド・ビーフ(Dry Aged Beef、乾燥熟成牛肉)にはときどき出合いますが、ドライエイジド・ポーク(Dry Aged Pork、乾燥熟成豚肉)にはあまりお目にかかれません。しかし、両方を控えめな量で一般消費者に販売しているお肉屋さんも札幌にはあります。おいしいので、どちらかを、ときどきですが、継続的に購入しています。お店の方の話によれば、牛肉(北海道産)の熟成期間は3週間、豚肉(北海道産)は熟成日数が10日間。
 
北海道には、明治以降ですが、豚肉の文化があります。豚肉の焼き鳥とか豚肉の丼です。熟成乾燥牛肉や熟成乾燥豚肉を、肉の味をそのまま生かした感じの焼肉ドン風で食べるとけっこう幸せな気分になります。
 
蛇足ですが、「広辞苑」によれば「やきとり(焼鳥)」とは「鳥肉に、たれ・塩などをつけてあぶりやいたもの。牛・豚などの臓物を串焼きにしたものにもいう。『―で一杯やる』」。

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2016年7月19日 (火)

北海道産のラム肉

北海道はラム肉を使った「ジンギスカン料理」がとても好きな土地で、花見にジンギスカン、夏の海水浴場で泳がずにジンギスカンです。後者の例は、夏とはいえ水の冷たい北の海岸なので、まあそういうものかと納得できるとしても、満開の桜の下で羊の肉のバーベキュー風というのは、はじめてそういうものに遭遇した時には、桜の花びらの色と焼ける肉の匂いの組み合わせにいささか驚きました。
 
ラム肉とは生後1年未満の子羊の肉のことですが、北海道のジンギスカン料理で消費されている羊肉は、たいていは、ニュージーランドやオーストラリアからの輸入品です。コストパフォーマンスが良いのでそうなったとも言えますが、そもそも北海道は羊肉の生産地ではない。北海道での羊肉の生産量は非常に少ないので、地元の需要量・消費量をまったくまかなえない。「アンジー」(ANZ: Australia and New Zealand)からの輸入に頼らざるを得ないというのが実態です。(だから、そういう環境の中で、ジンギスカン料理を北海道の疑似ソールフードに仕立て上げた方たちのマーケティングセンスは相当なものです。)
 
だから「北海道の羊肉はさすがにおいしいですね。昨晩は○○でジンギスカンを堪能しました。」と、たとえば東京から来られた方にお褒めをいただいた時には、返答に窮する場合もあります。
 
北海道北部にある士別(しべつ)というところは、数少ないラム肉(サフォーク種)の産地です。そのくせのないラム肉に、札幌のある小売店の肉売り場で出合いました。こういう機会はあまりない。値段は安くはない。しかし、その場で購入しました。さっと火を通し、塩味で食べます。高タンパクで、高ミネラルで、低脂肪。おいしくいただきました。
 
エゾシカ肉もそうですが、一般流通の少ない地元の肉は、こういう偶然の出合いを大切にしないとなかなか味わえません。

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2016年5月17日 (火)

米(と小麦と肉と魚の)のひとりあたりの年間消費量の推移

米穀安定供給確保支援機構」によれば、2015年度(2015年4月~2016年3月)の国民ひとりあたりの月間コメ消費量は、4,386グラムで、14年度と比べて3.7%少なくなったそうです。ひとりあたり月間平均消費量が4,386グラムということは、年間消費量だと52.6キログラムになります。60㎏(の壁)を大幅に割り込んでしまいました。コンビニ弁当などの「中食」消費は増えたものの、自宅で炊いたご飯(お米)の消費量が減少し、結果として逓減傾向にあったコメ消費がそのままその傾向を継続、ということです。

米、および小麦の年間消費量の推移を1965年(昭和40年)から2015年(平成27年)まで、あらためて眺めてみると、以下のような具合です(下の折れ線グラフ)。「米を60㎏と小麦を30㎏」というのがぼくの最近の記憶にある日本人ひとりあたりの年間消費量だったのですが、「米50㎏、小麦35㎏」という組み合わせに接近しつつあるみたいです。

19652015

米と小麦という二つの主要穀物の消費量合計が90㎏から85㎏に接近しているということは、炭水化物の消費量が減少しているということですが、それでお腹がすいてないとすれば、その代わりに肉や魚や野菜をいっぱい食べているのか。

1985年と2010年の日本人ひとりあたりの肉と魚の消費量を比較すると、肉の消費量は34kgから48㎏へと確かに増加していますが、魚は70㎏から54㎏へと減少です(下の図表、データはFAO)。

1_1985_2010


「米+小麦+肉+魚」のひとりあたり年間消費量を足し合わせてみると

1985年が、米74.6㎏+小麦31.7㎏+肉34㎏+魚70㎏=合計210.3㎏
2010年が、米59.5㎏+小麦32.7㎏+肉48㎏+魚54㎏=合計194.2㎏

つまり、単純な重量比較では、2010年は1985年よりも食べる量が8%減少したことになります。

ぼくの売り場での観察によれば、野菜の好きな家庭も多いけれども、そうでない人はもっと多い。若い調理系男子は買い物カゴに野菜も多いのですが、若い女性の買い物かごは加工食品とお菓子とジュース類が中心です。つまり、210㎏と194㎏の16㎏の差を野菜消費量を増やして埋めているというのは考えにくい。

手軽でカロリーが多くて食が進むところのマヨネーズたっぷりの焼きそば弁当やツナマヨおにぎり、あるいはお菓子みたいなものがますます好まれているのかもしれません。オランダ人ではありませんが、ジャガイモ(フライドポテト)が主食の一部になっている可能性は高い。トウモロコシ由来のジャンクフーズもあります。あまり健康にいい食事とは思われませんが、それは、まあ、別の話です。

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2016年4月26日 (火)

TPPとニュージーランドの酪農に関する雑感

TPP協定の第三十章が「最終規定」ですが、その本文(和訳)の最後のあたりは次のようになっています。

「第三十・七条 寄託者
1 この協定の英語、スペイン語及びフランス語の原本は、ここにこの協定の寄託者として指定されるニュージーランドに寄託する。・・・後略・・・」

「第三十・八条  正文
この協定は、英語、スペイン語及びフランス語をひとしく正文とする。これらの本文の間に相違がある場合には、英語の本文による 。以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。二千十六年二月四日にオークランドで、英語、フランス語及びスペイン語により作成した。」

各国代表が署名に集まったオークランドはニュージーランド最大の都市。TPPの最初の4か国はシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイなので、ニュージーランドが協定の寄託者(Depositary、書類を預かる人) および署名地に選ばれたのでしょう。

TPPへの参加を表明している国で、酪農が圧倒的に強いのがニュージーランドです。米国などもまったくかなわない。たとえば、牛乳の生産コストは、日本はニュージーランドの4倍高く、米国はニュージーランドの2倍くらい高い。しかし、平らな地面が見渡す限り広がるような国ではない。どうやっているのか。

酪農専門家の資料(酪農学園大学 荒木和秋教授の資料など)を参照すると、ニュージーランド酪農の特徴は、以下の通りです。

・牛を牧草地をローテーションしながら通年放牧、したがって牛舎は持たない
・牧草に依存した季節繁殖、配合飼料は使わない、冬季は休む
・利益を圧迫する機械設備は所有しない、契約で外注サービスを利用
・利益を生まない施設(サイロや牛舎)は持たない

たいていの米国や日本の酪農家が好きな「立派な牛舎で、濃厚な配合飼料」というのとはずいぶんと違った方向を向いています。農家のコスト意識が強く、牛は放牧地でのびのびと暮らせて幸せそうです。

北島と南島からなるニュージーランドの国土面積は約27万平方キロメートルで、日本よりも狭い。日本(約38万平方キロメートル)の71%です。お隣の巨大なオーストラリアと比べるととても狭い。しかし、主要産業は、農業(牧畜・酪農)と林業です。牧畜と酪農のための広い放牧地はどこにあるのか?

United Kingdomという括りでの英国における牧草地は、長い時間をかけて雨や風と折り合いをつけたような具合に仕上がっていますが、ニュージーランドの牧草地は、とても自然な感じとけっこう無理をしている不自然な感じが共存しているような印象です。観光目的でない写真を見るとそう思う。

国土に占める牧草地の割合を確かめたかったので、ニュージーランド統計局 (Statistics New Zealand) のサイトを訪問しました。2012年現在の数字でいうと、

・牧草地(ただし、森林を開墾して牧草地に転化したもの)の割合は39.8%
・もともとは原生の草むらでそれが牧草地になったものの割合は8.6%
・原生林の割合は23.8%
・植林の割合は7.5%
・残りの20.3%が、裸地や湖水、農地や住宅地など。

ニュージーランドは、もともとは、つまりマオリがニュージーランドを発見したころは国土の85%が森林(原生林)だったそうなので、国土の60%以上の面積に相当する森林(原生林)がなくなったということになります。森林(原生林)が開墾されて、牧畜や酪農のための牧草地へと変貌したわけです。

【註】ちなみに、FAOの国別・森林率推計(2013年)によれば、日本の森林率(国土に占める森林面積の割合)は68.5%、ニュージーランドのそれは38.5%。ニュージーランドでは原生林が伐採・開墾されすぎたので、植林をするようになった。FAOの森林の定義は少し広いのかもしれない。

ニュージーランド人と何度か仕事をしたことがありますが、農業や酪農といったものとはまったく無関係な分野だったし、その場所もニュージーランドからは隔たったところだったので、ヒトの数よりヒツジの数が多い国の人という以上の印象はありませんでした。性格の温和な人が多そうだというのがその時の印象です。

しかし、こういうタイプの、つまり、MBAの教科書に載っているような合理化・効率化の方向とは位相のずれたタイプの原価や経費の削減方法に長けているとは意外でした。ただ、原生林の相当部分を消滅させ続けてきたツケ(たとえば、山から森林がなくなると近隣の海は痩せる)がどうなっているのか、酪農との帳尻合わせという意味で、気になるところではあります。

北海道も明治以降、森林が開墾されて畑地になりました。現在進行中のものや、開墾されて間もない畑地もあります。以下(『・・・』部分)は、数年前(2009年5月)にぼくが書いた「北海道東北部の開墾地」に関する雑文から一部を引用したものです。ぼくにとってはいいものを見たという意味で印象的な光景でした。

『タマネギで有名な北見市から石北峠に向かう道路は、無加川(むかがわ)という川に沿って伸びていますが、この道路に沿って、正確には川に沿って、いかにも開墾地という光景が広がっています。どれほど前に開墾したのでしょうか。バスの窓から見た景色です。川の名前は、その場で、手元の地図で調べました。

奥行きが60~100メートルくらいの幅の畑作地が川に沿って、程よい区切りをつけながら、延々と続きます。畑作地のすぐ向こうは、高さ10メートルくらいの白樺の密集した林です。白樺林を切り倒して、開墾したのでしょう。木を切り倒すのは勢いでできそうな気もしますが、残った木の根っこを掘り起こして耕作地にするには結構な量の作業と忍耐が必要だと思われますが、その忍耐の量が伝わってきます。

そのようなことをぼんやりと考えながらバスに揺られていると、まさに今開墾中の区画が現れました。木は切り倒してありますが、木の切り株はまだそのままです。開墾を中止して打ち捨てられた一画かなとも思いましたが、そこだけが別扱いということは、その一角までの、そして、周囲の雰囲気からしてなさそうです。1~2ヵ月後にはできたての耕作地になっていることでしょう。』

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2016年3月 1日 (火)

米麹(こめこうじ)雑感

我が家では米麹(こめこうじ)をよく使います。米麹を使うのは、タクアン作りや味噌の寒仕込みといった特定の時期だけではありません。

まず「べったら漬け」。地元の大根が流通している季節で、涼しい時期や寒い時期は、米麹が必需品です。「べったら漬け」を作るからです(北海道の大根の旬は6月から10月、冬は雪の下に貯蔵した「雪の下大根」が流通)。暑い季節は「糠漬け」、涼しい季節、寒い季節は「べったら漬け」が日常的な我が家の漬物の棲み分け図です。

「べったら漬け」は北海道ではあまりポピュラーではないのですが(つまり、隣近所でそれを作る主婦や女性をほとんど見かけない)、準備プロセスがちょっと面倒くさいのがその原因かもしれません。「べったら漬け」には「甘酒」が必要です。甘酒は「米麹」で作りますが発酵させるので、いくぶん時間がかかります。

その工程は以下の通り。

・うるち米をお粥(かゆ)にする。
・お粥を60℃に冷ます。
・そこに麹(こうじ)を入れて混ぜる。
・そのあと60℃で10時間発酵する。
・甘酒ができ上がる。

こうして作った甘酒は、上品ですがけっこうな甘さになる。コメというものが持っている本来の甘さを実感できます。

さて、タクアンや味噌の仕込みの時期には米麹が大量に店頭に並びますが、時期を外れると店頭からさっと消えていきます。米麹は他の用途にも使えるので多めに買い、使うまでは小分けして冷凍保存しておきます。

他の用途とは、塩麹や醤油麹のことです。生の魚や生の鶏肉・豚肉などの下味付けといえば、塩麹や醤油麹が便利です。これは一年中使える。塩麹や醤油麹を作るのにも米麹が不可欠です。

だから、多めに購入し保存してあってもすぐに足りなくなる。そういう場合は、地元の麹屋さんに北海道産米を原料にした業務用の乾燥麹を別途、注文することになります。業務用なので一定量以下では買えませんが、その一定量も我が家のような使い方をしていると一年以内に確実に消費しつくします。

蛇足ですが、流通網を流れる発酵食品は、殺菌という目的のためと、出荷後にそれ以上発酵して味が変化しないように、製造の最後の工程で高い熱を加えて発酵を止めてあります。雑菌も死にますが、同時に麹菌や乳酸菌も死んでしまいます。だから麹菌を利用した加工食品に限りませんが、乳酸菌食品や乳酸菌飲料なども乳酸菌が元気に活動しているのを食べたい方は、自宅で作るのを好まれるようです。

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黒米をわずかに混ぜて桜色にした夏の甘酒。ちなみに、甘酒は夏の季語。
 
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